ここでは、マルサンアイ株式会社が商品化に成功した乳酸菌TUA4408Lをピックアップ。同乳酸菌に期待される効果や、これまでの研究報告、乳酸菌TUA4408L開発の歴史、配合している商品などについて詳しくご紹介します。乳酸菌TUA4408Lは、古くから長野に伝わる「すんき漬け」から発見された乳酸菌です。
乳酸菌TUA4408Lは、豆乳食品や味噌の製造・販売で知られる大手食品会社「マルサンアイ株式会社」が商品化した乳酸菌。植物性乳酸菌の研究で知られる岡田早苗氏(東京農業大学教授)が、長野に伝わる伝統的な漬物「すんき漬け」から発見した乳酸菌です。
「マルサンアイ株式会社」は、スーパーでよく目にする「調整豆乳」や「無調整豆乳」などを製造・販売している会社。自社が得意とする豆乳食品に、乳酸菌TUA4408Lを配合し、「豆乳グルト」という名の食品を開発しました。
ここでは、乳酸菌TUA4408Lが持つとされる作用を簡単にまとめてみました。
ラットの研究を通じ、乳酸菌TUA4408Lには血中コレステロール値を低下させる働きがあることが分かりました。ヒトに対する臨床試験が行われたかどうかは不明ですが、仮にヒトにも同じ作用が見られると考えた場合、生活習慣病やメタボリック症候群の予防・改善効果が期待できるでしょう。
同じくラットの研究を通じ、乳酸菌TUA4408Lには肝臓における脂質蓄積を抑える働きがあることが分かりました。血中コレステロール抑制効果と合わせて、こちらも生活習慣病等の予防・改善効果が期待されます。
便秘傾向のある女性に対し、「豆乳グルト」を2週間にわたって摂取してもらったところ、排便回数・排便量が改善したというデータが報告されています。
乳酸菌TUA4408Lの研究については、現・神戸学院大学栄養学部助教(2019年4月現在)の小林麻貴氏が、神戸大学大学院時代に著した博士論文で詳しく紹介しています。
小林氏の博士論文は、その実験内容の趣旨に応じ第一章から第六章までの構成。以下、同氏の博士論文を引用しながら、乳酸菌TUA4408L配合食品に期待される作用について解説しています。
7 週齢 SD 系雄性ラットに基準食 AIN-93G を投与して1週間予備飼育を行った後、①コントロール食(AIN-93G)、②12.5%乳酸発酵豆乳食(飼料中の大豆タンパク質濃度5%)、③25%乳酸発酵豆乳食(飼料中の大豆タンパク質濃度 10%)を投与して 5 週間飼育した。その結果、普通食摂取ラットにおいて 25%乳酸発酵豆乳食(飼料中の大豆タンパク質濃度 10%)が血中脂質成分および肝臓脂質成分を低下させて脂質代謝改善効果を示すことを明らかにした。
この研究に登場する「コントロール群」とは、乳酸発酵豆乳を含まない通常食を与えたラット群を指します。この後で紹介する研究での「コントロール群」という言葉も、同じ内容を指しています。
コントロール群のラットに比べ、乳酸菌TUA4408Lによって発酵した豆乳を食したラット群には、脂質代謝の改善が見られました。
①コントロール食(AIN-93G)、②豆乳食(飼料中の大豆タンパク質濃度 10%)、③乳酸発酵豆乳食(飼料中の大豆タンパク質濃度 10%)を投与して 5 週間飼育した。豆乳群および乳酸発酵豆乳群において肝臓の TG 量、コレステロール量は、5 週間投与後に低値を示した。血中 TC 濃度は豆乳群、乳酸発酵豆乳群とも投与 1 週後より 5 週後まで低値を示した。その効果は豆乳群より乳酸発酵豆乳群に強く現れた。肝臓の遺伝子発現量を調べると、脂肪酸合成関連遺伝子の発現量は豆乳群、乳酸発酵豆乳群で著しく抑制された。逆にコレステロールの異化代謝の律速酵素コレステロール 7-αヒドロキシラーゼ(Cyp7a1)遺伝子の発現量は著しく促進された。この傾向は豆乳群よりも乳酸発酵豆乳群で顕著であった。そのため Cyp7a1 遺伝子の発現を誘導する生理活性物質が乳- 3 -酸発酵により新たに生成、あるいは増量し、血中 TC 濃度を低下させたと推定した。
ラットの肝臓における脂質代謝への影響について、コントロール群よりも豆乳群・乳酸発酵豆乳群のほうが著しい改善が見られました。また、豆乳群に比べると、乳酸発酵豆乳群のほうが改善の傾向は顕著でした。
①コントロール食(AIN-93G)、②豆乳のイソフラボン抽出物食、③乳酸発酵豆乳のイソフラボン抽出物で 5 週間飼育した。次に大豆タンパク質共存下の実験として①コントロール食(AIN-93G)、②脂質代謝改善効果の少ない濃度の豆乳食(飼料中の大豆タンパク質濃度 4%)、③豆乳+豆乳のイソフラボン抽出物食(飼料中の大豆タンパク質濃度 4%)、④豆乳+乳酸発酵豆乳のイソフラボン抽出物(飼料中の大豆タンパク質濃度 4%)を投与して 5 週間飼育した。その結果、大豆タンパク質が共存する豆乳+乳酸発酵豆乳イソフラボン抽出物群で血中 TG 濃度と肝臓の脂質量の両者に低下を認めた。
コントロール群、および、イソフラボン抽出物を交えた6種類の組み合わせからなる飼料を与えたところ、「豆乳+乳酸発酵豆乳のイソフラボン抽出物」において、血中TG濃度と肝臓の脂質量の低下が見られました。血中TG濃度とは、血液中における中性脂肪の比率です。
①1%コレステロール食、②乳酸発酵豆乳(飼料中の大豆タンパク質濃度 5%)を含む1%コレステロール食、③乳酸発酵豆乳(飼料中の大豆タンパク質濃度 10%)を含む 1%コレステロール食を投与して 5 週間飼育した。高コレステロール食投与ラットにおいて飼料中の大豆タンパク質濃度 5%、10%を含む乳酸発酵豆乳投与により、濃度依存的に肝臓脂質蓄積抑制効果が認められた。また、血中 TC 濃度および non-HDL-C 濃度は飼料中大豆タンパク質濃度 10%の乳酸発酵豆乳でさらに低値を示した。
コレステロール食のみのラット群と、コレステロール食+乳酸菌発酵豆乳のラット群を比較すると、後者には肝臓脂質の蓄積を抑制する働きが確認されました。その抑制効果は、乳酸発酵豆乳の配合率に比例することも分かりました。
①1%コレステロール食、②豆乳(飼料中の大豆タンパク質濃度 10%)を含む 1%コレステロール食、③イソフラボンのアグリコン割合の低い 4404 菌乳酸発酵豆乳(飼料中の大豆タンパク質濃度 10%)を含む 1%コレステロール食、④イソフラボンのアグリコン割合の高い 4408 菌乳酸発酵豆乳(飼料中の大豆タンパク質濃度 10%)を含む 1%コレステロール食を投与して 5 週間飼育した。高コレステロール食群と比較して豆乳を含む高コレステロール食群、4404 菌乳酸菌乳酸発酵豆乳を含む高コレステロール食群はいずれも同様の肝臓脂質蓄積抑制効果を示した。また血中 TC 濃度および non-HDL-C 濃度の上昇抑制作用は、高コレステロール群に対して他の 3群いずれにも認められ、特に 4408 菌乳酸発酵豆乳を含む高コレステロール食群が最も強い上昇抑制効果を示した。
血中TC濃度(血中の中性脂肪の比率)と、循環器疾患に関与するとされるnon-HDL-C濃度において、乳酸発酵豆乳による上昇抑制効果が確認されました。乳酸発酵豆乳の中でも、特に乳酸菌TUA4408Lの効果に有意性が見られました。
①脂質負荷食(15%TG、0.125%コレステロール)、②イソフラボンのアグリコン割合の低い 4404 菌乳酸発酵豆乳(飼料中の大豆タンパク質濃度 10%)を含む脂質負荷食、③イソフラボンのアグリコン割合の高い4408 菌乳酸発酵豆乳(飼料中の大豆タンパク質濃度 10%)を含む脂質負荷食で 5 週間飼育した。脂質負荷食群と比較して 4404 菌乳酸発酵豆乳を含む脂質負荷食群、4408 菌乳酸発酵豆乳食を含む脂質負荷食群のどちらも血中脂質濃度上昇抑制作用と肝臓脂質蓄積抑制作用を示した。また、その作用は 4404 菌乳酸発酵豆乳を含む脂質負荷食群よりも 4408 菌乳酸発酵豆乳を含む脂質負荷食群の方が強く現れた。肝臓のイソフラボンアグリコン濃度は4404 菌乳酸発酵豆乳を含む脂質負荷食群に比較して 4408 菌若干高値を示した。
(中略)
以上の結果から、脂質代謝改善作用は TUA4404L 株乳酸発酵豆乳よりも、TUA4408L 株乳酸発酵豆乳の方が強いことが明らかになった。
脂質の多い食事を与えたラット群において、特に、乳酸菌TUA4408L発酵豆乳が高い脂質代謝の改善作用を持つことが分かりました。
小林麻貴氏の研究論文のほかに、乳酸菌TUA4408Lの研究を行っているマルサンアイ株式会社の公式HPには、次のような試験結果が掲載されています。
ヒトを対象にした試験では、「豆乳グルト」90gを一日2回、14日間継続摂取させたところ、便秘傾向の女性の便通を改善することが明らかになった。
この研究データにより、2週間にわたる「豆乳グルト」の摂取により、便秘症状が著しく改善していることが分かります。
どんなに素晴らしい効果が報告されている菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。
もちろん、ここで紹介した乳酸菌TUA4408Lについても同様で、この菌が合うかどうかは、実際に摂取してみて、自分の体調の変化を確認してみるしかないのが現状です。
世の中に存在する乳酸菌・ビフィズス菌には数えきれないほどの種類があり、商品化されているものだけでも膨大な数があります。そのため、自分と相性の良い菌を見付けるためには、それなりの覚悟をもって、根気よく挑まなくてはなりません。
しかし、自分にピッタリの菌を見付けるのは、それだけの価値があること。一生をかけて、理想の乳酸菌を追求し続けるくらいの気持ちで挑むことが大切です。摂取せずにどんな菌が合いそうか、なんて考えても意味はないので、まずはどんな菌があるのかを知り、興味のあるものから順にかたっぱしから試していきましょう。
ただし、一部には例外といえる成分もあります。たとえば「乳酸菌生成エキス」という成分は、最初から自分が持っている乳酸菌を育てるためのものです。
そもそも乳酸菌を摂取するのは、自分の腸内で善玉菌を増やして腸内環境を整えることが目的。つまりこの成分を摂れば、自分にピッタリの乳酸菌を摂取するのと同様の効果が得られるというわけです。菌との相性を気にする必要がないため、手っ取り早く健康になりたいという方は、こういった成分を探した方が良いかもしれません。
乳酸菌TUA4408Lは、現・東京農業大学教授(2019年4月現在)の岡田早苗教授の指導のもとで開発された乳酸菌です。
岡田教授は、国内における植物性乳酸菌研究の第一人者。昨今話題の「植物性乳酸菌飲料」を開発・商品化の指導をしたのも、岡田教授です。
多彩な植物性乳酸菌の研究を行っている岡田教授。研究の過程で、長野県木曽地方に伝わる伝統的な漬物「すんき漬け」から、乳酸菌TUA4408Lを発見しました。
「すんき漬け」とは、古くから長野県に伝わる伝統的な漬物。地域土着の赤カブを使った無塩の漬物です。独特の風味と酸味が特徴で、現在でも地域では一般的な漬物として食されています。
なお、京都に伝わる「すぐき漬け」は、名前は似ているものの「すんき漬け」とは全く異なる漬物です。
「すんき漬け」から乳酸菌TUA4408Lを発見した岡田教授は、その後テレビ番組に出演するなどし、国内に広く乳酸菌TUA4408Lを啓蒙。あるテレビ番組に出演した際には、乳酸菌TUA4408Lについて「免疫調節作用があるため、感染症の予防やアレルギー症状を緩和させる効果が期待できる」と紹介しています。
乳酸菌TUA4408Lを配合した商品は、マルサンアイから1商品のみが販売されています。大手スーパーの中にも取り扱っている店舗があるので、「見たことがある」という方もいるのではないでしょうか。
商品名のとおり、牛乳ではなく豆乳を原料にして作られた発酵食品。見た目は普通のヨーグルトとよく似ています。一般的なヨーグルトの場合、通常は複数の乳酸菌を配合して作られていますが、豆乳グルトに配合されている乳酸菌はTUA4408Lのみ。シンプルな味なので、料理に使っても違和感がありません。
なお、その見た目からヨーグルト味を前提に「豆乳グルト」を食べると、まったく違う味であることに驚くかも知れません。よって「豆乳グルト」を食べる際には、味に驚かないためにも、まずは「ヨーグルトではなく豆乳を食べる」というイメージを持ちましょう。
豆腐の原料にもなる豆乳なので、冷ややっこのように醤油をかけて食べる方もいるようです。「豆乳グルト」には果汁や香料などが一切配合されていないので、醤油をかけて食べても違和感なく食べられそうです。
管理人:蝶野ハナ
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