京都の三大漬物のひとつとして、古くから食べられてきた「すぐき漬け」。冬に収穫されたかぶらの一種である「すぐき」と塩から作られる漬物ですが、このすぐき漬けから偶然発見されたのが「ブレビス菌T001株」と呼ばれる乳酸菌です。数多くの種類がある乳酸菌の中でも生命力が強いという特徴があり、生きたまま腸まで届くという特性を生かしてチョコレートなどに配合されています。整腸作用などが期待できるブレビス菌T001株について、さまざまな研究結果からその働きについてチェックしてみましょう。
ブレビス菌T001株は「すぐき漬け」という漬物から発見された植物由来の乳酸菌で、日東薬品工業が保有しています。発見は偶然によるものですが、これまでの研究により、整腸・肥満抑制といった代謝を改善する効果やプリン体活性など、人の体に対するさまざまな作用が期待されています。
また、ウイルスやがん細胞を攻撃するNK細胞を活性化させ、免疫力を高める働きがあるとも言われています。
植物由来の乳酸菌は胃酸などに強いことが特徴とされていますが、ブレビス菌T001株も同様で「生きたまま腸まで届く」乳酸菌です。ブレビス菌T001株を配合したチョコレートなどが販売されていますが、このチョコレートを摂取した場合、胃酸などで分解されずに腸まで届き、さらに糞便からも生きたまま検出されるという驚きの強さを持っています。
また、胃酸に強く生きたまま腸に届くということで、ブレビス菌T001株は整腸作用に一役買ってくれる乳酸菌として注目されています。
ブレビス菌T001株は、非常に多くの効果を持つ乳酸菌として期待されており、さまざまな研究が行われています。その中から、腸内環境の改善に関する研究結果をご紹介します。
この研究で対象としたのは、便秘の傾向がある98人。この98人を2つのグループに分け、1つのグループにはブレビス菌T001株を含むチョコレート（28g）を摂取。もうひとつのグループはブレビス菌T001株を含まないチョコレート（プラセボ）を摂取しました。各グループとも2週間摂取を続け、その間の排便回数と排泄量を比較しています。
結果摂取期間前と比較して、摂取期間を通して排便頻度と排泄量は有意に増加しましたが、2つのグループ間に有意差はありませんでした。しかしながら、糞便分析では、腸内の主な短鎖脂肪酸である酢酸が乳酸菌T001株を含むチョコレートの摂取後に有意に増加したことが示されました。
また、乳酸菌T001株を含むチョコレートの摂取後の便中酢酸量の変化はプラセボよりも有意に高く、総短鎖脂肪酸とプロピオン酸のそれは高い傾向がありました。乳酸菌T001株を含むチョコレート摂取後の糞便中の乳酸桿菌数もプラセボよりも有意に多くなっていました。
この研究内容では、便秘改善においてはブレビス菌T001株が有意に働くという結論は出ていません。しかし、対象者の糞便を調査することで得られた結果から、ブレビス菌T001株の継続摂取により腸内環境の改善が期待できると言われています。
どんなに素晴らしい効果が報告されている菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。
もちろん、ここで紹介したブレビス菌T001株についても同様で、この菌が合うかどうかは、実際に摂取してみて、自分の体調の変化を確認してみるしかないのが現状です。
世の中に存在する乳酸菌・ビフィズス菌には数えきれないほどの種類があり、商品化されているものだけでも膨大な数があります。そのため、自分と相性の良い菌を見付けるためには、それなりの覚悟をもって、根気よく挑まなくてはなりません。
しかし、自分にピッタリの菌を見付けるのは、それだけの価値があること。一生をかけて、理想の乳酸菌を追求し続けるくらいの気持ちで挑むことが大切です。摂取せずにどんな菌が合いそうか、なんて考えても意味はないので、まずはどんな菌があるのかを知り、興味のあるものから順にかたっぱしから試していきましょう。
ただし、一部には例外といえる成分もあります。たとえば「乳酸菌生成エキス」という成分は、最初から自分が持っている乳酸菌を育てるためのものです。
そもそも乳酸菌を摂取するのは、自分の腸内で善玉菌を増やして腸内環境を整えることが目的。つまりこの成分を摂れば、自分にピッタリの乳酸菌を摂取するのと同様の効果が得られるというわけです。菌との相性を気にする必要がないため、手っ取り早く健康になりたいという方は、こういった成分を探した方が良いかもしれません。
ブレビス菌T001株は、ルイ・パストゥール医学研究センターを設立した岸田鋼太郎氏と日東薬品工業株式会社により偶然に発見されたものです。もともと乳酸菌に興味を持っていた岸田氏が、長寿で有名なコーカサス地方ではよくヨーグルトが食べられていることに注目。乳酸菌についての研究を行う中で、すぐきをターゲットにしたことがブレビス菌T001株発見のきっかけとなりました。
岸田氏と日東薬品工業株式会社は、共同で研究を進める中でブレビス菌T001株を発見。その後、研究と培養に注力し、現在ではさまざまな食品に応用されています。
なお、現在日東薬品工業株式会社では、2017年にバイオ事業の戦略ブランド「NOSTER」を設立。ブランドの第１号製品として、このブレビス菌T001株を含む7種類の菌株がラインナップされています。
免疫力強化、整腸作用、肥満抑制、プリン体活性など多くの効果が確認されているブレビス菌T001株は、チョコレートなどの食品に配合されています。
中でもよく知られているのが、ロッテから販売されている「乳酸菌ショコラ」。ロッテでは、腸内環境を整えるという目的で日東薬品工業が持っている約400株の中からブレビス菌T001株を選び、独自の製法によりチョコレートで包み込んで生み出された商品です。チョコレートで包むことにより、生きた状態のブレビス菌T001株をいつでもどこでも摂取可能となっています。
この「乳酸菌ショコラ」に用いられている、乳酸菌をチョコレートでコーティングする技術は、株式会社ロッテと日東薬品工業株式会社の共同研究「新たな乳酸菌コーティング技術の開発と食品への応用展開」として発表されており、2017年度日本農芸化学会 関西支部技術賞を受賞しています。
また、実際に「乳酸菌ショコラ」を食べた多くの人のデータから、腸内で善玉菌を増やす働きを確認。腸内環境を整えられるとされています。このことから、同製品は機能性表示食品としての届出が行われています。
管理人:蝶野ハナ
乳酸菌と人との関係、菌株ひとつひとつの個性、数多くの研究データ……乳酸菌って、知れば知るほどスゴいんです。私たちにとって最も身近な細菌について、もっともっと深く知りたくないですか？