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スマート乳酸菌

スマート乳酸菌は、実は日本人が古くから摂取してきた乳酸菌。生きたまま腸に届く乳酸菌で、抗肥満作用や抗アレルギー作用、腸炎抑制作用、整腸作用などが期待できることがさまざまな研究によりわかってきています。この記事では、さまざまな研究報告からスマート乳酸菌が持つ力について迫ってみることにしましょう。

スマート乳酸菌とは

スマート乳酸菌は、日本人に昔から愛され、食されてきた発酵食品「漬物」から発見された「植物性乳酸菌」です。株式会社丸善製薬では、この乳酸菌に対してこれまでにないアプローチで研究を進めてきました。大きな特徴としては、「ポリフェノール吸収力」に焦点が当てられていることが挙げられます。これは、植物素材メーカーである丸善製薬ならではの切り口であると言えそうです。

生きたまま腸に届く乳酸菌

スマート乳酸菌は、漬物から見つかった植物由来の乳酸菌。乳酸菌にはさまざまな種類がありますが、その中でも植物由来の乳酸菌の大きな特徴は「過酷な環境にも耐えられる」ということ。スマート乳酸菌も、生きたまま腸に届くという特徴を持っています。

このスマート乳酸菌には、「抗肥満作用」や「抗アレルギー作用」「腸炎抑制作用」「整腸作用」といったさまざまな働きが期待されています。

タンナーゼ産生能力を持った乳酸菌

スマート乳酸菌は、「タンナーゼ産生能力」を持っていることが大きな特徴です。「タンナーゼ」とは、緑茶に含まれるタンニン型のカテキンや、コーヒーに含まれるクロロゲン酸の「エステル結合」を加水分解する酵素のことです。スマート乳酸菌「Lactobacillus plantarum 22A-3 株」は特に強いタンナーゼ産生能力を持つことがわかっていますが、工業的に利用されているカビから産生されるタンナーゼとは異なる性質を持っています。

スマート乳酸菌から産生されるタンナーゼは、さまざまな食品に含まれるポリフェノールの力を引き出す可能性があると考えられ、研究が行われています。

昔は日本人の体内にも多く存在していたスマート乳酸菌

日本人の食生活が和食中心だった頃には、体内にスマート乳酸菌が多く存在していたものの、現在はその量は減っていると考えられています。これは、食生活の欧米化が影響していると言われているため、健康食品やサプリなどで積極的に摂取することは健康維持に有効だと言われています。

スマート乳酸菌の効果に関する研究

漬物から発見されたスマート乳酸菌は、さまざまな研究により腸炎抑制作用や抗肥満作用、抗アレルギー作用、整腸作用など多くの働きが期待されています。ここでは、スマート乳酸菌に関する研究についてご紹介します。

炎症性腸疾患に対する緩和・抑制作用に関する研究

慢性持続性の腸炎を起こす難病である「炎症性腸疾患」に対し、プロバイオティクスである乳酸菌株の一部が緩和・抑制作用を持つとされていることから、スマート乳酸菌(L. plantarum 22A-3)を用い、腸管炎症モデルに対してどのような炎症抑制効果があるか調査されましした。

Caco-2細胞を用いて腸炎モデルを作成し、RAW264.7細胞を活性化させる実験系を用いた。炎症の指標として、RAW264.7細胞からのTNF-α産生およびCaco-2細胞中のIL-8 mRNA発現を調べたところ、漬物由来であるL. plantarum 22A-3では生菌体・死菌体ともにTNF-α産生およびIL-8 mRNA発現が有意に抑制された。

これらの炎症応答の抑制機序を検討するため、L. plantarum 22A-3の細胞壁画分を調整しモデルに供したところ、IL-8 mRNA発現が有意に抑制されたと同時に、TGF-β1 mRNA発現の有意な亢進が認められた。

以上の結果から、L. plantarum 22A-3は、腸上皮細胞に対し抗炎症性サイトカインであるTGF-β1の発現を促すことにより、炎症応答を抑制する可能性が示唆された。

引用元:丸善製薬株式会社 ニュースリリース 「<学会発表>スマート乳酸菌®に関する研究発表」

スマート乳酸菌とカテキンにおける内臓脂肪に対する抗肥満作用

また、マウスを利用して、スマート乳酸菌が持つ抗肥満作用についても研究が行われています。

例えば、緑茶に含まれている茶カテキン。その主成分である EGCg(エピガロカテキンガレート)と呼ばれるカテキンは、他のカテキンと比べて非常に吸収されにくいことが知られています。

下記の実験は、高脂肪食を自由に摂取させた肥満化マウスを使用したもの。「通常食」「EGCgを通常食に添加」「EGCgとスマート乳酸菌を通常食に添加」「スマート乳酸菌のみを通常食に添加」の4つのグループに分け、4週間後に解剖により内臓脂肪の量を確認するという手法をとっています。

カテキンと内臓脂肪に対する抗肥満効果を調べるマウス実験が行われている。高脂肪食投与による肥満化マウスに1週間通常食を与えた後、通常食群、緑茶カテキン(EGCg)0.3添加群、緑茶カテキン(ECGg)0.3%+「スマート乳酸菌」1%添加群、「スマート乳酸菌」1%添加群の4群に分け、4週間後、内臓脂肪を確認。その結果、スマート乳酸菌が、カテキンの内臓脂肪減少効果を高めることを確認した。

引用元:健康美容EXPO 「植物由来乳酸菌 スマート乳酸菌」

EGCgは「ガレート型カテキン」の一種であり、ガレート型カテキンは脂肪とコレステロールの吸収を抑えると言われています。そのため、上記の実験によりスマート乳酸菌がEGCgを腸内で吸収しやすいEGC(エピガロカテキン)と呼ばれる物質に変換することで、カテキンの吸収率を上げることを確認。このことから「スマート乳酸菌はカテキンの内臓脂肪減少効果を高める」ことが確認されています。

抗アレルギー作用に関する研究

また、アレルギーに関する研究も行われています。

実験では、I型アレルギーモデルのマウスを使用し、抗原と接触したのちに起こる即時型のアレルギー反応を測定しました。アレルギー反応が起こった後にスマート乳酸菌を継続摂取したところ、アレルギーによる耳のむくみを67%抑制できたことから、スマート乳酸菌によってアレルギーを抑制できることが確認されたというデータがあります。

整腸作用に関する研究

20〜50代の男女18名を対象として、スマート乳酸菌を20mg配合したハードカプセルを服用したのち、排便に関して週2〜3回のアンケート調査を行いました。

アンケートでは「摂取前と比べて排便の調子はいかがでしたか?」という質問に対して、「良くなった」との回答が78%、「変わらなかった」との回答が22%、「悪くなった」という回答は0%となっています。このことから、スマート乳酸菌の摂取によって排便について良い作用を与えていることが考えられます

注目したいのは、便秘などこれまで排便トラブルを実感していた人だけではなく、これまで排便に関してトラブルを感じていなかった人も排便の改善効果を実感していたという点。これまで感じていなかった「便の質の良さ」などを体感できたようです。他にも「腹痛が減った」「飲酒によるダメージが減った」という変化を実感した人もいました。

この研究では、アンケートとともに対象者の便中における細菌の解析も実施。その結果、スマート乳酸菌を摂取する前と摂取した後の便を比較すると、便中にいる菌の数が増加していたため、スマート乳酸菌が「生きて腸まで届く」ことを確認できたとのことです。全体的な腸内フローラには大きな変化は見られなかったようですが、悪玉菌や日和見菌が減少した人もいたという結果も得られています。

また、この研究では摂取の仕方による影響を確認するために、スマート乳酸菌の摂取形態を二種類に分けて実験を行っています。結果としては、摂取形態による差は見られなかったため、スマート乳酸菌を摂取する際にはどのような形で摂取しても良いということが証明されました。

自分とスマート乳酸菌との相性は?

どんなに素晴らしい効果が報告されている菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。

もちろん、ここで紹介したスマート乳酸菌についても同様で、この菌が合うかどうかは、実際に摂取してみて、自分の体調の変化を確認してみるしかないのが現状です。

世の中に存在する乳酸菌・ビフィズス菌には数えきれないほどの種類があり、商品化されているものだけでも膨大な数があります。そのため、自分と相性の良い菌を見付けるためには、それなりの覚悟をもって、根気よく挑まなくてはなりません。

しかし、自分にピッタリの菌を見付けるのは、それだけの価値があること。一生をかけて、理想の乳酸菌を追求し続けるくらいの気持ちで挑むことが大切です。摂取せずにどんな菌が合いそうか、なんて考えても意味はないので、まずはどんな菌があるのかを知り、興味のあるものから順にかたっぱしから試していきましょう。

他にはどんな乳酸菌があるの?
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手っ取り早く乳酸菌の効果を実感したい人には

ただし、一部には例外といえる成分もあります。たとえば「乳酸菌生成エキス」という成分は、最初から自分が持っている乳酸菌を育てるためのものです。

そもそも乳酸菌を摂取するのは、自分の腸内で善玉菌を増やして腸内環境を整えることが目的。つまりこの成分を摂れば、自分にピッタリの乳酸菌を摂取するのと同様の効果が得られるというわけです。菌との相性を気にする必要がないため、手っ取り早く健康になりたいという方は、こういった成分を探した方が良いかもしれません。

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スマート乳酸菌の歴史

このスマート乳酸菌は、実はコアラと腸内細菌の関係からヒントを得て開発されたもの。コアラが食べるユーカリには、消化を阻害する物質であるエステル型のタンニンを多く含んでいます。そのため、コアラのお腹の中では消化や吸収を助けてくれるタンナーゼ産生乳酸菌が活躍しているのです。

このことをヒントにして、コアラの腸内から初めてスマート乳酸菌が分離され、その後の研究を経て漬物から発見されたという歴史があります。

スマート乳酸菌の商品展開

スマート乳酸菌は、さまざまな商品の形で販売されています。

株式会社ポーラからは、スマート乳酸菌とフコイダンを組みわせた乳酸菌含有加工食品「スマート乳酸菌 すっきりゼリー ファイントリート」が販売されています。ゼリーの形で手軽に摂取でき、スマート乳酸菌とフコイダンの組み合わせにより健康サポートが期待できる商品です。

そのほか、スマート乳酸菌が配合されたお酒も販売されています。株式会社リカーズから2015年に販売開始された「スマート乳酸菌のお酒」は、20〜30代の女性に向けの商品。非常にまろやかな口当たりで飲みやすく、楽しみながらスマート乳酸菌が摂取できるという商品です。

参照元

  1. 丸善製薬株式会社 ニュースリリース「<学会発表>スマート乳酸菌®に関する研究発表」(http://www.maruzenpcy.co.jp/news/120924a.html
  2. 健康美容EXPO「植物由来の進化した乳酸菌『スマート乳酸菌』」(https://www.e-expo.net/information/smart/
  3. 健康美容EXPO「スマート乳酸菌®は、コアラと腸内細菌の関係からヒントをもらい開発されました。私達にも、植物の恵を届けてくれる腸内のスマートなパートナーが必要です。」(https://www.e-expo.net/materials/014163/0118/
  4. 伊藤園「『ガレート型カテキン』とは?」(http://www.itoen.co.jp/catechin/gallate/

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管理人:蝶野ハナ

蝶野ハナ

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