乳酸菌シロタ株は、ヤクルトの創始者である代田稔医学博士が発見した乳酸菌です。
強化されながら培養した乳酸菌シロタ株は、殺菌力がとても強い胃液や胆汁などの消化液に耐えて、生きたまま腸内へと到達するという特徴を持っています。実際に、健康な人が乳酸菌シロタ株100億個以上を4週間連続で摂取する、という実験をおこなってみたところ、たった便1gのなかに1億個近い乳酸菌シロタ株の生菌が存在していたという結果が報告されています。
乳酸菌シロタ株を飲用したところ、もともとから腸内に住んでいたビフィズス菌の数が増え、大腸菌が減るという現象が起こりました。
大腸菌はもともと人の体内に住んでいる菌で、ほとんどの場合は無害ですが、何らかの疾患の原因になることもある菌です。
乳酸菌シロタ株には、腸内の有害物質の生成を抑える働きがあります。ここでいう有害物質とは、尿中に含まれる"インディカン"という物質から見ることができます。インディカンとは、腸内でたんぱく質から作られるインドールと言う有害物質が、肝臓で解毒されて尿中に排泄される物質です。すなわち、尿中のインディカンの量を測定することにより、腸の中に居る有害物質である「インドール」の量を想定することができます。ちなみにインドールには、発がん促進作用があると言われているのです。
乳酸菌シロタ株を飲んでいるときと飲んでいないときの、尿中インディカン量を測定する研究がおこなわれています。飲んでいないときの尿中インディカン量が100ug/mlを越えている数値を出していることに対し、乳酸菌シロタ株飲用後には約70ug/mlまで下がるという結果が出ました。このように、乳酸菌シロタ株には体内(腸内)の有害物質を抑制する働きが認められているのです。
乳酸菌関連商品のテレビCMなどで、「プロバイオティクス」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
プロバイオティクス(probiotics)は抗生物質(antibiotics)に対比される言葉で、共生を意味するプロバイオシス(probiosis;pro 共に、~のために、biosis 生きる)を語源としています。英国の微生物学者Fullerによる1989年の定義「腸内フローラのバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物」が広く受け入れられています。また、現在では「十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物」(FAO/WHO)という定義の公表もされています。 なお、その微生物を含む食品(ヨーグルトや乳酸菌飲料)自身をプロバイオティクスと呼ぶこともあります。
プロバイオティクスには、次のような有益な作用があるとされています。
このように、プロバイオティクスを摂ることによって、腸内の健康や体自体が持つ本来の抵抗力などを強めるサポートができると考えられているのです。プロバイオティクスは、乳酸菌やビフィズス菌が代表的な存在です。ただし、科学的に効果が証明されている乳酸菌やビフィズス菌は、限られた特定の菌株のみです。
乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT 9029)」はプロバイオティクスの代表格として、健康に役立つ様々な効果が証明されています。ちなみにプロバイオティクスを選ぶ際は、トクホマーク(特定保健用食品の表示)がついている商品を目安にすることがおすすめです。
プロバイオティクスと同じく、乳酸菌について関心のある人からすればよく聞く言葉のひとつでもある、「腸内フローラ」。この腸内フローラを理想的な状態に保っておくことが、健康保持のために役立つとされています。
ヒトの腸管内では、多種多様な細菌が絶えず増殖を続けています。これらは腸内細菌と呼ばれ、個々の菌が集まって複雑な微生物生態系を構築しています。この微生物群集を「腸内フローラ」または「腸内細菌叢」と呼んでいます。フローラ(Flora)は分類学の用語で植物群集を指しますが、かつては細菌が植物の中に分類されていたためです。また、ギリシア神話の花の女神をも意味しています。腸内細菌の数はおよそ100兆個、その種類は一人あたり数百種にのぼり、その構成は食習慣や年齢などによって一人ひとり異なっています。
私たちの腸の中には、実に様々な種類の菌が住んでいます。その菌たちはグループごとにまとまって、腸の壁面に生息しています。顕微鏡で腸の様子を覗くと、菌たちの形成しているグループがまるで「お花畑(英語で flora)」のように見えることから、腸内フローラと呼ばれるようになりました。その菌たちは、全部あわせると実に1キログラム程度の重さがあるのだそうです。
腸内フローラを健康な状態にするためには、「腸内細菌」のバランスを保つことが欠かせません。ここで、腸内細菌をざっくりと3つの勢力に分けて説明します。
善玉菌は、乳酸菌やビフィズス菌などをさし、悪玉菌の増殖を防いだり、腸の運動を促したりしてお腹の調子を整える作用があります。乳酸菌シロタ株も、もちろんそのうちの1つです。悪玉菌は、ウェルシュ菌や病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌などが有名です。悪玉菌が増えると、腸内の感染症や便秘などを起こすことがあります。そして日和見菌は、善玉菌と悪玉菌どちらか強い勢力の味方をして作用するという特徴があるのです。こうして数々の菌が私たちの腸の中で、まるで人間社会の様な勢力図を繰り広げています。
こうした腸内フローラの最適なバランスは、「善玉菌2割:悪玉菌1割:日和見菌7割」といわれています。大切なことは、腸内フローラの中で「善玉菌が優勢である状態」を作っておくこと。悪玉菌が優勢になると、下痢や便秘、感染症など、様々なお腹の不調をきたしてしまいます。
この腸内フローラは、ヒトに対して様々な生理作用を有しています。有用な作用として、病原菌の定着阻害、免疫系の活性化、ビタミンの産生などが挙げられ、有害な作用として、腐敗産物や発がん物質の産生、各種腸疾患へ関与が挙げられます。
このように、腸内フローラはヒトの健康と密接な関係があります。ヒトに有用な働きをする菌を優勢に、ヒトに有害な働きをする菌を劣勢に保つことが、私たちの健康管理の上で大切であると言えるでしょう。
私たちの腸内の状態を健康に保つためには、善玉菌である乳酸菌などの摂取がとても重要になってきます。生きたまま腸に届く乳酸菌シロタ株を上手に使って、腸内フローラを理想的な状態にしておくことが大切です。
ちなみに、ヤクルトでは「YIF-SCAN®」という腸内フローラ自動解析システムを開発しています。
「YIF-SCAN®」(Yakult Intestinal Flora-Scan)は、個々の腸内細菌が持つ特徴的な遺伝子配列(RNAやDNA)を目印に腸内フローラを解析する、ヤクルトが独自に開発した腸内フローラ自動解析システムです。
この「YIF-SCAN®」により、従来の寒天培地を用いた解析方法(培養法)に比べ、格段に迅速・簡便・高精度な腸内フローラ解析が可能となりました。
このシステムでは、現在の解析法では読み取ることができない、「少数派の菌」を正確に検出して解析することができます。どうしてヤクルトが少数派の菌にこだわっているのかというと、「腸内フローラのバランスを適正に保つためには、少ない数の菌でも腸内フローラを構成している菌すべてを把握することが大切」という考えがあるからです。
例えば、先ほど腸内フローラの7割を占めるとされていた"日和見菌"ですが、それら1つ1つ自体は腸内フローラの攻勢からすればとても数が少なく、また悪さをする菌もかなりマイナーな種類です。しかし、腸内フローラ内のバランス勢力としては大きなものになるため、その影響を考えてしっかりと解析する必要があります。ヤクルトでは、腸の健康全体も考え、腸内フローラに居る菌の研究を日々進めているのです。
ヤクルトでは、乳酸菌シロタ株が含まれた製品を、「毎日1本飲む」ことを推奨しています。乳酸菌シロタ株は「生きたまま腸に到達する」という特徴を持っているため、"1本飲んだら腸の中でたくさん増えてくれる”というイメージを持っている人も多いです。しかし実は、乳酸菌シロタ株を飲んだからと言って、腸の中で増殖してくれるわけではありません。
では、生きたまま腸に到達させるメリットはどのようなものがあるのでしょうか。乳酸菌シロタ株は腸内に定着する菌ではなく、飲むことをやめると体の中からは消えてしまいます。しかし上述したように、乳酸菌シロタ株が腸内にいることには大きなメリットがあります。そのため、毎日定期的に乳酸菌シロタ株を取り入れ、日ごろから腸の中をいい菌で満たしておくことが大切なのです。
ヤクルトの創始者で医学博士である代田稔氏は、"病気にかかる前にかからないようにする"という「予防医学」にいちはやく注目し、微生物研究の道に入りました。そして1930年、胃液や胆汁などの消化液に負けることなく、生きて腸に到着して悪さをする菌を退治する乳酸菌を見つけます。その乳酸菌を強化して培養させたものが、"乳酸菌 シロタ株”と呼ばれる「ラクトバチルス カゼイ シロタ株」です。
代田は、病気にかからないための医学(予防医学)、腸を丈夫にして健康に長生きすること(健腸長寿)、「誰もが手に入れられる価格で」という考えを研究活動の原点としました。この哲学は「代田イズム」として、中央研究所の研究開発活動に継承されています。近年一般にもその言葉が知られつつある、微生物との共生を意味する「プロバイオティクス」の考え方は、有用微生物の働きで腸内の有害菌の増殖を抑え、腸の健康を維持して病気を予防しようとする「代田イズム」そのものです。
乳酸菌シロタ株を使った飲料は、「ヤクルト」という名前で1935年に発売されました。乳酸菌の効果も美味しさも叶えているヤクルトは、今も多くの人に愛される人気商品です。
また、ヤクルト中央研究所では、人の健康維持や回復に役立つ食品・薬品・化粧品などを分野として、日々高度な研究をおこなっています。
乳酸菌シロタ株が配合されている商品で代表的なものと言えば、やっぱり「ヤクルト」ですよね。誰もが一度は目にしたことがあり、飲んだことがあるのではないでしょうか。健康にいいものを飲んでいるのに、甘くて酸味・コクがあって美味しいヤクルトは、子どものおやつの時間などにもメジャーな飲み物です。生きた乳酸菌ならではの酸っぱさは、クセになる味わいですよね。
乳酸菌シロタ株が配合されているのは、ヤクルトだけではありません。食べるタイプと飲むタイプがあるジョアや、ヨーグルトのソフールにも乳酸菌シロタ株が使われています。ジョアはプレーンの他、イチゴやブルーベリー、季節限定のフレーバーといったバリエーションも豊富。発行乳の自然な風味を楽しめる、すっきりしたさわやかな味わいです。
乳酸菌シロタ株の健康効果だけではなく、食品としての美味しさもきちんと追及しているヤクルトの製品。スーパーやコンビニでいつでも手に入れられる身近さも、長年にわたって支持されている理由のうちの一つです。
ちなみに、ヤクルトの製品の中で最も乳酸菌シロタ株が多く配合されているのは、「ヤクルト400」です。ヤクルト400には、名前の通り乳酸菌シロタ株が400億個含まれています。その他にも、ヤクルト400と同じく400億個の乳酸菌 シロタ株が含まれ、さらにカロリーが30%オフになった「ヤクルト400LT」や、300億個の乳酸菌シロタ株とビタミンC、ビタミンD、ガラクトオリゴ糖が同時に摂取できる「ヤクルトAce」という製品など、様々なラインナップが揃っています。
シロタ株.jp「乳酸菌シロタ株って?」(https://www.yakult.co.jp/shirota/what/)
シロタ株.jp「シロタ株と腸について」(https://www.yakult.co.jp/shirota/for_bowel/)
シロタ株.jp「シロタ株が入った商品」(https://www.yakult.co.jp/shirota/goods/)
BF-1 Magazine「ストレス社会に「菌と科学」で立ち向かう。ビジネスパーソンを支える飲料メーカーの挑戦」(https://www.yakult.co.jp/bf-1/magazine/05.html)
Yakult SCIENCE REPORT「膀胱がん予防と乳酸菌シロタ株」(pdf)(https://www.yakult.co.jp/institute/report/pdf/science_No18.pdf)
株式会社ヤクルト本社中央研究所 志田寛「Lactobacillus casei YIT 9029(乳酸菌シロタ株)のアレルギー抑制効果:作用機序と臨床応用への可能性」(pdf)(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/21/2/21_2_107/_pdf/-char/ja)
管理人:蝶野ハナ
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