世界で初めての「生きたまま腸にとどまる」乳酸菌、SBT2055株。ラクトバチルス・ガセリSBT2055株(Lactobacillus gasseri SBT2055)というのが正式な名称ですが、ガセリ菌SP株という通称で目にする機会のほうが多いのではないでしょうか。
SBT2055株は、乳酸菌の一種でラクトバチルス属ガセリ菌の菌株のひとつです。雪印メグミルク株式会社のミルクサイエンス研究所が日本人の腸から発見したヒト由来の乳酸菌で、生きたまま腸に到達します。
通称となっているガセリ菌SP株は、雪印メグミルク(旧雪印乳業)が発見したガセリ菌ということでSnow Probiotics(スノー・プロバイオティクス)の頭文字をとってガセリ菌SP株と名付けられました。
とても可愛らしい名前の菌ですが、2001年に世界で初めて「生きたまま腸にとどまる」ことが試験で証明された乳酸菌です。
通常プロバイオティクスで用いられる乳酸菌は、定着性を期待できても数日程度ですべて排出されてしまうのが普通です。そもそも乳酸菌は胃酸に弱いので腸に届くものはごく一部に限られていました。
ところがSBT2055株は、カプセルなどで保護することもなく、口から摂取することで腸まで生きたたま届いて、長い間腸に定着し発酵を続けることができるのです。
腸への定着性について2001年に発表された論文には、「試験では、1日1回1週間 SBT2055株を摂取してもらい、定期的に便を採取して検査しました。すると、摂取をやめてから90日がすぎても便の中からSBT2055株が検出された」という内容が書かれています。
しかもSBT2055株を摂取しているあいだは便から腐敗物質が減少し便通にも改善が見られたそうです。
またSBT2055株は、腸内環境を整えるだけでなく、現在でも研究がすすんでおり他にも様々な効果があることが確認されています。
今までに分かっている主な働きは、腸内環境の改善、便秘の解消、免疫力強化、内臓脂肪の低減、コレステロール値の低下です。これらはすべて人を対象にした研究結果として公表されているもので、マウスでの実験では、今後期待される効果として、歯周病抑制効果なども報告されています。まだ研究中で詳しい記載などはありませんが、これからもたくさんのことが期待できそうなSBT2055株です。
日本ミルクコミュニティらの研究で、ガセリ菌SP株にはダイエットに対する効果が調査され、内臓脂肪を減らす効果があることが確認されています。
2009年、日本乳酸菌学会で雪印と日本ミルクコミュニティ、九州大学らの研究グループにより、ガセリ菌SP株に内臓脂肪低減効果があると発表された。肥満傾向にある人が1日200gのガセリ菌SP株を含むヨーグルトを12週間摂取した結果、内臓脂肪量が有意に減少。皮下脂肪面積、体重、BMI、ウエスト周囲径、ヒップ周囲径も減少したことが確認されました。
ダイエット効果に関するメカニズムの詳細は、まだ明らかにされていませんが、ガセリ菌SP株が腸の動きを活発にさせたことで食べ物の移動が早まり、脂肪や糖分の過剰な吸収を防いだのではないかと考えられています。
2015年4月から始まった「機能性表示食品」の関与成分にもなっており、SBT2055株を含む製品のパッケージに「内臓脂肪を減らす」と書いてあるものも登場してきました。さらに2018年には「脂肪の吸収を抑制し、内臓脂肪を減らす効果」から特定保健用食品の関与成分にもなり、SBT2055株の内臓脂肪低減効果は、消費者庁のお墨付きを得たことになります。
SBT2055株は、マウスを使用した研究でインフルエンザに対する感染予防効果が認められたことから、人を対象にした研究も行われています。
SBT2055株には、まだまだ多くの素晴らしい効果があるといわれていますが、乳酸菌を含む食品は、薬ではなくあくまで食品です。
すぐに効果を発揮するものではありませんので、最低でも2週間は同じ種類の菌をとり続けて、変化を確認しご自分の症状の改善に役立つ相性の良い菌を見つけてください。
そして、腸内環境を悪化させる生活習慣の改善などもあわせて見直すきっかけになるといいですね。
2014年~2015年に行った本試験は、プロバイオティクス乳酸菌ガセリ菌SP株(Lactobacillus gasseri SBT2055)の摂取により、健常な成人へのインフルエンザワクチン接種後のインフルエンザウイルス(インフルエンザA型H1N1や同B型)に対する特異的な抗体産生が促進されること、また免疫の指標であるNK細胞活性が向上化することがわかりました。
健常な成人男女200名(20-74歳;平均年齢48.8歳;男性35人、女性165人)を2つのグループに分け、ガセリ菌SP株摂取群にはガセリ菌SP株を含有するドリンクヨーグルトを、ガセリ菌SP株非摂取群にはガセリ菌SP株を含有しないドリンクヨーグルトを、それぞれ1日1本100g、16週間摂取してもらいました。
摂取開始から4週間後に、全員にインフルエンザワクチン(A型H1N1、A型H2N3、B型)を接種し、摂取がスタートして4週間後、7週間後、11週間後、16週間後に、それぞれのワクチンに対する抗体価を測定。
また、摂取開始時、7週間後、16週間後に血液中のNK細胞活性と唾液中のIgA (※2)量を測定しました。
その結果、ガセリ菌SP株の摂取は、獲得免疫系と自然免疫系の両方を増強することで生体防御機能を高めることが示唆されました。
[注1]
(※1)NK細胞:自然免疫の主要因子として働く細胞傷害性リンパ球の一種で、おもに血液中に存在し抗腫瘍活性や抗体産生の調節に関与する細胞です。
(※2)IgA: 感染防御やアレルギー抑制に関係する抗体の一種。唾液や腸内に多く存在し、IgA量が減少すると、免疫機能が低下していると考えられています。
管理人:蝶野ハナ
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