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ラクトバチルスS-PT84

ここでは、大手飲料メーカーとして知られるサントリーが発見した「ラクトバチルスS-PT84」をピックアップ。この菌は、私たちの食卓でもおなじみの京漬物「しば漬け」から発見された乳酸菌で、私達の身体をさまざまな病気から守る免疫力に働きかける働きを持っていると言われています。そのくわしい特徴や、効果に関する研究データ、発見から商品化へいたる経緯などをくわしくご紹介します。

ラクトバチルスS-PT84とは

ラクトバチルスS-PT84は、サントリーが、京漬物「しば漬け」の中から発見して商品化に成功した乳酸菌。その大きな特徴は、60nmという細胞壁の厚さ。これは、他の乳酸菌と比較しても群を抜いた厚さとなっています。この細胞壁は免疫を高めてくれる成分そのものであり、細胞壁が厚いと免疫活性成分の量が多くなるため、免疫力向上につながることがわかっています。

さらに、S-PT84株は、培養する温度によって、その働きが変わってくることもわかっています。一般的に、乳酸菌が存在するのに適した温度は15〜25℃と言われていますが、S-PT84株の場合、乳酸菌にとっては厳しい環境である「30〜41℃」の環境で育てると細胞壁がより厚くなることがわかっています。細胞壁が厚くなるということは免疫活性成分がさらに増えることにつながり、その量は2倍になることが確認されています。細胞壁が厚くなることは免疫力を高める力がアップするとともに、壊れにくい乳酸菌になるというメリットもあります。

これまでの研究を通じ、ラクトバチルスS-PT84には、主に「免疫力増強作用」「インフルエンザ予防作用」「アレルギー症状の緩和作用」があることが確認されています。

免疫力増強作用

サントリーによると、S-PT84株を摂取することにより、免疫力がアップすると報告されています。これは、S-PT84株の摂取により、「Th1細胞」「NK細胞」の二つが大きく活性化することによるものです。免疫力の低下はさまざまな病気につながることがわかっているため、予防のためには免疫力のアップが欠かせません。S-PT84株はヒトを対象とした臨床試験により、この働きが確認されました。

インフルエンザ予防作用

ラクトバチルスS-PT84には、インフルエンザウイルスに対する特定の抗体を生み出す働きがあることが分かりました。インフルエンザワクチンとの併用により、さらに高い予防効果が期待されます。

アレルギー症状の緩和作用

ラクトバチルスS-PT84には、アレルギー症状の原因の一つとされるTh2(リンパ球の一種)への偏りを抑える働きがあるとされています。継続的なラクトバチルスS-PT84の摂取により、各種のアレルギー症状の緩和が期待されます。

ラクトバチルスS-PT84の作用に関する研究

ラクトバチルスS-PT84に期待される様々な作用について、科学的エビデンスとなる研究論文を引用しながらご紹介します。

さまざまな作用が期待されるラクトバチルスS-PT84ですが、総括的に見れば「免疫細胞に作用する乳酸菌」という言葉に集約されるようです。

免疫力増強作用

ラクトバチルスS-PT84の継続的な摂取により、抹消血中のNK細胞が活性化されることは、以前から報告されていました。

この報告内容を、より確実な裏付けのもとで明らかにすべく、北海道大学の前川敏広氏は、十分な被験者を確保し、かつ十分な試験期間を設けて慎重に臨床試験を実施。その結果は以下の通りです。

S-PT84 株加熱死菌体を 1日当たり15億個、12週間経口摂取させることで、末梢血中のNK活性が上昇すること、またS-PT84株摂取前のNK活性が低い人ほどより高い効果が得られることが明らかになった。以上より、S-PT84株は日常的に摂取することでNK活性を高めた状態を維持することが示された。

引用元:前川敏広「発酵食品由来乳酸菌による感染予防効果」

なおNK細胞とは、体内で高い免疫作用を発揮する細胞の一つ。全身をパトロールしながら、発見したがん細胞やウイルス感染細胞などに対し、即座に攻撃を加える免疫細胞です。

インフルエンザの感染予防効果

上記のとおり、ラクトバチルスS-PT84にはNK細胞を活性化させる働きがあります。この働きにより、インフルエンザウイルスへの感染予防が期待されることは、以前から報告されていました。

加えて、前出の前川氏は、ラクトバチルスS-PT84にはインフルエンザに対する特定の抗体を生み出すことを報告しています。実験では、マウスを使用した実験によって、S-PT84株を摂取した時に「H1N1型インフルエンザウィルス」に対して抗体の産生作用が増強されるかどうかを調査。

本試験結果より、S-PT84 株を経口摂取させることにより、単独では十分な抗体誘導が認められない少量のインフルエンザワクチンを皮下に接種させた後の、血清中におけるHA特異的IgG産生を高めることが確認された。一方で、鼻腔中におけるHA特異的IgA産生は認められなかった。これらの結果は、S-PT84株の摂取により、低用量のインフルエンザワクチン接種による HA 特異的な血中抗体産生誘導を高めることを示している。

引用元:前川敏広「発酵食品由来乳酸菌による感染予防効果」

インフルエンザワクチンから生まれる特殊な抗体の生産量が、ラクトバチルスS-PT84を経口摂取することによって、さらに増加したという研究結果。事前にS-PT84株を摂取しておくことより、インフルエンザワクチンを摂取した後における抗体の産生量を高める効果が期待できます。

毎年冬になると流行するインフルエンザですが、特に幼児や高齢者においてはインフルエンザウイルスの感染率が高く、さらに感染してしまった場合の死亡率も高いことが知られています。そのため、インフルエンザ予防のためにワクチン摂取が推奨されていますが、高齢者に関してはワクチン接種を行っても抗体が十分に産生されない、という報告もあります。インフルエンザの予防に向け、ワクチンとラクトバチルスS-PT84との併用による相乗効果も期待されます。

アレルギー緩和作用

また、S-PT 84株の摂取とアレルギーに関する研究も行われています。「アレルギー誘発のみ」「アレルギー誘発+ステロイド」「アレルギー誘発+1日あたり10億個のS-PT84株を摂取」という3つのグループに分けた試験によると、S-PT84株を摂取したグループにおいてアレルギー症状が緩和されたという結果が出ています。

体内で免疫力を発揮している細胞の中に、T細胞と呼ばれるリンパ球の一種があります。T細胞にはTh1とTh2の2種類があり、それぞれのバランスが取れているときには、免疫機能が正常な状態で働くとされています。

ところが、何らかの理由によってTh2に著しい偏りが見られたとき、人はアレルギー症状を発症します。症状を改善させるためには、Th1を増やしてT細胞全体のバランスを整えなければなりません。

ラクトバチルスS-PT84には、T細胞のバランスをTh1優位に誘導する働きがあることが分かっています。同菌を摂取することによるアレルギー症状の緩和効果が期待できるでしょう。

カンジダ感染予防効果

ラクトバチルスS-PT84株について、経口摂取において真菌に対する感染予防効果を示す研究も行われています。下記の研究は、皮膚や消化管に存在し、真菌の中でも代表的な日和見菌として知られているカンジダ菌を用い、胃におけるカンジダ感染予防効果を検討したものです。

S-PT84 株は、種々の乳酸菌と比較して、カンジダ菌に対する強い菌糸形成阻害作用を示した。また、 S-PT84 株は、カンジダ菌に結合し、菌糸形成したカンジダ菌を選択的に死滅させることが明らかとなった。 消化管カンジダ感染モデルマウスを用いた検討では、S-PT84 株の摂取によりカンジダ感染による胃傷害 を改善することや、胃内における炎症状態を改善することが示された。

引用元:前川敏広「発酵食品由来乳酸菌による感染予防効果」

結果として、ラクトバチルス S-PT84株を経口摂取することにより、カンジダ菌によって誘発される胃の損害を改善したり、胃における炎症状態を改善できたという結果になっています。この研究結果により、ラクトバチルスS-PT84株を摂取することで、カンジダ菌に感染するリスクを軽減できるという可能性が示されています。

胃潰瘍や潰瘍性結腸炎の患者からカンジダ菌が取り出されることや、消化不良が起こっている場合にはカンジダ菌とピロリ菌の感染が関係していると報告されていることからも、消化管においてカンジダの感染を予防することは、健康的な生活を送る上で大切なことと言えます。

ストレスが原因の免疫力低下を防ぐ

「ストレスによる負荷を与えない」「ストレスによる負荷を与える」「1日あたり1億個のS-PT84株摂取した後にストレスによる負荷を与える」という3つのグループで免疫力を測定するという試験も行われました。このうちS-PT84株を摂取したグループは、ストレスによる負荷を与えていないグループとほぼ同じ免疫力を維持できていた、という結果が出ました

このことから、S-PT84株の摂取を行うことにより、ストレスによる免疫力の低下を防ぐことができると考えられます。

自分とラクトバチルスS-PT84株との相性は?

どんなに素晴らしい効果が報告されている菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。

もちろん、ここで紹介したラクトバチルスS-PT84についても同様で、この菌が合うかどうかは、実際に摂取してみて、自分の体調の変化を確認してみるしかないのが現状です。

世の中に存在する乳酸菌・ビフィズス菌には数えきれないほどの種類があり、商品化されているものだけでも膨大な数があります。そのため、自分と相性の良い菌を見付けるためには、それなりの覚悟をもって、根気よく挑まなくてはなりません。

しかし、自分にピッタリの菌を見付けるのは、それだけの価値があること。一生をかけて、理想の乳酸菌を追求し続けるくらいの気持ちで挑むことが大切です。摂取せずにどんな菌が合いそうか、なんて考えても意味はないので、まずはどんな菌があるのかを知り、興味のあるものから順にかたっぱしから試していきましょう。

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ただし、一部には例外といえる成分もあります。たとえば「乳酸菌生成エキス」という成分は、最初から自分が持っている乳酸菌を育てるためのものです。

そもそも乳酸菌を摂取するのは、自分の腸内で善玉菌を増やして腸内環境を整えることが目的。つまりこの成分を摂れば、自分にピッタリの乳酸菌を摂取するのと同様の効果が得られるというわけです。菌との相性を気にする必要がないため、手っ取り早く健康になりたいという方は、こういった成分を探した方が良いかもしれません。

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ラクトバチルスS-PT84の開発ストーリー

ラクトバチルスS-PT84を発見・商品化させたのは、かの有名なサントリー株式会社。飲料メーカーの印象が強いサントリーですが、飲料のほかにも、「セサミンEX」や「DHA&EPA+セサミンE」など、機能性表示成分を配合したサプリメントの開発にも熱心な会社です。

サントリーのサプリメントに一貫して流れているテーマは「老化を、科学する」。ラクトバチルスS-PT84もまた、このテーマのもとで発見・開発された乳酸菌でした。

長く乳酸菌の研究にも取り組んできたサントリーですが、それまでの乳酸菌の研究の過程から、細胞癖の厚い乳酸菌であれば、生きて腸まで届く可能性が高いことを確認していました。

この視点に立ち、サントリーは「少しでも細胞壁の厚い乳酸菌の発見」を目指しました。1,000株以上の乳酸菌を比較した結果、特に細胞壁の厚い乳酸菌としてラクトバチルスS-PT84を発見したのです。

ラクトバチルスS-PT84の発見後は、これを配合した食品の開発をスタート。長期にわたる商品開発を経て、2013年5月、ついにラクトバチルスS-PT84を配合したサプリメント「ラクテクト」を発売するにいたりました。

ラクトバチルスS-PT84を配合した商品

ラクトバチルスS-PT84を配合した主な商品には、サントリーウェルネス株式会社が販売している「ラクテクト」と「プロディア」があります。

「ラクテクト」の特徴

サントリーから発売されている「ラクテクト」は、細胞壁が厚く、乳酸菌を腸まで送り届けることができるラクトバチルス S-PT84の特徴に注目して開発された商品。「老化を、科学する」というテーマで、日々の習慣が乱れることによる健康不安を解消するという目的のサプリメントです。

  • 参考価格:4,600円
  • 内容量:90粒(約1ヶ月分)
  • 販売元:サントリーウェルネス株式会社

「プロディア」の特徴

もともと厚い細胞壁を特徴とするラクトバチルスS-PT84ですが、「プロディア」に配合されているS-PT84は、サントリー独自の製法によって細胞壁の強さを2倍に強化したもの。S-PT84を確実に腸まで届けることを狙ったサプリメントです。

ラクトバチルスS-PT84の働きをサポートするビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6もプラス。健康を維持していくための「守る力」を、しっかりと詰め込んだ商品です。

1日の摂取目安量3粒の中には、ラクトバチルスS-PT84を15億個配合。免疫力アップから健康維持を目指す方は、ぜひ試してみたいサプリメントです。

  • 参考価格:2,800円
  • 内容量:90粒(約1ヶ月分)
  • 販売元:サントリーウェルネス株式会社

参照元

  1. 井田 正幸・出雲 貴幸「培養温度の変化が乳酸菌および その免疫賦活作用に及ぼす影響」:https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8906/8906_tokushu_1-4.pdf(pdf)
  2. サントリー健康情報レポート「3.免疫力の鍵を握る、プロテクト乳酸菌!:鍛え抜いた「プロテクト乳酸菌」の驚くべきパワー! 免疫力とプロテクト乳酸菌の関係」:https://health.suntory.co.jp/protect/meneki03/04.html
  3. SUNTORY「ラクテクト」:https://www.suntory-kenko.com/contents/ad/40/lst/lctc/id_so/?key=7035&utm_source=330%2F1280%2F%2F7035&utm_medium=PC_20&utm_campaign=lctc%2Fad%2FSLS01Y01L01C02000A01%2F0000%2F0000&utm_term=NK%2Fe&CASV25292732
  4. 出雲貴幸・星子浩之・井田正幸・前川敏宏「Lactobacillus pentosus S-PT84 株の免疫調節作用について」:https://oups.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=95&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1(pdf)
  5. Takayuki IZUMO,Fumi IZUMI,Ichiro NAKAGAWA,Yoshinori KITAGAWA,Hiroshi SHIBATA,and Yoshinobu KISO「Influence of Lactobacillus pentosus S-PT84 Ingestion on the Mucosal Immunity of Healthy and Salmonella Typhimurium-Infected Mice」:https://www.jstage.jst.go.jp/article/bifidus/30/2/30_2_27/_pdf/-char/ja(pdf)
  6. Yongwei Zhou,Nao Inoue,Ran Ozawa,Toshihiro Maekawa,Takayuki Izumo,Yoshinori Kitagawa,Yoshinobu Kiso,Hiroshi Shibata,ando Ikuo Ikeda「Effects of Heat-Killed Lactobacillus pentosus S-PT84 on Postprandial Hypertriacylglycerolemia in Rats」:https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbb/advpub/0/advpub_120830/_pdf/-char/ja(pdf)

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管理人:蝶野ハナ

蝶野ハナ

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