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乳酸菌PA-3株

乳酸菌PA-3株は「Lactobacillus gasseri(ラクトバチルスガッセリー)PA-3」という正式名称を持つ乳酸菌。2015年に株式会社明治により発見したと発表されたものです。この乳酸菌PA-3株が配合されたヨーグルトも市販されており、スーパーなどで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。過剰摂取すると体にさまざまな悪影響を及ぼすプリン体と“戦う”と言われる乳酸菌・PA-3株について、その特徴などを詳しくご紹介します。

“プリン体と戦う”乳酸菌PA-3株

乳酸菌PA-3株について知る上で欠かせないのが、「プリン体」と呼ばれる物質。乳酸菌PA-3株における研究報告を見ていく前に、まずはプリン体とはいったいどんなものなのかをご説明。その後PA-3株がどんな方法で“プリン体と戦う”のかをご紹介します。

そもそもプリン体とは?

一般的に、プリン体と聞くと「体に悪いもの」というイメージを持っている人が非常に多くなっています。これは、“風が吹いただけで痛みを感じる”と言われる痛風の原因となるものだから。でも、実はプリン体は人間の体に必要なものなのです。

プリン体の8割は体内で作られている

細胞のDNAなどに含まれるプリン体は、細胞の代謝や増殖に必要なものですから、人間はプリン体なしでは生きていくことができません。生命維持に必要なプリン体は、もちろん食事からも摂取することはできますが、実は1日あたりに必要なプリン体の80%は体内で作られているのです。

ちなみに、食品中に含まれるプリン体は、そのほとんどが核酸として含まれていますが、この核酸が腸管の中で「核酸→ヌクレオチド→ヌクレオシド→プリン塩基」といった順で分解されていきます。

分解される過程の中で、プリン体は体内に吸収されていきますが、「プリン塩基」はヌクレオチドやヌクレオシドと比較すると体内に吸収されにくいと言われています。

プリン体の過剰摂取はリスクが大きい

生きていくためには必要なプリン体ですが、過剰摂取には気をつけなければいけません。利用されなかったプリン体は、最終的には尿酸として尿などと一緒に排出されるものの、摂りすぎると下記のようなリスクがあります。

  • 血清尿酸値の上昇
  • 高尿酸血症を発症するリスク
  • 痛風を発症するリスク

「プリン体は良くないもの」というイメージは、このようなリスクがあるからと考えられます。上記にあげたようなリスクを上昇させないためにも、摂取量と排泄量のバランスが取れるように、摂取量に注意しなければなりません。

そこで注目されているのが、今回紹介する「乳酸菌PA-3株」。この乳酸菌はプリン体に直接作用し、腸管からの吸収を減らすことができる、“プリン体と戦うことができる乳酸菌”として注目されています。

乳酸菌PA-3株がプリン体と戦う仕組みとは

乳酸菌PA-3株が“プリン体と戦う”と言われているのは、体の中にある腸管から吸収されるプリン体の量を軽減できるということを意味しています。では、どのようにして乳酸菌PA-3株がプリン体を軽減するのかを見ていくことにしましょう。

ヌクレオシドを「プリン塩基」へ分解

プリン体が分解される過程については既に説明しましたが、そこで登場する「ヌクレオシド」とは、塩基と糖が結合した化合物の一種です。乳酸菌PA-3株はこのヌクレオシドを、体内に吸収されにくいとされている「プリン体塩基」に分解する働きがあります。

プリン体の3つの構造を菌体内に取り込む

上記でも出てきていますが、プリン体には「ヌクレオチド」「ヌクレオシド」「プリン塩基」の代表的な3つの構造があります。乳酸菌PA-3株は、この3つの構造を菌体内に取り込むことができるのです。

乳酸菌PA-3株が取り込んだプリン体を利用

乳酸菌PA-3株は、プリン体の3構造を菌体内に取り込んだのち、増殖など自らの栄養源として利用することができます。

乳酸菌PA-3株はこの3つの働きを持つことにより、腸管から摂取されるプリン体の量を低減させることができます。

乳酸菌PA-3株の効果による研究

乳酸菌PA-3株がどのようにプリン体に作用するか、というテーマについては、さまざまな研究がなされています。

血清尿酸値の減少

「日本農芸化学会2015年度大会」にて株式会社明治が発表した、乳酸菌PA-3株についての研究をご紹介します。

これは、高尿酸血症のラットに乳酸菌PA-3株を含むヨーグルトを与えたという実験。対象に8日間、PA-3株を配合したヨーグルトを与え続けたところ、血清尿酸値が減少したという結果が報告されています。

PA-3株を含むヨーグルトを高尿酸血症モデルラット(薬剤投与によって尿酸値が上昇)に8日間毎日摂取させたところ、5日目以降においてPA-3株を含まないヨーグルト(コントロールヨーグルト)と比較して、プリン体の最終代謝産物である尿酸の量(血清尿酸値)が減少しました(図)。

本研究により、PA-3株はプリン体に直接作用し、腸管から吸収されるプリン体の量を低減させる効果を持つ可能性が示されました。

PA-3株を含むヨーグルトの効果

引用元:株式会社明治「プリン体に作用する新たなプロバイオティクス乳酸菌『PA-3株』を発見」

血清尿酸値の上昇抑制

兵庫医科大学の糖尿病・内分泌・代謝内科の森脇優司教授らと株式会社明治の共同グループは、ヒト試験においても「乳酸菌PA-3株」が腸管からのプリン体の吸収を低減することによって、血液中の尿酸値上昇を抑制するメカニズムを明らかにしています。

この内容は、2017年の「第50回 日本痛風・拡散代謝学会」にて発表されたものです。

20歳以上の健常成人男性23名を被験者とし、ランダムに2グループに分けました。試験食品として、一つの群はL.gasseri PA-3 株を含むヨーグルトを、他方の群はL.gasseri PA-3 株非含有のヨーグルト(対照ヨーグルト)を、それぞれ試験日前の3日間摂取しました。試験当日は、試験食品とプリン体を同時に摂取し、経時的に血清尿酸値を測定しました。その後、試験食品の影響を排除するため2週間試験食品の摂取を中断した後、摂取する試験食品を入れ替え、同様の試験を実施しました(二重盲検クロスオーバー試験)。

試験の結果は図の通りで、両群ともプリン体の摂取後に尿酸値は上昇しましたが、L.gasseri PA-3 株を含むヨーグルトの摂取群は、対照ヨーグルトの摂取群と比較して尿酸値上昇の抑制が確認されました。特に、プリン体摂取後30分と60分では、統計学的にも有意な抑制が認められました。

血清尿酸値の変化量

引用元:株式会社明治「臨床試験でメカニズムを解明!L.gasseri PA-3株を含むヨーグルトがプリン体の吸収を低減し尿酸値の上昇を抑制」

他にも、乳酸菌PA-3株が血清尿酸値の上昇を抑制するという研究結果が報告されています。

下記の試験は、東京女子医科大学の山中教授により行われた試験。高尿酸血症および痛風患者(服薬治療中)を対象として行われました。

高尿酸血症および痛風患者(服薬治療中)を対象に行われたもので、対象者17名の薬の服用を一時的に中断し、乳酸菌PA-3株を含むヨーグルトを摂取するグループと乳酸菌PA-3株を含まないヨーグルトを摂取するグループに分け、8週間摂取(1日2本[100g/本])した後の血清尿酸値の変化量を比較しました。

その結果、乳酸菌PA-3株を含むヨーグルトを摂取していたグループは乳酸菌PA-3株を含まないヨーグルトを摂取していたグループに比べ血清尿酸値の上昇が抑制されていることが分かりました。

摂取8週間後における血清尿酸値変化量

引用元:株式会社明治「血清尿酸値の上昇を抑制する『乳酸菌PA-3株』」

これらの研究により、乳酸菌PA-3株には血清尿酸値の上昇を抑える働きがあると考えられています。

自分と乳酸菌PA-3株との相性は?

どんなに素晴らしい効果が報告されている菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。

もちろん、ここで紹介した乳酸菌PA-3株についても同様で、この菌が合うかどうかは、実際に摂取してみて、自分の体調の変化を確認してみるしかないのが現状です。

世の中に存在する乳酸菌・ビフィズス菌には数えきれないほどの種類があり、商品化されているものだけでも膨大な数があります。そのため、自分と相性の良い菌を見付けるためには、それなりの覚悟をもって、根気よく挑まなくてはなりません。

しかし、自分にピッタリの菌を見付けるのは、それだけの価値があること。一生をかけて、理想の乳酸菌を追求し続けるくらいの気持ちで挑むことが大切です。摂取せずにどんな菌が合いそうか、なんて考えても意味はないので、まずはどんな菌があるのかを知り、興味のあるものから順にかたっぱしから試していきましょう。

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ただし、一部には例外といえる成分もあります。たとえば「乳酸菌生成エキス」という成分は、最初から自分が持っている乳酸菌を育てるためのものです。

そもそも乳酸菌を摂取するのは、自分の腸内で善玉菌を増やして腸内環境を整えることが目的。つまりこの成分を摂れば、自分にピッタリの乳酸菌を摂取するのと同様の効果が得られるというわけです。菌との相性を気にする必要がないため、手っ取り早く健康になりたいという方は、こういった成分を探した方が良いかもしれません。

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乳酸菌PA-3株の歴史

ヨーグルトメーカー各社は、それぞれが保有する数千種類にものぼる菌を調査・研究し、さまざまな機能を相次いで発見しています。この乳酸菌PA-3株もそうした流れで発見されたもの。

株式会社明治では、開発当時保有していた乳酸菌4,000種類の中からガセリ菌を中心に192株を選び出し、プリン体に注目して研究を行うことにより、PA-3株にたどり着いたそうです。

乳酸菌PA-3株発見に関する報告は、2015年に行われた「日本農芸化学会」で発表されています。

株式会社 明治(代表取締役社長:川村和夫)は、新たなプロバイオティクス乳酸菌として、プリン体に直接作用し、腸管から吸収されるプリン体量を低減させる可能性を持つ乳酸菌「Lactobacillus gasseri PA-3(以下PA-3株)」を見出しました

引用元:株式会社明治「プリン体に作用する新たなプロバイオティクス乳酸菌『PA-3株』を発見」

その後、明治ではプリン体を気にする人々をターゲットにした製品「明治プロビオヨーグルトPA-3」「明治プロビオヨーグルトPA-3ドリンクタイプ」を2015年4月に全国で販売開始。手軽に摂取できるとあって、計画の2〜3倍売れる人気商品になりました。

双方とも、ヨーグルトに乳酸菌PA−3株が配合されていることから、プリン体を効率的に分解して内部に取り込み、自らの増殖などに利用することにより、結果的にプリン体の吸収量軽減が期待できます。

参照元

  1. 株式会社明治「明治プロビオヨーグルト」:https://www.meiji.com/100th/yogurt.html
  2. 株式会社明治「プリン体に作用する乳酸菌を活用した機能性ヨーグルトの開発」:http://www.affrc.maff.go.jp/docs/researcher_praise/attach/pdf/minkan_commendaton-9.pdf(pdf)
  3. 株式会社明治「Lactobacillus gasseri PA-3(以下乳酸菌PA-3株)について」:https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/report/pa-3/top/
  4. 株式会社明治「明治プロビオヨーグルトPA-3」:https://www.meiji.co.jp/dairies/yogurt/meiji-pa3/

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管理人:蝶野ハナ

蝶野ハナ

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