OS株の正式名称は「ペディオコッカス属ペントサセウス種OS株」。日本の発酵食品、白菜の漬物から発見された植物性乳酸菌です。
醤油メーカーでおなじみのキッコーマンが、白菜の漬物から分離した植物性乳酸菌で形状は、丸い形をした球菌がOS株です。
野菜の青臭さを無くし、風味をよくしながら発酵させる特長があることが知られていましたが、便秘症状を緩和する作用もあるのではないかと期待されています。
ちなみにOS株が配合されているヨーグルトは、まだ発売されていないようですが、効果のある乳酸菌なので、今後サプリメントなどの商品への利用が増えるだろうと言われています。
昔から日本人の食生活に密接にかかわってきた発酵食品に、しょうゆ、味噌、漬物などがあります。これらの製造過程には植物成分を栄養源として生育する乳酸菌が多くかかわっています。
乳酸菌とは乳酸を多くつくりだす菌の総称で「乳」という字が表すようにチーズやヨーグルト等の発酵食品だけに含まれていると思われている方もいると思いますが、実はぬか漬け、しば漬け、すぐき漬けなどの漬物や、お酒、味噌など、さまざまな種類の発酵食品にも含まれているのです。
また、発酵食品だけではなく、人のお腹の中、土、空気中など、至る所に乳酸菌は存在し、それらが食べ物に付着して発酵することで発酵食品ができあがります。
乳酸菌は善玉菌とも呼ばれ、腸に良いと提唱されてからはヨーグルトなどを食べる方も増えましたが、生きた乳酸菌が腸まで届くことはほとんどなく残念ながら乳酸菌は99パーセントが胃酸で死んでしまうとも言われているのです。
ではヨーグルトはまったく腸に効果がないのかというと違います。ヨーグルトに含まれる乳酸菌は胃酸で死んでしまいますが、この死菌はもともと腸にいる善玉菌のエサになり善玉菌を増やし活発化させてくれるのです。
ところがお漬物の野菜や、しょうゆや味噌を風味よく発酵させる植物性乳酸菌OS株は生きたまま腸まで到達します。栄養バランスが良い動物性の乳酸菌と違い植物性乳酸菌OS株は、漬物や味噌など、塩分が高く周りの環境が劣悪なところでも生存し、発酵することができる強い乳酸菌です。
OS株自身でも酢酸を生みだし、酸や塩に対して強く、胃酸の中でも大部分が死なずに腸に到達するのです。そして乳酸菌は乳酸で腸内を酸性に変える作用があるので、アルカリ性の環境を好む悪玉菌が生き延びられない環境をつくり出します。これが腸内フローラを整えてくれるしくみです。
腸内環境が整うことで、便秘を和らげ、また便秘と関係の深い肌荒れにも改善が見られると考えられています。
キッコーマンでは、もともと食物繊維が多く腸内細菌を増やすことに優れたトマトのエキスをOS株を使用して発酵させたものを使い整腸作用の試験を行ったところ、お通じに悩む人の便秘症状を緩和する作用が認められたそうです。
植物性乳酸菌OS株は、便秘症状の改善に効果があると期待されていますが、まだあまり知られていない乳酸菌で、OS株が摂取できるヨーグルトは無く、サプリメントの商品も限られており少ないのが残念です。
身近で安心できる乳酸菌で健康維持をしたいと考えている人、ストレスの多い日常や不規則な生活習慣などからお通じが悪いな、と感じている人が、手軽に利用できるようになる日が早く来るといいですね。
OS株には乳酸菌発酵トマトエキスによる便通の改善作用ならびにビフィズス菌を増加させる腸内フローラの改善効果があります。
便秘症状を示す20歳から50歳の女性22名を対象に、野菜や果実を風味良く発酵させる乳酸菌として選抜したペディオコッカスペントサセウスOS株によりトマトエキスを発酵させた「乳酸菌発酵トマトエキス」の粉末を1日1g、2週間連続して摂取してもらい便通への影響は排便日誌とアンケート調査により評価を行いました。また、試験期間中は毎日食事調査を行い、各期間中の栄養量を計算し摂取期間終了時に採便し、腸内フローラの解析を実施しました。
その結果、観察期間中と比較し乳酸菌発酵トマトエキスを摂取した期間(摂取期間)で、排便量、排便回数、排便日数が増加していることが認められました。さらに摂取期間終了時に実施したアンケート調査から、便通改善が有意に自覚されたことが認められ、便通や腸内フローラへの影響は、乳酸菌発酵トマトエキスによるものであると考えられました。
また、採取した糞便から腸内フローラの様子を調査したところ、ビフィズス菌の割合が増加していました。この結果から、乳酸菌発酵トマトエキスを摂ることで便通がよくなり、腸内環境の改善に効果があると考えられます。
※腸内フローラ(腸内細菌叢)
人の腸内には600兆個以上の細菌が棲み、増殖を繰り返しています。腸内フローラとは、これらの腸内細菌が集まる微生物のグループのこと。善玉菌と悪玉菌が知られており、飲食物によって増減することが知られています。
上記でご紹介した被験者22名対象の試験のほかにも、乳酸菌OS株の排便への影響について、キッコーマンと藤女子大学は10名の女子大生の被験者を対象とした試験を行っています。この試験では、乳酸菌OS株による排便量の有意な増加が確認されました。以下、試験の詳細をご紹介します。
健常なボランティア女子大学生10名が、被験者として試験に参加しました。
非摂取期間2週間(観察期)、乳酸発酵野菜入りの試験飲料(サンプルⅠ、200ml/日)摂取期間4週間(飲用期Ⅰ)、ウォッシュアウト期間(4週間)、乳酸発酵野菜汁なしの試験飲料(サンプルⅡ、200ml/日)摂取期間4週間(飲用期Ⅱ)の合計 14週間とした。
引用元:三田村理恵子,上田亜樹,長谷川浩司,小幡明雄「乳酸発酵野菜入り野菜・果実混合飲料の摂取による排便への影響― 乳酸発酵野菜汁の排便改善作用 ―」
被験者には、乳酸発酵野菜汁の有無は伝えず、試験飲料を1日コップ1杯(200ml程度)、摂取時間を定めずに連続摂取させた。観察期と各々の飲用期に、被験者には排便状況、食事内容(朝・昼・夕・間食)、排便に影響を及ぼす可能性がある特記事項を毎日日誌に記入させ、その日誌を2週間ごとに回収した。
(中略)
試験飲料摂取期間中は、食品の摂取制限は課さなかったが、ビサコジルを含む市販の便秘薬やラクトフェリン、サイリウムなど便通を促す成分を含むサプリメントを禁止した。
引用元:三田村理恵子,上田亜樹,長谷川浩司,小幡明雄「乳酸発酵野菜入り野菜・果実混合飲料の摂取による排便への影響― 乳酸発酵野菜汁の排便改善作用 ―」
以上の調査については、被験者の主観を排除するために、状況の数値化による客観的なデータへの転換がなされました。
10例を解析した結果、観察期の排便量12.9個に比べ、飲用期Ⅰ前半の2週間で 19.2個、後半の2週間では 19.7個、また飲用期Ⅱ前半の2週間では18.1個と有意な増加が認められた。
(中略)
排便回数では、有意な差は認められなかったが、観察期の 12.8回に比べ、飲用期Ⅰ前半の2週間では 17.6回、後半では 17.9回、また飲用期Ⅱ前半の2週間では 15.8回と観察期よりも増加する傾向がみられた。
引用元:三田村理恵子,上田亜樹,長谷川浩司,小幡明雄「乳酸発酵野菜入り野菜・果実混合飲料の摂取による排便への影響― 乳酸発酵野菜汁の排便改善作用 ―」
試験の結果、乳酸菌OS株入りの飲料を摂取することにより、排便量に有意な差が見られました。また、排便回数についても、はっきりとした差異はないものの、増加傾向が見られました。
下記の通り、キッコーマン飲料株式会社が製造したOS株入りの飲料を使用しました。
原材料は野菜(トマト、にんじん、ほうれん草、セルリー、レタス、大根、ケール、小松菜、チンゲンサイ、よもぎ、ビーツ、たまねぎ、パセリ、クレソン、ラディッシュ、キャベツ、カリフラワー、ピーマン、ブロッコリー、かぼちゃ、アスパラガス、レモン果汁、乳酸発酵野菜汁(殺菌)、香料を含み、コップ1杯(200ml)あたりの一般成分分析値は、エネルギー 65kcal、たんぱく質 2.5g、脂質0g、糖質 12.5g、食物繊維 2.3g、ナトリウム 39~220mg、カリウム 780mg、カルシウム 31mg、マグネシウム 33mg、鉄 0.6mg、亜鉛 0.2mg、β-カロテン 2300~10200μg、リコピン 17mg である。なお、サンプル쑿の飲料には、乳酸菌 OS 株 100億個(加熱殺菌済み)を含む。
引用元:(pdf)三田村理恵子,上田亜樹,長谷川浩司,小幡明雄「乳酸発酵野菜入り野菜・果実混合飲料の摂取による排便への影響― 乳酸発酵野菜汁の排便改善作用 ―」
試験に用いた飲料の原材料から推測すると、下記でご紹介しているデルモンテ「濃いラクベジ」が試験に使用されたと予想されます。
キッコーマンが展開するブランド「デルモンテ」から、かつて「すっきり美人」というOS株入りの飲料が販売されていました。現在は生産されていない様ですが、現在では「すっきり美人」に代わって「濃いラクベジ」がOS株配合商品として販売されています。
野菜不足の方や、手軽に乳酸菌を摂りたい方に向けて、キッコーマンのブランド・デルモンテから「濃いラクベジ」が販売されています。
コップ1杯(200ml)の中に、1日も目標野菜摂取量350g分と、乳酸菌OS株100億個を詰め込んだ一石二鳥のドリンク。味わいは濃厚ですがヨーグルト風味に仕上げているので、後味はすっきり。同社のアンケート調査によると、「また購入したい」と答えた人が全体の85.2%にものぼりました。
OS株は植物性の乳酸菌なので、乳アレルギーの方でも安心。お子様でも、高齢の方でも、妊婦さんでも、どんな方でも安心して飲むことができる飲料です。
>内容量 | 920g |
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容器 | ペットボトル |
希望小売価格 | 400円 |
開封前賞味期限 | 9ヵ月 |
原材料名 | トマトジュース、にんじん汁、乳酸発酵野菜汁(殺菌)、さつまいも汁、キャベツ汁、アスパラガス汁、ピーマン汁、ブロッコリー汁、かぼちゃ汁、カリフラワー汁、レタス汁、大根エキス、よもぎエキス、ビーツ汁、小松菜汁、ケール汁、チンゲンサイエキス、ほうれん草汁、たまねぎエキス、パセリ汁、ラディッシュ汁、クレソン汁/酸味料、香料 |
(PDF)Pediococcus pentosaceus OS(OS株)およびOS株発酵物の健康機能性評価,2010年度日本農芸化学会産学官学術交流委員会フォーラム要旨集,p.9(2010)(https://www.rikenvitamin.jp/corporate/presentation/pdf/20140526.pdf)
キッコーマン「乳酸菌 Pediococcus pentosaceus OS(OS株)」(https://www.kikkoman.com/jp/quality/research/about/lactobacillus/os.html)
キッコーマン「デルモンテ・濃いラクベジ」(https://www.kikkoman.co.jp/delmonte/beverage/koilacvege/index.html)
(pdf)三田村理恵子,上田亜樹,長谷川浩司,小幡明雄「乳酸発酵野菜入り野菜・果実混合飲料の摂取による排便への影響― 乳酸発酵野菜汁の排便改善作用 ―」(https://fujijoshi.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=1503&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1&page_id=13&block_id=21)
キッコーマンニュースリリース「理研ビタミンとキッコーマン、共同で乳酸菌発酵トマトエキスの便通と腸内フローラ改善効果を確認~第68回日本栄養・食糧学会大会で発表~」(http://www.kikkoman.co.jp/corporate/news/20140526.html)
管理人:蝶野ハナ
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