N-1乳酸菌は、正式名称を「Lactobacillus casei N-1(ラクトバチルス・カゼイ・N-1)」といい、信州大学教授である細野明義教授(現名誉教授)と全国農協乳業協会が共同研究して開発したプロバイオティクス乳酸菌です。
胃液などの消化液に強い耐性を持ち、腸まで生きたまま到達します。生菌で摂取することで効果を発揮する菌です。農協乳業協会が開発に携わっていることもあり、各地域性が活きるヨーグルト製品として全国で発売されています。また、乳酸菌数が多いということも特徴的です。一般的な乳酸菌は1ccあたり1~3億個ほどが平均的ですが、N-1乳酸菌は1ccあたり13億個以上が含有されています。少量でたくさんの菌が摂取できるため、効率的に腸内環境などを改善することが可能です。
悪玉菌が体内で増殖することを抑制し、腸内環境を改善させます。悪玉菌の数を減らして善玉菌優勢の腸内にしておくことは、健康を保つためにとても重要な意味を持ちます。
N-1乳酸菌は腸の壁に付着する性質を持っています。そのため、効果の持続性が期待できます。
腸内環境が改善されることにより、便秘の予防と解消の効果が期待できます。適切な水分量の便になるため、便秘になりにくくなります。
同じく腸内環境の改善により、便の脱臭効果が期待できます。便のにおいがきついということは、単に不快だというだけではなく、悪玉菌優勢の腸内になっている可能性があります。
食べ物から摂取されるコレステロールの吸収を妨げる作用があるため、コレステロール値を低下させる効果があると考えられています。
発がん性物質を見つけると結合する性質があります。発がん性物質を大便として体外に排出する働きにより、がん予防効果が期待できます。
N-1乳酸菌がヒトへもたらす効果を調べるため、日本獣医畜産大学 応用生命科学部の寺田厚教授のもと、平成16年に効能試験がおこなわれました。
健康な成人(男性4名と女性6名の計10名、22~23歳)が対象です。食事は普通に取り、試験期間はほかのヨーグルトや、乳酸菌やオリゴ糖を含む食品を食べないようにしたうえで、下記のものを摂取しました。
ヨーグルトは10%脱脂粉乳となるように25℃温水で溶かし、この1,000ml脱脂粉乳にLactobacillus casei N-1培養ヨールグト200mlを添加して、30℃48時間培養した。
これを1日300ml、朝食後に14日間摂取し、それぞれ接種前0日と、摂取7日目と14日目、摂取中止後7日目に検体を採取しました。
腸内フローラ、腐敗産物、短鎖脂肪酸、大便pHおよび水分量が測定されています。
N-1乳酸菌を意識的に摂取した期間において、腸内フローラの環境が良好になったことがわかりました。
ビフィズス菌の菌数はヨーグルト摂取中有意(7日目p<0.05、14日目p<0.01)に増加し、乳酸桿菌も摂取14日目に有意(p<0.05)に増加した。これに対して、レシチナーゼ陽性クロストリジウムはヨーグルト摂取中有意(p<0.05)に減少し、緑膿菌も摂取14日目に有意(p<0.05)に減少した。また、レシチナーゼ陽性クロストリジウムおよび緑膿菌は検出率において、摂取7日目には低下傾向を示し、14日目には有意に低下した。
体にいい影響を及ぼすビフィズス菌や乳酸桿菌は増加し、感染症の原因になりうる菌が減少するという結果が出ています。
アンモニアはヨーグルト摂取中有意(7日目p<0.05、14日目p<0.01)に減少し、硫化物も摂取14日目に有意(p<0.05)に減少した。インドールはヨーグルト摂取中有意(p<0.05)に減少した。フェノール、クレゾールとエチルフェノールはヨーグルト摂取14日目に有意(p<0.05)に減少した。
きつい便臭の原因になるアンモニアやインドールなどの量が減少することがわかりました。アンモニア等の数値が減ったことにより、腸内の腐敗によって生まれる成分が減少している結果になります。
糞便pHはヨーグルト摂取前に比べて摂取中0.3低下した。水分は摂取前に比べわずかに増加した。
糞便pHが低下したことにより、善玉菌優勢の腸内環境になっていることがわかります。また、水分量も上昇していることから、便秘の予防にも役立っています。
酢酸はヨーグルト摂取中有意(7日目p<0.05、14日目p<0.01)に増加し、プロピオン酸および乳酸は摂取14日目に有意(p<0.05)に増加した。
腸内を弱酸性にして悪性の菌を抑制する働きを持つ短鎖脂肪酸が増加する結果になりました。
N-1乳酸菌を配合したヨーグルトを毎日摂取したことにより、便の状態が良くなったり、便の悪臭が減少したりすることがわかりました。
適切な水分量できつい悪臭がしない便は、健康であることのバロメーターになります。便の状態が良くなっていることから、腸内フローラの環境も良くなっているということがわかります。
また、実際に腸内フローラにいる善玉菌と悪玉菌のバランスも良くなっているため、N-1乳酸菌が腸内フローラと便臭などにおいて有用な働きをするということがわかった結果になりました。
ただし、N-1乳酸菌の摂取をやめると効果がなくなってしまうため、効果を持続させたい場合は意識して定期的に摂取することが推奨されます。
N-1乳酸菌を含む商品は、全国の農協乳業協会に由来するものが多いです。そのため、地元の牛乳を使った地方の特産品として発売されているものが多く、それぞれのおいしさを楽しみながら乳酸菌を摂ることができます。
ここでは、N-1乳酸菌が配合された商品の中から、おすすめのものをいくつかご紹介します。
岡山県にある蒜山高原の豊かな自然で育つジャージー牛たち。そのジャージー牛たちから採れる牛乳は、乳脂肪分が5%にも達する濃厚な味わいが魅力です。お土産やお取り寄せでも人気のある蒜山ジャージー牛乳をふんだんに使用した「蒜山ジャージーヨーグルト」は、プレーンからフルーツフレーバーまで色々なラインナップがあるところが嬉しいポイント。N-1乳酸菌を使用しているため、おいしいだけではなくカラダにもやさしいヨーグルトです。食べるタイプも、飲むタイプもあります。
丹那地区の限定酪農家「低温殺菌部会」がつくる生乳を原料にした、香料や安定剤などの添加物を一切使用しない飲むタイプのヨーグルトです。低温殺菌だけで大丈夫なほど、良質な生乳を使用しているところがポイント。からだに優しい原料を使い、からだに優しいN-1乳酸菌を配合しているので、飲むと腸が嬉しいヨーグルトに仕上がっています。酸味と甘みのバランスが良く、ヨーグルトらしいさわやかな味わい。
ただし、どんなに素晴らしい効果が報告されている乳酸菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。いろいろ買ってみて試してみる、というのも楽しいかもしれませんが、自分に合う菌と出会うためには、それなりにお金と時間をかける必要があります。
そこで、自分に合った菌を探すのに役立つツールとして「乳酸菌相性チェッカー」を用意してみました。乳酸菌選びで迷っている方は、ぜひ活用してみてください!
管理人:蝶野ハナ
乳酸菌と人との関係、菌株ひとつひとつの個性、数多くの研究データ……乳酸菌って、知れば知るほどスゴいんです。私たちにとって最も身近な細菌について、もっともっと深く知りたくないですか?