ここでは、協同乳業株式会社が発見したビフィズス菌LKM512について、期待される作用や研究データ、同菌を配合した商品などについてご紹介しています。ヒトを対象とした臨床試験では、便秘解消やアトピー性皮膚炎などの緩和作用が示唆されました。
ビフィズス菌LKM512とは、1997年、「メイトー」ブランドで知られる協同乳業株式会社が発見した細菌。胃酸に強く、大腸に到達してから増殖するという特徴を持つ細菌です。
これまで、協同乳業株式会社の研究を中心に、ヒトの体に対するいくつかの作用が報告されています。その中でも、代表的な作用は下記の3点です。
ヒトを対象とした臨床試験において、ビフィズス菌LKM512を摂取したグループに便秘症状の改善が確認されました。
ヒトを対象とした臨床試験において、ビフィズス菌LKM512を摂取したグループに、アトピー性皮膚炎の症状(かゆみ、灼熱感)の著しい改善が確認されました。
ヒトを対象とした臨床試験において、ビフィズス菌LKM512を摂取したグループに、大腸における変異原性の低下が確認されました。変異原性とは、一般に発がんの誘因として知られる性質です。
協同乳業株式会社の松本光晴氏らのグループは、排便状態が不調な(週4回以下)男女30名を対象に、LKM512の摂取による排便状態への影響に関する臨床試験を行いました。
被験者を、LKM512配合ヨーグルトを投与するグループと、その他複数のグループに分け、それぞれの排便状態を確認。以下のような結果が確認されました。
M512ヨーグルト投与前に比べて排便回数は有意(p<0.05)に増加し、糞便水分含有量の増加傾向も認められた。
(中略)
以上の成績は、LKM512ヨーグルト投与が便性や糞便内細菌叢の改善に有効であることを示している。
引用元:協同乳業(株)研究所ほか「ifidobacterium lactis LKM512株含有ヨーグルトのヒト糞便菌叢および便性改善に及ぼす影響」(腸内細菌学雑誌 14:97-102,2001)[pdf]
協同乳業株式会社の研究グループは、10名のアトピー性皮膚炎患者を対象に、ビフィズス菌LKM512による症状緩和作用に関する臨床試験を行いました。
試験の結果、4週間にわたるビフィズス菌LKM512を配合したヨーグルトを摂取したグループは、プラセボ群に対して「かゆみ」「灼熱感」のスコアが大幅に改善。ビフィズス菌LKM512が、大腸にポリアミンという物質を増加させたこと、超粘膜のバリア機能を回復させたこと、Th1型サイトカインを誘導したこと、などが作用の背景にあると考えられました。
この臨床試験結果を受け、ビフィズス菌LKM512の摂取が、成人における難治性のアトピー性皮膚炎に効果的であると結論付けています。
協同乳業株式会社の研究グループは、健康な成人男女を対象に、ビフィズス菌LKM512の摂取による大腸での変異原性(※)の変化に関する臨床試験を行いました。
臨床試験の結果、ビフィズス菌LKM512を摂取したグループにおいて、変異原性の有意な低下を確認。この変化について、同研究グループは「ビフィズス菌LKM512の摂取によるポリアミンの増加がもたらした作用」と推測しています。
※変異原性…生物の遺伝情報に不可逆的な変化をもたらす性質のこと。一般に、がんの誘発因子となることで知られています。
ビフィズス菌LKM512に関する理解をより深めるために、ビフィズス菌LKM512に関連する豆知識などに触れてみましょう。
ビフィズス菌LKM512とは、1997年、発酵乳の中から発見された細菌の一種。胃酸に強い性質を持つため、生きたまま腸まで届くことが特徴です。また、大腸に届いた後に自己増殖する点も、ビフィズス菌LKM512の大きな特徴と言われています。
これまで報告されたビフィズス菌LKM512の作用については、国際的な科学誌にも掲載されるなどしています。
生きたまま腸に届くことや、大腸の中で増殖することがビフィズス菌LKM512の大きな特徴。また、大腸の中でポリアミンという物質の生成を促すことが、他のビフィズス菌・乳酸菌では確認されていないポイントです。
ポリアミンとは、簡単に言えば、細胞の安定化を促す物質のこと。DNAの安定化を促すことから、細胞の変異(発がんなど)を予防する働きがあると考えられています。前述の「アトピー性皮膚炎の症状緩和」も、この作用の一環であると言えそうです。
ビフィズス菌LKM512とポリアミンの研究は、平成21年、農水省が実質的に管轄する「生研センター研究推進事業」(通称)に採択されました。
「生研センター研究推進事業」とは、国民生活に有益なテーマであると判断される研究課題に対し、国が大きな資金を給付する制度のこと。国が公募制でテーマを募り、高い競争倍率の中から給付対象の研究テーマが決まります。
「生研センター研究推進事業」に採択されるのは、大半が大学の研究機関。民間企業が採択されたことにおいて、協同乳業株式会社は異例とされています。
ビフィズス菌LKM512を配合した商品は、協同乳業株式会社が展開するブランド「メイトー」や、他の会社から複数販売されています。
1個(100g)あたり約30億個のビフィズス菌LKM512を配合した特定保健用食品。腸内のビフィズス菌を増やし、腸内環境の改善を目指して開発された商品です。
手軽にビフィズス菌LKM512を摂りたい方に向けて開発された、顆粒タイプのLKM512配合食品。顆粒ながらも、ビフィズス菌は生きたまましっかりと腸まで届くそうです。
ビフィズス菌LKM512配合のヨーグルトを、自宅で簡単に作ることができる種菌。1リットルの牛乳に1包を混ぜるだけで、LKM512配合ヨーグルトを1リットル作ることができます。
どんなに素晴らしい効果が報告されている菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。
もちろん、ここで紹介したビフィズス菌LKM512についても同様で、この菌が合うかどうかは、実際に摂取してみて、自分の体調の変化を確認してみるしかないのが現状です。
世の中に存在する乳酸菌・ビフィズス菌には数えきれないほどの種類があり、商品化されているものだけでも膨大な数があります。そのため、自分と相性の良い菌を見付けるためには、それなりの覚悟をもって、根気よく挑まなくてはなりません。
しかし、自分にピッタリの菌を見付けるのは、それだけの価値があること。一生をかけて、理想の乳酸菌を追求し続けるくらいの気持ちで挑むことが大切です。摂取せずにどんな菌が合いそうか、なんて考えても意味はないので、まずはどんな菌があるのかを知り、興味のあるものから順にかたっぱしから試していきましょう。
ただし、一部には例外といえる成分もあります。たとえば「乳酸菌生成エキス」という成分は、最初から自分が持っている乳酸菌を育てるためのものです。
そもそも乳酸菌を摂取するのは、自分の腸内で善玉菌を増やして腸内環境を整えることが目的。つまりこの成分を摂れば、自分にピッタリの乳酸菌を摂取するのと同様の効果が得られるというわけです。菌との相性を気にする必要がないため、手っ取り早く健康になりたいという方は、こういった成分を探した方が良いかもしれません。
管理人:蝶野ハナ
乳酸菌と人との関係、菌株ひとつひとつの個性、数多くの研究データ……乳酸菌って、知れば知るほどスゴいんです。私たちにとって最も身近な細菌について、もっともっと深く知りたくないですか?