腸の中に長くとどまる、LGGは持続性の高さが大きな特長です。
乳酸菌は、とても多くの種類があり、それぞれに名前がつけられて分類されています。LGGの正式名称は「ラクトバチルス(属)・ラムノーサス(種)・GG株」といいます。
1985年にアメリカのタフツ大学の教授であるS. L. Gorbach (ゴルバッハ)博士と、B. R. Goldin(ゴルディン)博士によって健康な人の腸内から「胃酸などへの耐性が強く生きたまま腸まで到達する乳酸菌」として発見され、分離されたので彼らの頭文字「GG」が付いています。「L」は乳酸桿菌を意味するLactobacillusから付けられました。
この乳酸菌LGGは腸にくっつきやすく、腸内に長く留まることが特徴で、効果はインフルエンザや花粉症の症状軽減、大腸炎の予防効果などが報告されているそうです。
それではなぜ、くっつきやすく、腸内に長く留まることができるのかですが、実はこの菌、表面に毛が生えているボサボサな菌だからなんだそうです。
一般的な乳酸菌は表面がなめらかにツルっとしているそうですが、LGGはPili(ピリ)と呼ばれる線毛があり、この線毛のおかげで腸内に付きやすいのだそうです。
そして驚くことにLGGに関する研究論文の数は、2017年9月の時点で1050報以上も出され、世界中で最も研究されている乳酸菌と言われているそうです。
そんなにたくさんの研究がされているLGG菌、どんな効果があるのか気になりますが、LGG菌の善玉菌による整腸作用の他にも、免疫機能を向上させることができるといわれています。
免疫機能が活発だと、さまざまな病気の予防になるだけでなく脂肪燃焼効果や冷え性の防止、アレルギーへの抵抗、抗ストレスといった色々な健康効果が期待できますよね。
なかでも世界中の研究者からされているのは、フィンランドの研究者チームによって、医学誌『ランセット』などに報告されたアトピー性皮膚炎の予防に関する研究だそうです。
先進国でのアトピー性皮膚炎の発症率が大きく、特に新生児のアトピー性皮膚炎の患者さんは年々増加する傾向にあり疾患の原因の解明が急がれています。アトピー性皮膚炎の原因は完全には解明されていませんが、免疫システムが健全に機能しないことが疑われているようです。
私たちも、不規則な生活習慣や食事のバランスの乱れ、運動不足などで体の不調を感じることが多くなっていますが、これも免疫と関係しているといわれ、実際に免疫機能が上がると精神も安定し疲労回復も早くなり、若々しくなるといった美容効果もあることがわかっています。
花粉症の鼻づまりの症状の軽減やインフルエンザウイルス感染予防効果なども、LGG乳酸菌が良い菌を増やし悪い菌を減少させて腸内環境を整えることで免疫調整機能を高めたからだと言われています。
「ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、胃酸や胆汁酸によって腸に届く前に大半が死滅してしまう」という課題に対し、1980年代、タフツ大学のゴルバッハ教授・ゴルディン教授という2人の研究者は、生きたまま腸まで届く乳酸菌の発見・開発の方法を探っていました。
研究を行うこと数年。ついに両教授は、健康な成人の腸内から胃酸や胆汁酸への耐性が強い乳酸菌を発見したのです。乳酸菌を意味するLactobacillusの頭文字と、両教授の頭文字を取り、この乳酸菌をLGGと名付けました。
学会から注目されるようになったLGGは、その後、世界中の科学者による研究対象に。LGGが持つアトピーに対する効果が英国の権威ある医学誌「ザ・ランセット」に掲載されるなど、世界的に注目を集めました。現在、LGGは世界で最も研究されている乳酸菌と言われています。
日本でLGGが注目されるきっかけとなったのは、タカナシが1996年に発売した「おなかへGG」という商品。当時、この商品は乳酸菌を関与成分とする日本初のトクホとして、マスコミを通じ広く注目を集めました。現在、LGGを配合した商品は世界40カ国で販売されています。
本人もしくは、家族にアトピー発症歴のある妊婦を対象に、LGGを摂取し、その子どものアトピーの発症を調査。
被験者を2つのグループに分け、1つは、母親がLGGを摂取するグループで、出産の約1カ月前(2~4週間前)から、母乳を与える出産後6カ月までの期間、LGG入りのカプセルを摂取しました。もう1つのグループは、同じ期間中、プラセボ(偽薬)を飲用。つまり被験者の母親たちは、自分が摂取しているカプセルがLGG入りか否かを知らないということです。そして、両グループの母親の子どもが2歳、4歳、7歳になった時点でのアトピーの発症率を比較しました。
その結果、LGGを摂取した母親から生まれた子どもは、2歳の時点で発症率が23%(64人中15人)であったのに対し、摂取していない母親から生まれた子どもでは、発症率が46%(68人中31人)。つまり、アトピーの発症率が半分に抑えられる結果に。
さらに、4歳では、摂取したグループが26%の発症率であったのに対し、摂取していないグループでは46%、7歳では摂取したグループが43%、摂取していないグループは66%でした。[注1]
神奈川県内に在住するスギ花粉症患者を2つの群に分け、一方にはLGG乳酸菌TMC0356乳酸菌で調製した発酵乳(ヨーグルト)を、もう一方には二つの乳酸菌が入っていない発酵乳を10週間摂取してもらいました。
その結果、GG乳酸菌とTMC0356乳酸菌で調製した発酵乳を摂取することで、花粉症による鼻づまりの自覚症状が有意に改善されました。LGG乳酸菌とTMC0356乳酸菌は、スギ花粉症による鼻症状の改善に作用することが明らかになりました。
LGG乳酸菌とTMC0356乳酸菌が腸管免疫に与える影響を調べるため、蛍光染色したLGG乳酸菌をマウスに投与し、パイエル板を採取したところ、確かにパイエル板内にLGG乳酸菌が取り込まれている事が確認されました。次にマウスへLGG乳酸菌を1週間継続投与し、パイエル板を採取して培養を行いました。
その結果、IgA抗体の産生量が対照群と比較して有意に高まることがわかりLGG乳酸菌は腸管の免疫を活性化し、外部からの異物(アレルゲンなど)に対して、腸管の防御機構を高めることが示唆されLGG乳酸菌とTMC0356乳酸菌はそれぞれ異なった抗アレルギー作用を持つことが考えられ、2つの乳酸菌を摂取することによって、その効果はより強くなると考えられます。
マウスの鼻腔内にLGG乳酸菌を3日間にわたり投与。その後、マウスの肺のNK細胞(インフルエンザウイルスなどを撃退する免疫細胞)の変化を調べてみたところ、NK細胞の活性が有意に向上していました。
また、LGGの3日間の投与のあと、マウスをインフルエンザに感染させてみたところ、インフルエンザ発症率が有意に低下。LGGのインフルエンザ予防効果が示唆されました。
マウスに対し、14日間にわたってLGGを経口投与。その後インフルエンザに感染させてみたところ、マウスにおけるインフルエンザ特有の症状が軽減しました。さらに肺の中のインフルエンザウイルスの状況を調べてみたところ、ウイルスの量が有意に減少。
LGGの経口摂取により、腸管内の免疫系を介してインフルエンザへの感染予防効果があることが示唆されました。
日本国内におけるLGGを使用した商品は、主に、乳製品で知られるタカナシから販売されています。ここでは、LGGを配合したタカナシの商品の一部をご紹介します。
乳酸菌食品として日本で初めて特定保健用食品に指定された、記念すべき商品。ロングセラーなので、すでに習慣的に食べている方も多いことでしょう。さまざまな健康効果が期待できるだけではなく、酸味を抑えた味わいも人気です。
LGGを配合したドリンクタイプのヨーグルトで、特定保健用食品に指定されている商品。100mlの飲み切りタイプなので、忙しい朝でも手軽に飲むことができそうです。
生きたまま腸まで届くLGGに加え、乳酸菌を増殖させると言われるガラクトオリゴ糖を配合。原料の産地にもこだわり、100%北海道産の牛乳を使用しています。味がプレーンタイプなので、シロップと混ぜたり、果物と混ぜたりして食べるのもおすすめです。
上でご紹介した「プレーンヨーグルト」の低脂肪商品。ダイエット中の方などに嬉しい商品ですね。脂肪を抑えてもLGGには影響がないため、期待される効果も変わりません。「プレーンヨーグルト」に比べると、ややあっさりした味わいです。
北海道釧路・根室地方の大自然の中で育った牛の生乳のみを使用した、100%牛乳原料のヨーグルト。「味香り戦略研究所」の分析によると、市販されている一般的な牛乳100%タイプのヨーグルトの中で、この商品がもっともコクがあるという結果が得られているそうです。
LGGに加えて、ビタミンB群の一つである葉酸を豊富に配合したドリンクタイプのヨーグルト。成人男女の一日に必要な葉酸は240マイクログラムとされていますが、「LGGのむヨーグルト葉酸入り」には、1本あたり200マイクログラムもの葉酸が配合されています。妊娠中の女性には特におすすめ。
管理人:蝶野ハナ
乳酸菌と人との関係、菌株ひとつひとつの個性、数多くの研究データ……乳酸菌って、知れば知るほどスゴいんです。私たちにとって最も身近な細菌について、もっともっと深く知りたくないですか?