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L-55株

「ラクトバチルス・アシドフィルス・L-55株」が正式名称。アレルギー症状の改善と便秘改善に特化した乳酸菌として有名です。胃酸に強く、100%生き残ることが確認されています。

オハヨー乳業が発見したL-55乳酸菌

L-55乳酸菌を発見したのは、ヨーグルトの製造販売などで知られるオハヨー乳業株式会社です。もともと同社はカバヤ食品にキャラメルの原料(練乳)を供給するため1953年に設立された会社でしたが、練乳の製造に関連して生乳や乳酸菌等の基礎研究にも着手。その過程で、2000年に生後約1週間~1歳6か月の日本人の赤ちゃんから発見したヒト由来の乳酸菌が、L-55乳酸菌です。

「生きて腸まで届く」というコンセプトで一躍有名になったL-55乳酸菌。のちに、岡山大学等との共同研究によって、L-55乳酸菌にはアレルギー症状の緩和効果など、さまざまな効果が期待できることが判明。L-55乳酸菌を配合した商品を次々に生み出していきました。

なお同社の研究所は、L-55乳酸菌の発見以降もさらに乳酸菌の研究を進め、2009年には岡山県産の白桃から植物乳酸菌P2L9を発見。L-55乳酸菌とあわせて、2つ目の「生きて腸まで届く」乳酸菌の大発見となりました。

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胃液や胆汁酸に負けない乳酸菌

L-55株は生菌

日本人には日本人由来の乳酸菌が合う傾向もあり、その日本人の赤ちゃん由来のL-55株はかわいらしい菌という感じがしますが、胃液や胆汁酸といった酸に強い性質を持っていることがわかっています。

しかも、その強さは他の菌とは別格です。

たとえば人工胃液の耐性試験では100パーセントの生存率を示し、人工腸壁での耐性試験でも、ほとんどが生き残っただけでなく、ブルガリア菌などの7倍~8倍の付着性があり、しかも付着後に乳製品の中で増殖することもわかりました。これらの特徴が示すようにL-55乳酸菌は驚異的に強く、生きた状態で腸まで届く菌なのです。

胃酸や胆汁酸などに弱い一般的な乳酸菌が消化の過程で死滅してしまう場合、善玉菌のエサになるというだけで、それ以上の効果や便秘解消効果があまり期待できなくなります。

また、腸のぜんどう運動を促したり、悪玉菌の増殖を抑えたりするためには腸に長く留まることが必要ですが、L-55乳酸菌は、腸管付着性についても前述のように高いことがわかっています。

健康や美容にも働きかける

L-55株は花粉症などのアレルギー症状を緩和する作用があると言われています。

オハヨー乳業と岡山大学大学院の共同研究でマウスを使った動物実験をおこない、アレルギーを抑える薬品と同じくらいの効果が確認され、またアトピー性皮膚炎の症状緩和効果もマウスを使った実験で確認されているそうです。

これは、L-55乳酸菌を摂取することで、花粉症やアトピーなどアレルギーの原因であるIgE抗体を減らすことができるからだと考えられています。

イソフラボンの吸収を助ける

また、L-55株は、他の乳酸菌では聞いたことがないイソフラボンを吸収しやすいタイプであるアグリコン型へと変換して吸収を高める効果があることもわかっています。

更年期障害や骨粗しょう症などに悩む女性には、イソフラボンと聞けば関心は高いですし、美容や発毛にも関係ある成分ですから、若い女性や男性でもぜひ試してみたい乳酸菌ですよね。しかも消費者庁に届出された機能性表示食品なので安心して摂ることができそうです。

しかし現在のところL-55株はヨーグルトやドリンクなどの乳製品でしか商品化されておらず、コンビニ流通もセブンイレブンのみなので、保存性(サプリメントによくあるような粉末やカプセル、錠剤などになっていないため)や食の細い高齢者、乳製品が食べられない場合などは利用できないのが残念です。

2016年にはスウェーデンのヘルスケア企業(世界90の国と地域の医療・健康に携わる企業や機関に販路を持つプロバイオティクス専業メーカー)との間で乳酸菌の事業提携に関する契約を締結し、プロバイオティクスサプリメントの独占販売契約と、Lactobacillus reuteriを飲料や乳製品の原料として使用するライセンス契約の2つを新たに締結しているので新製品の開発と販売に期待したいところです。

エビデンスがある!L-55株の効果

花粉症症状の緩和効果

岡山県内の公募ボランティアに対し、耳鼻咽喉科専門医が花粉症と診断した症例を対象として、26例(男性11例、女性15例)を解析しました。スギ花粉症にL-55株含有ヨーグルトと非含有ヨーグルトを花粉飛散時期に13週間飲用してもらい症状を比較。

その結果、L-55株はスギ花粉症に対する緩和効果有し、治療薬の併用により効果的に症状を軽減、あるいは使用する薬剤を減量することが期待されます。

ウイルス感染予防効果(動物実験)

ニワトリにL-55乳酸菌の菌体を毎日経口投与して、4週目に感染力を弱めたニューカッスルウイルスを経鼻接種しました。その後、免疫細胞の数および活性を測定し、免疫力におよぼす影響を調査。

その結果、L-55乳酸菌を摂取したニワトリ(L-55乳酸菌摂取群)では、ウイルスや細菌を体内から排除する免疫細胞の一種である、キラーT細胞(※)と単球数が、L-55乳酸菌を摂取していないニワトリ(対照群)に比べて、統計学的に有意に増加しました。また、L-55乳酸菌摂取群においてナチュラルキラー活性(※)も有意に上昇しました乳酸菌が感染動物のキラーT細胞と単球数に影響すること、さらに抗ニューカッスルウイルス作用を有することを明らかにしたのは世界初です。

近年、新型インフルエンザや口蹄疫など、人や家畜の感染症に関するニュースが話題になっています。また、薬剤耐性ウイルスの出現が後を絶たないこともあり、ウイルス感染に対する予防や治療法に関心が高まるなかで、L-55乳酸菌を摂取することによって、ウイルス感染リスクの低減が期待できます。

※キラーT細胞

免疫細胞の一種で、ウイルスに感染した細胞を破壊して、ウイルスを排除します。

※ナチュラルキラー活性

ナチュラルキラー細胞(免疫細胞の一種)が、ウイルス感染細胞を破壊して、ウイルスの増殖を抑える活性

アレルギー症状の緩和

L-55乳酸菌によるアレルギー症状改善効果のメカニズムについて、平成21年2月、岡山大学とオハヨーの共同研究チームは次のようなプレスリリースを発表しました。

この発表以前にも、L-55乳酸菌のアレルギー症状緩和効果について学会で発表していたものの、効果の背景にあるメカニズムについては明らかにされていませんでした。

ヘルパーT (Th) 1 細胞の増加を促進

今回の実験では、まずアレルギーを引き起こす物質 (抗原) をマウスに注射して、アレルギーを発症させたマウスの脾臓から、免疫細胞を集めた。抗原を加えた液体培地中でこの免疫細胞を培養すると、インターロイキン-4 が作られ、それに伴って IgE 量が増加した。一方、この液体培地に L-55 乳酸菌の菌体を加えて免疫細胞を培養すると、インターフェロン-γ が増え、その結果として IgE 量が減少した。これらの結果から、L-55 乳酸菌は、インターフェロン-γ の産生を促進することでアレルギーを抑制していることがわかった。また実験では、ヘルパーT (Th) 1 細胞の増加をうながすインターロイキン-12 という免疫調節物質の産生も確認されたことから、インターフェロン-γ の産生が高まったのは、Th1 細胞の数が増えたためと考えられた。

引用元:(pdf)岡山大学「L-55 乳酸菌のアレルギー抑制作用の機序を解析」

L-55乳酸菌によって増殖が促されたとされる「ヘルパーT (Th) 1 細胞」とは、細胞内に侵入した細菌やウイルスを撃退するために重要な役割を果たす細胞。L-55には、アレルギー症状の抑制以外にも幅広い効果が期待されます。

L-55に期待される役割

昨今、先進国を中心にアレルギー性疾患の患者が増加していると言われています。これらアレルギー性疾患に対する有効な治療薬が次々に開発されているものの、一方で、副作用や価格面での問題が長く指摘されてきました。

これら問題を解消すべく、治療薬ではなく、体内の微生物によるアレルギー性疾患への対策も注目されてきました。しかし、こうした微生物を含む食品は副作用がなく安価であるという反面、疾患の改善効果が弱いという弱点がありました。

L-55乳酸菌は、これらの諸問題を同時に解消できる可能性を秘めた画期的な乳酸菌。岡山大学とオハヨーの共同研究がさらに進むことで、今後、アレルギー性疾患に対する治療法の概念が根本的に変わっていく可能性があるでしょう。

ただし、どんなに素晴らしい効果が報告されている乳酸菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。いろいろ買ってみて試してみる、というのも楽しいかもしれませんが、自分に合う菌と出会うためには、それなりにお金と時間をかける必要があります。

そこで、自分に合った菌を探すのに役立つツールとして「乳酸菌相性チェッカー」を用意してみました。乳酸菌選びで迷っている方は、ぜひ活用してみてください!

あなたにピッタリな菌株はどれ?乳酸菌相性チェッカー

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L-55乳酸菌を配合した商品

オハヨーは、L-55乳酸菌を配合したヨーグルトやヨーグルト飲料をたくさん製造販売しています。それら商品のうち、代表的な3つのヨーグルトをご紹介します。

きょうの鉄分葉酸のむヨーグルト

鉄分不足と葉酸不足を補うための、女性にうれしいL-55乳酸菌入りドリンク。特に鉄分が豊富で、1本あたり、15歳以上の女性の鉄分摂取推奨量10.5mgを配合しています。

希望小売価格 105円
内容量 190g
原材料 生乳、乳製品、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、デキストリン/香料、ピロリン酸鉄、ビタミンC、葉酸、ビタミンB12

たっぷり生乳ヨーグルト 3個パック

生きて腸まで届くL-55乳酸菌を使用したヨーグルトのマルチパック。RO膜濃縮製法を採用しているので、生乳の美味しさがギュッと凝縮されています。安定剤を使用しない自然な甘さも特徴。

希望小売価格 180円
内容量 80g×3個
原材料 生乳、砂糖

ぜいたく果実いちごのむヨーグルト

素材の美味しさを逃さない特殊製法を採用。いちごの甘酸っぱい味と、粒々の果肉感を楽しめるドリンクタイプのヨーグルトです。生きたまま腸まで届くL-55乳酸菌入り。

希望小売価格 138円
内容量 190g
原材料 生乳、いちご果肉、乳製品、砂糖、果糖、デキストリン/香料、安定剤(増粘多糖類)、酸味料

参照元

  1. (PDF)岡山大学自然科学研究科資料(https://www.okayama-u.ac.jp/jp/press/data/210217/shiryou5.pdf
  2. Lactobacillus acidophilus:L-55含有ヨーグルト引用のスギ花粉症に対する臨床効果の検討(https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/61/5/61_KJ00008045719/_article/-char/ja/
  3. オハヨー乳業株歯科会社企画開発部:基礎研究室の公表論文(https://ci.nii.ac.jp/naid/110006394672
  4. オハヨー乳業株式会社「採用情報:オハヨー乳業について2007年〜」(https://ci.nii.ac.jp/naid/110006394672
  5. (pdf)岡山大学「L-55 乳酸菌のアレルギー抑制作用の機序を解析」(https://www.okayama-u.ac.jp/jp/press/data/210217/shiryou5.pdf
  6. オハヨー乳業株式会社「商品一覧」(https://www.ohayo-milk.co.jp/

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管理人:蝶野ハナ

蝶野ハナ

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