プラズマ乳酸菌(JCM5805株)はヨーグルトやチーズ、醗酵バターなどを製造するときに使われる乳酸菌の一種。ウイルス感染から身体を守ってくれる乳酸菌です。
プラズマ乳酸菌(JCM5805株)の学名は、ラクトコッカス・ラクティスとつけられています。
キリン株式会社と小岩井乳業株式会社との共同研究で発見され、これまでに多くの学会や学術誌で成果が明らかになっている乳酸菌です。
多くの乳酸菌は一部の免疫細胞としか相性が合わず、乳酸菌が増えません。しかしプラズマ乳酸菌は免疫細胞の司令塔である、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)という免疫細胞に働きかけて、免疫力をアップしてくれます。
その仕組みは、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)に働きかけることで、免疫力に関わる三つの細胞(NK細胞やキラーT細胞、ヘルパーT細胞)を活性してくれるからです。
これらの細胞の働きによってウイルスに対する免疫力がアップするので、さまざまなウイルス感染の防御ができます。[注1]
さらに加熱された死菌だけでなく生菌でも同じレベルの作用が認められています。そのため色んな食品への応用が期待できるということで、色んな食品会社が目を付けている乳酸菌なのです。
30歳から59歳までの健康な男女を対象に、プラズマ乳酸菌で発酵したヨーグルト飲料(プラズマ乳酸菌を約1,000億個含む)、またはプラズマ乳酸菌を含めずに香りや味を同じものにした飲料(プラセボ飲料)を摂取してもらいました。飲料の摂取期間は10週間で、プラズマ乳酸菌入りの飲料は106名、プラセボ飲料は107名が摂取。
飲料を摂取してもらっていた間の風邪・インフルエンザの罹患者数は、プラセボ飲料群が14名で、プラズマ乳酸菌入りの飲料群は7名でした。
プラズマ乳酸菌入り飲料摂取群とプラセボ飲料摂取群を比べたところ、プラズマ乳酸菌入り飲料を摂取した人の「咳・のどの痛み・熱っぽさ」といった風邪・インフルエンザ症状が軽くなったことがわかりました。
また被験者から回収した末梢血単核球に不活化A型ヒトインフルエンザウイルス(H1N1)を加えて反応を見たところ、抗ウイルス遺伝子であるISG-15遺伝子の発現量の有意な上昇も確認されています。
末梢血単核球:末梢血から分離された単球やリンパ球などの単核細胞のことです。[注2]
20歳以上65歳未満の健康な男女を対象に、プラズマ乳酸菌を1,000億個が含まれたドリンク、プラズマ乳酸菌を含めずに香りや味が同一なドリンクを摂取してもらう試験を実施しました。
ドリンクを飲む期間は8週間で、プラズマ乳酸菌摂取群は47名、プラセボ飲料摂取群は48名です。
プラズマ乳酸菌入りのドリンクを飲むグループと、プラズマ乳酸菌を飲まないグループにわけました。プラズマ乳酸菌を飲まないグループと比較したところ、プラズマ乳酸菌入りのドリンクを飲んだグループでは鼻汁や寒気といった体調不良がでる人数が減りました。
末梢血単核球を用いた検討では、pDC活性化の指標であるCD86の発現量の上昇や抗ウイルス遺伝子であるISG-15遺伝子の発現量の上昇が確認されました。[注3]
岩手県雫石町にあるすべての小・中学校に通う児童・生徒を対象に、プラズマ乳酸菌で発酵したヨーグルト飲料(プラズマ乳酸菌を約1,000億個含む)を2015年1月16日~3月18日まで週3回摂取してもらいました。
雫石町に隣接する7市町村のうち、2015年のインフルエンザの発症パターンが雫石町と同様だったのがA町でした。A町と雫石町のインフルエンザでの欠席者数を週ごとの罹患率として比較したところ、摂取期間中の最大罹患率が雫石町では約3割低かったことが分かっています。累積罹患率も雫石町はA町より低かったことが判明しました。[注4]
18歳から39歳までの健康な657名のうち、プラズマ乳酸菌を含むカプセル摂取群68名、プラセボカプセル摂取群66名の134名について、カプセル摂取開始前と摂取終了前に血液中の免疫指標評価を行いました。
プラズマ乳酸菌を摂取すると、細胞内でウイルスの増殖や拡散を防ぐ重要なウイルス防御物質として注目されているビペリン遺伝子の発現量が、摂取前よりも2倍以上増加することが世界で初めて確認されました。また、この臨床試験では風邪・インフルエンザに対する効果も検証しており、咳や喉の痛みなどの上気道炎症の症状を軽減することが報告されています。[注5]
プラズマ乳酸菌の投与により、パラインフルエンザウイルスに感染したマウスの肺免疫に関する実験
マウスに1日1mgのプラズマ乳酸菌を2週間経口投与しました。その後、パラインフルエンザウイルスをマウスに感染させて、プラズマ乳酸菌の抗パラインフルエンザ効果を検証します。
プラズマ乳酸菌を投与しなかったマウスでは、10日以内に全個体の死亡が確認されました。一方プラズマ乳酸菌を投与したマウスは、死亡した個体がプラズマ乳酸菌を投与しなかったマウスの3割に低減し、肺炎症状の軽減も認められています。
この結果によって腸管のpDC活性化やIFN生成量の上昇、肺組織中のさまざまな抗ウイルス遺伝子の発現量上昇が関与していることが示唆されました。[注5]
管理人:蝶野ハナ
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