医療の発展や食料事情の改善などにより、年々伸び続ける平均寿命。今や日本では、65歳以上の人が人口の2割以上を占める超高齢化の時代へと突入しました。
平均寿命が延びることは喜ばしいことですが、その一方で「人間らしく生き生きと過ごせるまでの寿命」、いわゆる健康寿命に関する議論も増えています。
医療の発達に伴い、今後もますます平均寿命は延びていくことでしょう。しかし、現代の医療技術では老化を抑制することはできません。つまり、寿命自体は延びていても、健康寿命の改善方法は確立されていないのです。
h61乳酸菌は、まさに健康寿命を延ばすことを目指して開発された乳酸菌。日本人のみならず、世界中の人々の幸せに貢献する菌となるかも知れません。
h61乳酸菌は、老化抑制作用が注目されている乳酸菌。農研機構畜産草地研究所の主任研究員である木本広実氏が主導する形で、研究・開発が進められました。
現在、h61乳酸菌を配合した商品の開発には、同研究所のみならず、筑波大学や茨城県、民間企業などが参加。さまざまな研究機関・企業を巻き込み、h61の商品化も盛り上がってきています。
h61乳酸菌は老化抑制作用を目指して開発された乳酸菌。およそ半世紀前、畜産草地研究所がチーズを作る際に用いられる乳酸菌(チーズスターター)の中から分離を成功させました。
その後、マウスを使用した試験において、著しい老化抑制作用を持つことを確認。ヒトを対象とした臨床試験においても、肌状態の老化抑制作用が確認されています。
なお、h61乳酸菌は死菌でも生菌と同様の作用を持つ乳酸菌。よってヨーグルトだけではなく、他にもさまざまな食品への添加が期待されています。
農研機構畜産草地研究所は、h61乳酸菌におけるマウス実験、およびヒトでの臨床試験を行い、h61乳酸菌が持つ一定の効果を確認しました。以下、同研究所が発表した研究論文の一部を抜粋します。
マウスにh61乳酸菌を投与したところ、骨密度や肌状態において、老化減少の抑制が確認されました。
1.H61株の老化抑制作用
老年期に骨粗鬆症を発症する老化促進モデルマウスにH61株(死菌体)を投与すると、非投与群と比べて、老化の進行に伴う骨密度の減少及びマウス外観の肌状態の劣化(脱毛、潰瘍発生等)が抑制された。H61株をマウスの老化が始まった時期から(若いときからでなく)与えたにも関わらず、老化抑制作用を示したことは特筆すべき事項である。
上記の説明に対し、実験で得られた具体的なスコアは以下の通りです。
対照群(プラセボ群・h61乳酸菌を与えなかった群)とh61乳酸菌投与群と間の老化抑制作用において、両群に著しい有意差が確認できます。
乳酸菌を摂取しても、その大半は胃酸によって死滅してしまいます。h61乳酸菌も同様で、生きたまま腸まで届けることは困難。
しかし、h61乳酸菌は死菌の状態でも、腸で生菌と同様の作用をもたらすことが判明しました。
2.生菌、死菌体、発酵乳のいずれの形態でも有効
老化促進モデルマウスを用いて同様に試験した他の2つの乳酸菌株では老化抑制作用は認められなかった。さらにH61株について生菌、発酵乳の形態でマウスの肌状態に及ぼす影響を調べたところ、肌状態の劣化が抑制された。すなわちh61株の老化抑制作用は、生菌体、発酵乳の形態でも見られるが、特筆すべきは、死菌体でも見られることである。このため、H61株は発酵乳以外の食品への応用が可能であり、H61株の利用性は幅広い。死菌体は生菌に比べて保管や取り扱いが容易であり、サプリメントとして、また、食品への添加も期待できる。
死菌でも生菌と同様の作用を持つのであれば、論文にある通り、サプリメントを始め、さまざまな食品への添加が容易になります。商品として非常に汎用性の高い乳酸菌と言えそうですね。
ヒトを対象とした臨床試験においては、肌の老化抑制作用が確認されました。
3.ヒトでの効果
H61株の摂取がヒトの肌状態へ及ぼす影響を年齢層別に評価した。被験物質は、加熱処理後、冷凍乾燥を行ったH61菌体(60mg)を含むバレイショデンプンまたはバレイショデンプンのみ(プラセボ)とした。被験者は20~60歳代の女性とした(プラセボ摂取群19人、H61株摂取群20人;全被験者の平均年齢は45.7歳)。被験物質の摂取開始前、摂取終了後において、肌状態(前腕、頬の水分量、頬の弾力、きめ、明るさ)を測定した。すべての機器分析評価項目において両群間で統計的有意差は認められなかったが、被験物質摂取前後の頬水分量変化量はH61群で増加している人が多かった。さらに、50~60代においてプラセボ摂取群では平均頬水分量が被験物質摂取前に比べて減少したのに対し、H61株摂取群では増加した。このことからH61株摂取は50~60代の女性のヒト肌状態機能改善において有用である可能性が示された。
上記論文に関して、年代別のデータをご紹介します。
この実験データをご覧いただければ分かる通り、若い年齢層よりも、特に年配の年齢層において、顕著な老化抑制作用が期待できるようです。
上記の臨床試験は、h61乳酸菌の肌老化に対する効果を検証したものですが、肌の老化は、全身的に進む老化現象の一部。まだ研究で明らかにされていないだけで、その他の機能や部位に対する効果を持っている可能性も十分に考えられます。
もともと、試験を主導した畜産草地研究所の木本氏は、美容面における老化抑制作用だけでなく、全身の老化抑制作用を目指してh61乳酸菌の研究を始めたのです。
今後さらに研究が進めば、健康長寿社会の実現に向けて、数多くの商品にh61乳酸菌が配合されるようになる日が来るかも知れません。
h61乳酸菌の研究・開発を主導したのは、農研機構畜産草地研究所の主任研究員・木本広実氏。ここでは、木本氏がh61乳酸菌の研究に着手するきっかけから、研究を経て商品化に至るまでのプロセスをご紹介します。
1907年、ロシア人研究者のイリア・メチニコフ氏が「不老長寿論」という学説を唱えました。同氏が唱える不老長寿論とは、乳酸菌を日常的に摂取することで寿命が延びる、という内容。その理由として、乳酸菌が豊富に含まれているヨーグルトを日常食にしているブルガリア人に長寿が多い、ということが挙げられました。
この学説が発表されてから、世界中の研究者・研究機関が、乳酸菌と寿命との関連についての研究をスタート。以来、乳酸菌は人間の健康にさまざまな影響をもたらすことが分かってきました。
現在でもなお乳酸菌と健康との関連は研究途上の段階。そのような中で、日本の農研機構畜産草地研究所に所属する研究者・木本広実氏は、「人間が健康で長生きできる乳酸菌」の研究に着手。同氏が注目したのが、h61乳酸菌でした。
木本氏が研究に着手したころには、すでにマウス実験による乳酸菌の延命作用を報告した論文が存在していました。しかしながら、確かに乳酸菌に寿命を延ばす作用は確認されたものの、そのマウスが健康な状態で寿命が延長されたのかどうかについては明らかにされていませんでした。
木本氏が目指すのは、あくまでも「健康で長生きできる乳酸菌」の開発。ただ単に寿命を延ばすことではなく、老化減少を抑制しながら寿命を延ばす、ということが木本氏の目指す研究だったのです。
以後、木本氏はマウスを使った数々の実験に着手。その実験に使用した乳酸菌がh61です。数々の実験を通じ、マウスに対して著しい老化抑制作用が確認されたこと、およびヒトにおいて肌の老化抑制作用が確認されたことは、前述の通りです。
木本氏は、h61乳酸菌の研究の過程において、同菌が死菌でも生菌と同様の老化抑制作用を持つことを確認しました。死菌が利用できるならば、さまざまな食品に添加して商品化することが可能です。
実際に、現在、h61乳酸菌を配合した商品の中には、ヨーグルトだけではなくサプリメントも発売されています。今後もさまざまな食品へのh61乳酸菌の添加が試みられるかもしれません。
h61乳酸菌を配合した商品をご紹介します。
畜産草地研究所、茨城県工業技術センター、および民間企業が共同して開発したh61乳酸菌入りヨーグルト。チーズのような濃厚な味わいが特徴です。150mlの他にも900ml入りがあります。
畜産草地研究所、筑波大学、茨城県工業技術センター、いばらき成長産業振興協議会、および民間企業が共同で製造した産学連携のヨーグルト。毎日食べても飽きの来ない味わいに仕上げられています。
畜産草地研究所の特許を利用し、東亜薬品工業が開発した犬・猫用のサプリメント。楽天市場などの通販サイトからでも購入が可能ですが、本来は獣医師専用のサプリメントなので、購入の際にはかかりつけの獣医さんに相談しましょう。
どんなに素晴らしい効果が報告されている乳酸菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。いろいろ買ってみて試してみる、というのも楽しいかもしれませんが、自分に合う菌と出会うためには、それなりにお金と時間をかける必要があります。
そこで、自分に合った菌を探すのに役立つツールとして「乳酸菌相性チェッカー」を用意してみました。乳酸菌選びで迷っている方は、ぜひ活用してみてください!
管理人:蝶野ハナ
乳酸菌と人との関係、菌株ひとつひとつの個性、数多くの研究データ……乳酸菌って、知れば知るほどスゴいんです。私たちにとって最も身近な細菌について、もっともっと深く知りたくないですか?