ここでは、江崎グリコのロングセラー商品である「BifiX」に含まれているビフィズス菌gcl2505について、期待されている作用や研究データなどをご紹介します。便秘解消や、メタボリックシンドロームの予防などの効果が期待される菌です。
ビフィズス菌gcl2505は、菓子やヨーグルトでおなじみの江崎グリコ株式会社が開発・商品化したビフィズス菌。生きたまま腸に届き、かつ、腸の中で繁殖するという性質を持っているのが特徴です。
様々な研究結果が報告されている同菌ですが、これまでのマウス実験やヒト臨床試験から、便秘の解消作用とメタボリックシンドロームの予防作用が示唆されています。
ラットやヒトを対象とした実験により、ビフィズス菌gcl2505には、腸の働きに有意な作用をもたらすことが確認されています。ヒトを対象とした臨床試験においては、排便頻度や排便量の増加が確認されました。
マウス実験を通じ、ビフィズス菌gcl2505には、内臓脂肪の増加抑制を始め、メタボリックシンドロームの予防が期待できる有意な作用を持つことが確認されました。ヒトにおける臨床試験が待たれます。
ビフィズス菌gcl2505については、これまでいくつかの動物実験や臨床試験が行われてきました。ここでは、gcl2505の3つの作用について、詳しい研究データをご紹介します。
江崎グリコ株式会社健康科学研究所の青木亮氏らの研究グループは、ラットを用いたgcl2505の実験において、腸への生理作用に関する検証を行いました。実験結果の概要を簡単にまとめます。
同研究所は、他にもいくつかのgcl2505の作用を確認。gcl2505は腸への生理作用を持つと結論付けました。
グリコ乳業株式会社マーケティング本部商品開発研究所の滝井寛氏は、健常な成人を対象に、ビフィズス菌gcl2505による排便への影響について試験を行いました。
被験者は男性15人、女性47人。無作為に2つのグループに分け、gcl2505を含む100gの発酵乳を毎日2週間投与し、各グループの排便状況を確認しました。
試験の結果については、以下の通りです。
B.ラクティスGCL2505発酵乳摂取期間中、プラセボと比較して排便頻度および便量は有意に増加した(p <0.05)。これらの結果は、GCL2505発酵乳が、それ自体を増殖させることによって腸内ビフィズス菌の増加および内因性ビフィズス菌に影響を及ぼすことなく軽度の便秘の改善に寄与することを示唆している。
引用元: 滝井寛ほか「Bifidobacterium animalis subsp. lactis GCL2505 を含有する発酵乳の摂取による便秘傾向を有する健常成人の排便回数,便性状,および糞便菌叢の改善」
これは、ビフィズス菌gcl2505が、マウスの腸だけではなく、ヒトの腸にも作用することが示唆されたデータと言えます。
江崎グリコ株式会社と東海大学医学部との共同研究グループは、マウスを通じた試験を通じ、gcl2505の投与によるGLP-1(※)の分泌量の変化の有無を調べました。
実験の結果は、2015年に開催された日本農芸化学会にて発表。実験結果は以下の通りです。
以上の実験結果を通じ、共同研究グループは、ビフィズス菌gcl2505がメタボリックシンドロームの予防に寄与する可能性がある、と結論付けました。
※GLP-1…血糖値が上昇した際、インスリンの分泌を促して血糖値を下げる働きを持つ物質。
ビフィズス菌gcl250の発見から商品化までの背景には、江崎グリコに所属する、ある一人の研究員の熱意と努力がありました(仮にA氏とします)。ここでは、A氏を中心とした研究メンバーたちによる、ビフィズス菌gcl250の開発ヒストリーをご紹介します。
江崎グリコの研究所に勤務していたA氏。細菌研究が世界中で注目を集めている中、A氏は同研究所の中で、乳酸菌の基礎研究を始めたいと考えていました。
その考えを、当時の研究所の部長に直談判。理解を示した部長は、4~5人程度のメンバーをA氏に与え、乳酸菌の研究チーム発足を許可しました。
暗中模索の研究を続けていたチームでしたが、ある時A氏は、「自分たちの研究の目的は、良い乳酸菌を見つけ出すことではなく、人を健康にすることだ」との原点に回帰。チームで相談のうえ、乳酸菌の研究から、より高い健康効果が期待できるビフィズス菌の研究へと移行しました。
気の遠くなるような研究を続けていたA氏は、研究を開始してから数年後、ついに生きたまま腸に届くビフィズス菌gcl2505を発見。gcl2505は、生きたまま腸に届くだけではなく、腸の中で増えるという性質を持つことも突き止めました。
A氏は、速やかにビフィズス菌gcl2505の商品化を提案。この商品化プロジェクトが成功し、かの有名な「BifiX」が誕生しました。
A氏の奮闘は、留まるところを知りません。今もなお江崎グリコの研究室で、次なるテーマへ向けて邁進中とのことです。
ビフィズス菌gcl2505を配合した商品は、主に開発元でもある江崎グリコから販売されています。スーパーでもよく目にするヨーグルト「BifiX」が、その代表でしょう。
江崎グリコから販売されているロングセラー商品。「ほんのり甘い」「砂糖不使用」「脂肪ゼロ」「アロエ」「ストロベリー」「マンゴー」など、様々な味のバリエーションを展開しています。内容量は375g、330g、140gの3種類。通販でお得にまとめ買いすることもできます。
1本(100g)にビフィズス菌gcl2505を800億個も詰め込んだ、高濃度ビフィズス菌飲料。食物繊維も豊富に配合しているので、腸内環境を改善したい方は相乗効果を得られる可能性も。口当たりまろやかなリンゴ風味です。
どんなに素晴らしい効果が報告されている菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。
もちろん、ここで紹介したビフィズス菌gcl2505についても同様で、この菌が合うかどうかは、実際に摂取してみて、自分の体調の変化を確認してみるしかないのが現状です。
世の中に存在する乳酸菌・ビフィズス菌には数えきれないほどの種類があり、商品化されているものだけでも膨大な数があります。そのため、自分と相性の良い菌を見付けるためには、それなりの覚悟をもって、根気よく挑まなくてはなりません。
しかし、自分にピッタリの菌を見付けるのは、それだけの価値があること。一生をかけて、理想の乳酸菌を追求し続けるくらいの気持ちで挑むことが大切です。摂取せずにどんな菌が合いそうか、なんて考えても意味はないので、まずはどんな菌があるのかを知り、興味のあるものから順にかたっぱしから試していきましょう。
ただし、一部には例外といえる成分もあります。たとえば「乳酸菌生成エキス」という成分は、最初から自分が持っている乳酸菌を育てるためのものです。
そもそも乳酸菌を摂取するのは、自分の腸内で善玉菌を増やして腸内環境を整えることが目的。つまりこの成分を摂れば、自分にピッタリの乳酸菌を摂取するのと同様の効果が得られるというわけです。菌との相性を気にする必要がないため、手っ取り早く健康になりたいという方は、こういった成分を探した方が良いかもしれません。
管理人:蝶野ハナ
乳酸菌と人との関係、菌株ひとつひとつの個性、数多くの研究データ……乳酸菌って、知れば知るほどスゴいんです。私たちにとって最も身近な細菌について、もっともっと深く知りたくないですか?