ガセリ菌SP株(Lactobacillus gasseri SBT2055)は、雪印メグミルクによって発見され、2002年に製品化された乳酸菌の1種です。ガセリ菌SP株は「生きて腸まで届く」だけでなく、「長い間、生きたまま腸でとどまり続ける」ことが特徴としてあげられ、整腸作用を始めとする様々な健康効果が数多く報告されています。
ガセリ菌SP株は、雪印メグミルクによって発見・培養された乳酸菌の1種であり、数ある乳酸菌の中でも、初めて人の腸管への定着性が確認された乳酸菌です。
もともと、乳酸菌の整腸作用や健康に関する有効性は昔から認められていました。しかし、食品として摂取した乳酸菌は腸へ定着する割合が低かったため、ガセリ菌SP株の発見はまさに大成功だったのです。
2002年には、雪印メグミルクからガセリ菌SP株が製品化され、またガセリ菌SP株の腸内環境や健康に対する様々な効果については、現在も数多くの研究が進められています。
ガセリ菌SP株の最大の特徴として、単に生きたまま腸まで届くだけではなく、そのまま腸に長くとどまるということが挙げられます。 乳酸菌であるガセリ菌SP株が、生きたまま腸で長くとどまるということは、それだけ腸内環境の改善に働き続けるということであり、悪玉菌を退治し、善玉金を増やしやすくする効果も高いといえるでしょう。
ガセリ菌SP株のもう1つの特性は、その有効性が単に便通の改善などにとどまらないという点でしょう。 人やマウス、線虫などを使った様々な実験や研究により、ガセリ菌SP株には「内臓脂肪の低減効果」や、インフルエンザウィルスや歯周病菌などに対する「感染予防効果」、「寿命延長効果」、「ストレス軽減効果」といった、人の健康に対する様々な有益性が確認されています。 そしてまた、これらの研究・商品開発の成果によって、雪印メグミルクは日本栄養・食糧学会から平成30年度「技術賞」を授与されました。
ガセリ菌SP株の整腸作用や健康増進効果については、様々な研究報告がなされています。
8人の社内ボランティアに、1千億個のガセリ菌SP株を1日1回、7日間摂取してもらい、定期的に便を採取して検査しました。その結果、摂取後90日が経過しても4名の便からガセリ菌SP株が検出されました。
また、ガセリ菌SP株を摂取している間、便内のスタフィロコッカス属の菌数と腐敗物質(パラクレゾール)の濃度が減少し、便性(色、におい)にも改善が認められました。
引用元:(PDF)雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所「乳酸菌による『内臓脂肪蓄積抑制』効果と『免疫調節』効果
上記のように、ガセリ菌SP株は摂取を終えた後、長期間にわたって体内に定着し、腸内環境の改善に寄与する確率が高いという結果が示されました。
肥満気味の健常成人男女87名を2グループに分け、ガセリ菌SP株を含む発酵乳と、含まない発酵乳を、それぞれ1日200gずつ12週間摂取してもらったところ、ガセリ菌SP株摂取群では、内臓脂肪、皮下脂肪が有意に減少しました。
引用元:(PDF)雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所「乳酸菌による『内臓脂肪蓄積抑制』効果と『免疫調節』効果
①発酵乳原料(非発酵)、②発酵乳原料を通常使用される乳酸菌(サーモフィラス菌、ブルガリクス菌)で発酵させた発酵乳、③②にガセリ菌SP株を加えて発酵させた発酵乳の3種類を用意し、それぞれ高脂肪食に混合し、ラットに与えました。
4週間後に血中の炎症マーカー濃度を測定した結果、①および②の群では炎症マーカー濃度が有意に上昇しましたが、③の群では上昇せず、他の2群に比べて有意に低い結果となりました。また、同様に脂肪細胞面積も③の群では他の2群に比べて有意に小さいことが確認されました。
引用元:(PDF)雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所「乳酸菌による『内臓脂肪蓄積抑制』効果と『免疫調節』効果
境界域及び軽度高コレステロール血症を呈する男性74名を4群に分け、2週間の観察期間の後、A群には発酵乳200g/日、B群には100g/日、C群にはプラセボ発酵乳200g/日を11週問、1日1回朝に摂取させた。D群は非摂取群とした。A・B・C群については二重盲検法を採用した。 その結果、A群では摂取期問終了時に血清総コレステロール値が摂取前212.2±22.5mg/d1から200.8±23.6mg/dlに有意に低下し(P<0.05)、C群と有意な差を認めた(P<0.05)。
(ガセリ菌SP株を加えた)発酵乳摂取群において副作用と思われるような血液学的変化、理学的変化、臨床上の変化は認められなかった。これらの結果より、ガセリ菌SP株を含有する発酵乳が境界域及び軽度高コレステロール血症者の血清総コレステロール値を低下させること、ならびに本発酵乳の安全性が示された。
引用元:(PDF)梶本修身,他(2002)「境界域及び軽度高コレステロール血症に対しLactobacillus gasseri(ガセリ菌SP株)を含有する発酵乳は血清コレステロール値を低下させる」
これらの結果は、ガセリ菌SP株が効果的に内臓脂肪や血中コレステロールの調節に働くだけでなく、食品としての安全性を示す重要なデータと言えるでしょう。
ガセリ菌SP株投与群には事前に3週間、ガセリ菌SP株を摂取させ、両群にH1N1型インフルエンザウイルスを経鼻感染させて生存率を調べました。
その結果、ガセリ菌SP株投与群では、非投与群に比べてウイルス感染後の生存率が有意に高く、ガセリ菌SP株の量に依存して生存率が向上しました。
引用元:(PDF)雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所「乳酸菌による『内臓脂肪蓄積抑制』効果と『免疫調節』効果
ガセリ菌SP株を投与したマウスと、投与しなかったマウスに歯周病菌を感染させ、歯肉などの状況を観察しました。すると、ガセリ菌SP株投与群では、非投与群に比べて歯槽骨吸収や歯肉組織における炎症が抑制されていました。
この試験により、ガセリ菌SP株投与による歯周病に対する抗炎症効果の可能性が示唆されました。
引用元:(PDF)雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所「乳酸菌による『内臓脂肪蓄積抑制』効果と『免疫調節』効果
腸内環境が改善されれば、免疫力が向上して細菌やウィルスに対する抵抗力も高まることが知られています。それはガセリ菌SP株でも同様で、結果的に感染予防についても期待できそうです。
ガセリ菌SP株を与えた群と、ガセリ菌SP株を含まない一般的な餌(大腸菌)を与えた群(対照群)による比較試験を複数回実施したところ、そのうちの代表的な試験では、ガセリ菌SP株投与群の平均生存日数が20.63日、対照群の平均生存日数は16.99日という結果を示しました。
また、ガセリ菌SP株投与群では平均29%の寿命延長を確認しました。
引用元:(PDF)雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所「乳酸菌による『内臓脂肪蓄積抑制』効果と『免疫調節』効果
これは線虫を用いた実験結果でしたが、この他にもマウスを用いた実験でも、ガセリ菌SP株の寿命延長効果は認められており、健康寿命やQOLを考えていく上で重要な手がかりとなりそうです。
ガセリ菌SP株とビフィズス菌SP株を含む発酵乳摂取群と、含まない発酵乳摂取群(プラセボ群)に分け、それぞれ1日100gずつ、12週間摂取してもらいました。
12週間の摂取試験の結果、免疫活性化の指標であるNK細胞活性については、ガセリ菌SP株+ビフィズス菌SP株摂取群は、プラセボ群に比べて有意に上昇しました。
また、ストレスホルモンである副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の血中濃度を調べたところ、ガセリ菌SP株+ビフィズス菌SP株摂取群は、プラセボ群に比べて有意に減少していました。
引用元:(PDF)雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所「乳酸菌による『内臓脂肪蓄積抑制』効果と『免疫調節』効果
ストレス社会と言われる現代を生きる人々にとって、ストレスを軽減させ、体内の状態を適正に維持してくれるガセリ菌SP株の効果は、まさしくQOLを向上させる上で望ましいものであるでしょう。
ガセリ菌SP株による腸管バリア機能の保護作用のメカニズムを明らかにするために、腸管機能の検証モデルであるヒト大腸ガン由来細胞「Caco-2細胞」を用いて検証を行いました。その結果、ガセリ菌SP株は炎症性サイトカインの添加によるCaco-2細胞の経上皮電気抵抗値の減少および蛍光物質の透過性の上昇をそれぞれ抑制し、腸管バリア機能を保護する作用が示されました。
がん細胞は体内の免疫システムにエラーを起こさせ、免疫細胞からの攻撃を避けるという機能を持っています。しかし、ガセリ菌SP株によって腸管のバリア機能が正常に保たれれば、発がんリスクを下げられるかも知れません。
雪印メグミルクのガセリ菌SP株に関する研究・製品化の歴史は、1930年代にまでさかのぼります。
雪印メグミルクは、その当時から世界に先駆けて乳酸菌研究を開始していました。その後、1980年代には日本国内で乳酸菌が持つ整腸作用についての研究が活発化し、1990年代になる頃には、世界中で乳酸菌の研究が盛んに行われるようになりました。その結果、それまで「アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus )」としてまとめられていた菌種も、さらに細かく6種類に分けられるようになり、その中の1つが「ガセリ菌(Lactobacillus gasseri」とされたのです。
さらに、ガセリ菌はそれまでのアシドフィルス菌よりも人の腸との相性が良いことが分かり、雪印メグミルクは独自に研究を進め、ついにガセリ菌SP株を発見。さらに2002年に製品化に成功しました。
雪印メグミルクが長年続けてきた、ガセリ菌SP株に対する研究によって、ガセリ菌SP株には内臓脂肪蓄積抑制作用や、インフルエンザウィルスに対する感染防御作用など、様々な効果があることが判明しています。
そして2018年5月11日、岡山県で開催された第72回日本栄養・食糧学会大会において、それら一連の研究成果と産業利用の功績が認められ、平成30年度日本栄養・食糧学会「技術賞」の授与式が執り行われました。
これにより、ガセリ菌SP株は名実ともに「生きたまま長く腸で働き続ける乳酸菌」と認められたといえるでしょう。
雪印メグミルク株式会社 (本社:東京都新宿区 代表取締役社長:西尾 啓治) は、 この度、当社保有のプロバイオティクス乳酸菌、ガセリ菌SP株(Lactobacillus gasseri SBT2055)の研究とそれを応用した商品開発について、日本栄養・食糧学会より『技術賞』を受賞いたしました。この『技術賞』は、栄養・食糧科学の発展に寄与する産業上の技術開発に対して与えられるもので、5月11日(金)に岡山県で開催された第72回日本栄養・食糧学会大会にて受賞式が行われ、受賞講演を行いました。
引用元:(PDF)雪印メグミルクNEWS RELEASE(2018年5月15日)「平成30年度日本栄養・食糧学会『技術賞』受賞のご報告」
ガセリ菌SP株を配合している商品としては、雪印メグミルクが展開している「ナチュレ恵」シリーズと、「恵ガセリ菌SP株」シリーズがあります。これらの商品には「消費者庁許可 特定保健用食品」のマークが表示されており、「ナチュレ恵」シリーズは『腸内環境の改善に役立つ』として、「恵ガセリ菌SP株」シリーズは『内臓脂肪を減らすのを助ける』として、それぞれ特定保健用食品としての認可を受けています。
「ナチュレ恵」シリーズにはガセリ菌SP株とビフィズス菌SP株が配合され、プレーンタイプのヨーグルトから、脂肪分が0のヨーグルト、さらに低脂肪タイプで様々なフルーツとミックスされたフルーツヨーグルトまで、幅広いシリーズ展開が人気の商品です。
また、「恵ガセリ菌SP株」シリーズでは、食べるヨーグルトタイプだけでなく、ドリンクタイプのヨーグルト飲料も色々と商品展開されており、さらに宅配専用のヨーグルトやドリンクタイプの商品など、充実したバリエーションで好評を博しています。また、恵ガセリ菌SP株シリーズは、宅配専用商品を除く全商品が脂肪ゼロとなっており、健康目的だけでなく、ダイエットをしたいという人にとっても魅力的な商品といえるでしょう。
管理人:蝶野ハナ
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