乳酸菌FK-23( Enterococcus faecalis strain FK-23)は、乳酸菌研究のパイオニアであるニチニチ製薬株式会社が開発しました。乳酸菌の一種であるエンテロコッカス科エンテロコッカス属フェカリス菌の株のひとつで、フェカリス菌と呼ばれることが多いようです。
フェカリス菌は1899年にフランスで最初に発見された古い乳酸菌で、もともと人間の腸内に存在している腸内細菌でした。
整腸作用が高いことで知られていた従来の乳酸菌は生きたまま腸に届けることで効果を得られるように研究開発が行われてきましたが、後にフェカリス菌は死滅した状態で摂取した方がより高い効果(死菌の方が生菌の3倍の力を発揮する)があることがわかり、フェカリス菌を殺菌処理し働きを最大限に引き出したのが乳酸菌FK-23です。死滅した状態で摂取しても効果があるので新型乳酸菌と呼ばれることがあります。
食品などに含まれる乳酸菌を活用して腸内環境を改善し、良好な状態に保つことは容易なことではありません。ヨーグルトや発酵食品、食事だけで1日の必要摂取量を取るのは困難ですし、ストレスや加齢とともに善玉菌は減少してしまいます。実際にヨーグルトを食べ続けているけど効果が実感できないという方もいるようです。また、糖分の制約やカロリーが気になる、乳製品が体質に合わないというかたもいるでしょう。
それに対し、フェカリス菌はもともとヒトの体内に存在する乳酸菌なので、体内に取り入れやすく、安心して利用することができます。
他の乳酸菌と比べるとサイズがとても小さく1ミクロン、他の乳酸菌の1/5程度しかないので少しの量で大量に摂取できるというメリットもあります。例えば通常の乳酸菌ドリンクであれば200億個程度と言われる菌数が、FK-23菌を使ったドリンク「美翔」の場合は4500億個もの摂取が可能です。
FK-23菌は様々な大学、医療機関と提携した研究を行っており、すでに10の特許を取得し、そのなかにはC型肝炎治療剤、血圧降下剤、抗アレルギー剤などに加え、色素沈着抑制剤としての特許もあり、美肌への効能も期待されているそうです。
たとえば花粉症への効果を調べる実験では、加熱殺菌して死滅したフェカリス菌入り飲料で目のかゆみなどが減り、アレルギー症状が改善したと報告されているそうです。これはフェカリス菌が腸内の免疫細胞を活性化させ免疫系のバランスが整うからではないかといわれています。
2012年には北海道大学と共同研究を行い、抗インフルエンザウイルス効果についても発表、FK-23菌をマウスに与えたところ、肺への炎症性細胞の流入を抑える効果があることを実証し、日本乳酸菌学会の優秀発表賞を受賞したことからもわかるように、特に免疫力を高める働きが強いとされているんですね。
さらに最近では肥満抑制効果にも期待がよせられています。これはフェカリス菌が小腸の消化吸収作用を活性化させるためで、内臓脂肪の低減やメタボへのリスクの軽減にもつながるそうです。ほかにも抗腫瘍作用などの効果も報告され活用範囲はさらに広がっているようです。
マウスのみで、人を対象にした研究結果は見つかりませんでしたが、その研究では、菌を投与しなかったグループのマウスは、インフルエンザ感染後14日時点で生存率40パーセントであったのに対し、フェカリス菌FK-23株を感染前に投与したグループは生存率80パーセント、感染後に投与したグループは生存率60パーセント、感染前後に投与したグループは生存率100パーセントでした。
これらのことから、インフルエンザを予防する効果だけでなく免疫力も高める効果もあることがわかりました。(日本乳酸菌学会での発表を参考にしました)
スギ花粉症患者20名に暴露室で人工的に一定量の花粉を浴びた後、加熱殺菌して死滅したフェカリス菌入り乳性飲料(1本200mlあたりフェカリス菌1000億個含有)を1日1本、2か月間飲用後に、同様の実験を実施。
乳性飲料を飲む前と後では、鼻をかむ回数や目のかゆみなどが減り、アレルギー症状が改善する傾向が認められました。
カンジダ菌に感染させたマウスを、乳酸菌FK-23を与えないグループと、濃度を変えた乳酸菌FK-23を与えるグループに分類。それぞれのマウスのグループが死滅するまでの期間を比較しました。
実験の結果、乳酸菌FK-23を与えないグループは2週間後に全滅。一方で乳酸菌FK-23を与えたグループは、FK-23の投与量に関わらず、すべてのマウスが生存していました。その後、乳酸菌FK-23を与えたグループのマウスは、3週間後も大半が生存していたという結果が得られたのです。
乳酸菌FK-23を与えたマウスのグループと、乳酸菌FK-23を与えないマウスのグループとに分け、それぞれのグループに乳がん細胞を移植する実験が行われました。その後、3日おきにがん組織の大きさを測定。移植41日目にはがん組織を摘出し、それぞれのがん組織の重さを測定しました。
実験の結果、がん細胞の移植18日目から、乳酸菌FK-23を与えたグループのがん組織の進行が、乳酸菌FK-23を与えなかったグループの進行よりも有意に延長されました。移植41日目に摘出したがん組織の大きさも、乳酸菌FK-23を与えたマウスのほうが小さいことが判明しています。
ラットを、乳酸菌FK-23を与えたグループと与えていないグループに分け、それぞれのラットに対し、肝機能の負担となる薬剤(抗がん剤シスプラチンン)を投与。その4日後に各ラットの採血を行い、肝機能の指標となるBUN値とクレアチニン値を測定しました。
その結果、乳酸菌FK-23を与えたラットは、乳酸菌FK-23を与えていないラットに比べ、各数値が優位に上昇。体重減少の抑制と回復促進効果が確認されました。
健常な犬を、乳酸菌FK-23を与えたグループと与えないグループとに分け、それぞれの犬に対して白血球を減少させる薬剤を投与。その後の白血球量の推移、および赤血球に対する白血球の比率を測定しました。
実験の結果、乳酸菌FK-23を与えた犬は、与えていない犬に比べて速い速度で白血球の量が回復。また、赤血球に対する白血球の比率についても、乳酸菌FK-23を与えていない犬は著しく低下したのに対し、乳酸菌FK-23を与えた犬では増大が認められました。
ミャンマーのヤンゴン市にある国立研究機関「Department of Medical Reserch」において、C型肝炎患者15名に乳酸菌FK-23を摂取してもらい、3ヶ月目に血液検査を実施しました。
検査の結果、15名中14名において、肝機能の指標となるALT数値が低下。そのうち半数以上の患者において、ALT数値が正常値の範囲まで改善しました。
ゴルフ部に所属する大学生を、乳酸菌FK-23を摂取したグループとプラセボ(偽薬)を摂取したグループとに分け、1週間後、各種の数値を測定し比較しました。
試験の結果、乳酸菌FK-23を摂取したグループは、プラセボを摂取したグループに比べ、血清の抗酸化誘導能(抗酸化作用をもたらす働き)が上昇。加えて、ストレスマーカー(コルチゾール、アミラーゼ)と筋疲労マーカー(乳酸)の改善も確認されました。
なお、血清の抗酸化誘導能については、一重項酸素を除くすべての検査対象の活性酸素(OH、O2、CH3、ROO、RO)に対して、プラセボ群よりも高い抗酸化誘導能を示しました。
高脂肪食のみを与えたマウスのグループと、高脂肪食+乳酸菌FK-23を与えたマウスのグループとに分け、それぞれ、肝機能の指標となるALT値、および血糖値の測定を行いました。
実験の結果、高脂肪食+乳酸菌FK-23を摂取したグループは、高脂肪食のみを摂取したグループに比べてALT値と血糖値が有意に改善。病理学的にも脂肪肝の軽減が認められました。
なお、乳酸菌FK-23は小腸からの脂肪吸収に対する抑制効果は確認できなかったため、このデータは、体内での脂肪代謝に影響を与えた結果と考えられています。
ただし、どんなに素晴らしい効果が報告されている乳酸菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。いろいろ買ってみて試してみる、というのも楽しいかもしれませんが、自分に合う菌と出会うためには、それなりにお金と時間をかける必要があります。
そこで、自分に合った菌を探すのに役立つツールとして「乳酸菌相性チェッカー」を用意してみました。乳酸菌選びで迷っている方は、ぜひ活用してみてください!
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管理人:蝶野ハナ
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