フェカリス菌NT株は、フェカリスと言う乳酸菌のうち、日東薬品工業株式会社が保有するオリジナルの生菌です。フェカリス菌はヒトの腸内に生息する、ヒト由来の乳酸菌の一種。形状は小さい球状で、一度にたくさん摂取しやすいという特徴を持っています。また、増殖スピードが素早いため、悪玉菌の増殖を防いでくれる働きがあります。
フェカリス菌は、正式には「エンテロコッカス属フェカリス菌」という種類の乳酸菌です。フェカリス菌の特徴は、「球状であること」や「他の乳酸菌に比べて菌体がとても小さいこと」などが挙げられ、一度にたくさんの量を摂取できる効率の良さなども注目を集めています。
また、生菌と死菌(加熱殺菌済みの菌のこと)のどちらもよく使用されているということもひとつの特徴です。生きた菌の健康効果「プロバイオティクス」と、加熱殺菌済みの菌の健康効果「バイオジェニックス」の両方が得られる乳酸菌と言えます。
フェカリス菌には悪玉菌の増殖を抑える効果があります。そのため、お腹の調子を整えて、腸内の環境を良くする働きをしてくれます。また、日東薬品工業株式会社の研究では、他の乳酸菌と組み合わせることにより、黄色ブドウ球菌への拮抗能力や、インフルエンザウイルスの感染予防能力などがあることも報告されています。
テレビCMなどの影響からか、乳酸菌には「生きたまま腸に届くのが良い」というイメージが浸透していますね。フェカリス菌NT株を含めた日東薬品のオリジナル生菌も、菌を長生きさせるための方法や長期保存するための方法などが独自に開発されています。
しかし、フェカリス菌は、生きた菌としての効果(プロバイオティクス)と、殺菌済みの菌としての効果(バイオジェニックス)のどちらも有名だという点が特徴です。殺菌済みときくと何だか効果がないような印象を受けてしまいがちですが、殺菌後の乳酸菌を摂取しても、整腸作用などの効果が発揮されるということが分かっています。
殺菌後の菌は品質の安定がしやすく、また製品としての管理が容易になることがメリットです。そうした性質を活かし、様々な商品にフェカリス菌の死菌が使用されています。
フェカリス菌NT株を保有する日東薬品工業株式会社は、京都府にある薬品会社です。京都は発酵食品の文化が盛んな土地で、すぐき漬けや菜の花漬けなどを代表とした他の地域では珍しい漬物など、発酵食品の種類が豊富にあります。
そうしたなかから生まれてきた様々な菌を自社内にストックしており、その数はなんと400株以上。そのなかでも、人々の生活に役立つ菌をスクリーニングし、現在は7種類の産業菌株を保有。フェカリス菌NT株もそのうちのひとつです。
日東薬品が保有している自社株はフェカリス菌NT株のほか、「ブレビス菌T001株」、「ブレビス菌M003株」、「ロイコ菌M048株」、「ビフィズス菌NT株」、「納豆菌NT株」、「酪酸菌NT株」。このうち「ブレビス菌M003株」は、腸に生きたまま乳酸菌を届けられるチョコレートに使用されていることで有名です。
フェカリス菌NT株は酒造メーカーとのコラボレーション商品である「甘酒」に使用されており、私たちの生活により身近な存在として広がっています。このような、ヒトに有用な菌を食生活にプラスする考え方は、京都の食文化から大きな影響を受け、私たちの健康に役立っているのです。
日東薬品工業株式会社でおこなわれた、フェカリス菌NT株の研究結果です。この研究では、フェカリス菌NT株が、MRSAという黄色ブドウ球菌に対して効果があることがわかっています。
メチシリン耐性S. aureus(MRSA)は、多くの抗菌剤に対して耐性を示し院内感染が問題となっている病原性のある菌です。MRSA感染症の治療にはバンコマイシンなどの抗生物質が投与されていますが、副作用の問題や投与量、投与期間を慎重に検討する必要があります。
日東のフェカリス菌NT株と酪酸菌NT株をMRSAと共存させたところ、MRSAに対して栄養源の競合利用に基づいた強い拮抗作用を示し、MRSAを排除することがわかりました。
プロバイオティクスのフェカリス菌NT株と酪酸菌NT株をMRSAと混合培養したところ、MRSAは急速に死滅し、培養1日で102cfu/mL以下に減少しました。また、培養を継続すると検出限界以下となり、栄養源に対する拮抗作用を示すことがわかりました。
引用元:日東薬品工業株式会社 菌研究の成果「フェカリス菌NT株と酪酸菌NT株の共存はMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の増殖を阻害する」(PDF)
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、名前の通り抗生物質のメチシリンに対しての耐性を持つ菌です。黄色ブドウ球菌は、ヒトや動物の皮膚、消化器官内などに常在していますが、腸炎や食中毒などの原因になることもある菌です。抗生物質の中でも有名なペニシリンに耐性を持つ黄色ブドウ球菌が出てからは、それに対抗するメチシリンが開発されましたが、近年ではメチシリンに耐性を持つ黄色ブドウ球菌も出ています。それがMRSAです。
そこで日東薬品工業株式会社では、フェカリス菌NT株と酪酸菌NT株を、MRSAと共存させる研究がおこなわれました。その結果、MRSAに対する強い拮抗能力があらわれたのです。
これはヒトの腸内を模した環境でおこなわれた実験のため、フェカリス菌NT株がいかにヒトのお腹の環境をよくしてくれるかがわかります。
冬に爆発的に感染が広がる病気の代表格と言えば、やはりインフルエンザが挙げられます。空気が乾燥してくると、予防接種を受けたり、マスクなどで防御したりと、日ごろから感染防止に努めている人も多いのではないでしょうか。
インフルエンザは、「インフルエンザウイルス」によって引き起こされる感染症です。感染すると、発熱や頭痛、咳・鼻水や、筋肉痛などの強い全身症状が起こり、最悪の場合は死にいたるという恐ろしい病気です。
乳酸菌の摂取が感染症予防になると期待されますが、フェカリス菌NT株の効果はどのようなものなのでしょうか。これについても、日東薬品工業株式会社にて研究がおこなわれています。
インフルエンザウイルスはすぐに変異して新型となり、それに対応する抗体を作りにくいので、日頃から感染しないようにすることが大切です。
ブレビス菌T001株とフェカリス菌NT株はマウスを使った実験で、服用するとインフルエンザ感染予防に効果があることがわかりました。
ブレビス菌T001株とフェカリス菌N T株の乳酸菌2菌種をインフルエンザ感染前から投与し、インフルエンザ感染後のマウスの生存率を確認しました。陰性対照群の生存率が20%に対して、乳酸菌群では生存率が50%となり、生存率が有意に向上しました。
引用元:日東薬品工業株式会社 菌研究の成果「ブレビス菌T001株とフェカリス菌NT株にインフルエンザ感染防御効果」(PDF)
フェカリス菌NT株と、日東薬品工業株式会社の保有する菌であるブレビス菌T 0 0 1株を同時に投与し、インフルエンザ感染後の様子を確認する実験です。乳酸菌を投与されていたほうの生存率が上がるという結果が出ており、インフルエンザ感染予防に対しての効果が示唆されました。
国内の飲料メーカー会社の研究により、フェカリス菌の便通改善効果が確認されています。この実験はヒトを対象としておこなわれました。実験方法は、次の通りです。
20~39歳の便秘気味な日本人男女24名(以下、被験者)に、フェカリス菌(殺菌体)やオリゴ糖を含まない対照飲料群(以下、プラセボ群)と、オリゴ糖を含むフェカリス菌(殺菌体)入り乳性飲料2タイプの飲料群(フェカリス菌1000億個の低用量群、フェカリス菌1兆個の高用量群)に8名ずつ無作為に分け、2週間、午前中に1日1本(280 ml)摂取していただきました。試験飲料摂取の前後に腸内細菌叢の検査、排便評価などを行いました。
プラセボ群とは偽薬群ともいい、実際には有効成分を含んでいないものを摂取しているグループを言います。そのため、この実験を受けている24名は、飲料を飲むことによって自分の便通にどのような効果があるのかわからない状態です。
この実験の結果、プラセボ群に比べて、フェカリス菌を摂取したグループにおいて、善玉菌の「ビフィドバクテリウム」が増加していることがわかりました。また、便形スケールにおいても、接種前と比較して摂取2週間後に改善が見られています。
便形スケールとは、大便の形状と硬さを7段階に分類する指標で、下痢や便秘を判断するための基準にもなっています。硬すぎず柔らかすぎない状態が健康な便ですが、実験でフェカリス菌を接種したグループの方がより健康的な便になっていることがわかりました。
このことから、フェカリス菌・オリゴ糖を含む乳性飲料を摂取することにより、腸内環境が良くなって便秘改善につながることがわかります。また、フェカリス菌の摂取量を増加させることにより、より高い効果が出るということも明らかになりました。
フェカリス菌NT株が使用されていると公表されている商品は、下記の通りです。
白鶴酒造と日東薬品工業のコラボレーション商品です。各メディアで甘酒の健康・美容効果が取り上げられる以前から、甘酒に着目していた白鶴酒造。そして、医薬品だけではなくさまざまな形で乳酸菌商品を手掛ける乳酸菌のエキスパート、日東薬品工業がそれぞれの強みを活かした商品です。
乳酸菌の入った甘酒は、コラボレーションプロジェクトの第一弾。「酸菌の入った甘酒」には、フェカリス菌NT株が一缶に100億個配合されています。酒粕ではなく米こうじを使用している甘酒なので、アルコールは0%。小さなお子様や妊娠・授乳中の方でも飲むことができて、飲むシーンを選びません。
味は親しみやすいやさしいヨーグルト風味で、甘酒に馴染みのない人でも美味しく飲める味わいです。温めても冷やしても美味しく飲めて、乳酸菌と麹菌を同時に摂ることができます。
管理人:蝶野ハナ
乳酸菌と人との関係、菌株ひとつひとつの個性、数多くの研究データ……乳酸菌って、知れば知るほどスゴいんです。私たちにとって最も身近な細菌について、もっともっと深く知りたくないですか?