ビフィズス菌BB536はBifidobacterium longum(ビフィドバクテリウム・ロンガム)というヒトのおなかにすむ種類のビフィズス菌で、1969年に森永乳業によって、健康な乳児から発見されました。一般的な他のビフィズス菌に比べて酸や酸素に強く、生きたまま大腸に到達することができる菌です。
長年の研究から、整腸作用をはじめとして、病原菌やウイルス感染を防いだり、アレルギー予防、潰瘍性大腸炎を緩和する作用など数多くの機能性が明らかにされ、これまでに30カ国以上でヨーグルトやサプリメント、育児用粉ミルクなどに利用されている菌です。
一般的なビフィズス菌の種類は多く約50種類以上に分類され、ヒトの腸内にはおよそ10種類のビフィズス菌が発見されているそうです。そんなビフィズス菌のなかでもBB536はヒトにすむ種類のビフィズス菌です。
市販されている他のビフィズス菌製品は動物にすむ種類のビフィズス菌が使われていることが多いそうですが、やはりヒトに適しているのはヒトにすむ種類のビフィズス菌と考えられています。
ビフィズス菌と乳酸菌、どちらも善玉菌の代表格で、ヨーグルトなどの食品に使われている菌としても有名。そのため、このふたつは混同されがちなのですが、実はまったく性質の異なる菌なのです。 乳酸菌というのは糖の分解によって50%以上の乳酸を生成する菌の総称で、ほとんどの発酵食品には乳酸が使われています。ビフィズス菌も糖を分解して乳酸を生成する点は共通ですが、それに加えて「酢酸」も生成する働きを持っています。この酢酸には強い殺菌力や粘膜を保護する作用があり、さまざまな病気に対する予防効果があると言われています。
また、ビフィズス菌は酸素があると生育できない「偏性嫌気性」ですが、乳酸菌は酸素があっても生育可能な「通性嫌気性」。そのため生息域も異なり、乳酸菌は動物の腸内だけでなく、自然界に広く生息しているそうです。
ビフィズス菌BB536には、悪玉菌の繁殖を抑え腸内環境を整える働きがあります。私たちの腸内には小腸から大腸にかけて、数百種600兆個以上の様々な細菌が腸の壁面にすんでいます。顕微鏡で見ると、それらはまるで植物が群生しているお花畑(flora)のようにみえることから、腸内フローラと呼ばれるようになりました。
その腸内細菌は大きく3つに分類され、体に良い働きをする「善玉菌」、悪い働きをする「悪玉菌」、そしてどちらでもない「日和見菌(ひよりみきん)」とよばれる、腸内の善玉菌・悪玉菌の優勢な方に味方して作用する菌です。
そしてこの腸内フローラが、善玉菌2割:悪玉菌1割:日和見菌7割というバランスに保たれることが理想だと言われているのです。しかし、この腸内フローラのバランスは、体調、食生活、加齢、ストレス・抗生物質などの服用などの要因によって目まぐるしく変化します。
腸内で悪玉菌が優勢になれば悪玉菌がつくりだす有害物質も増え、便秘や下痢などを引き起こしますし、腸から吸収された有害物質が全身をめぐるので、肩こりや肌荒れの原因にもなるのです。そこで日頃から大切になるのが悪玉菌の繁殖を抑え、腸内フローラのバランスを整えることとされています。
下記の通り、ビフィダス菌BB536の効果・効能に関する数多くの研究データが公表されています。
便秘気味の女性39名にビフィズス菌BB536入りヨーグルトを1日100g(BB536は20億個以上)2週間食べてもらいました。その結果、
これらの作用は普通の乳酸菌で作ったヨーグルトよりも高い効果が示されています。
このような効果は、複数の臨床試験により実証されており、ビフィズス菌BB536入りヨーグルトや乳酸菌飲料は特定保健用食品として認められているものがあります。
21名の健常成人に食事内容を基本的に肉・卵に限定した“肉食期間”を5日間過ごしてもらい、そのうちの11名には同時にBB536含有ヨーグルト(BB536は40億個/日)を食べてもらいました。
その結果、肉食のみ摂取したグループと比較して、肉食と同時にBB536入りヨーグルトを摂取したグループでは糞便中のビフィズス菌数が保たれ、また、悪玉菌のひとつであるビロフィラ菌の増加が抑えられました。
腸内細菌のひとつである毒素産生型フラジリス菌(ETBF菌)は大腸がんのリスク因子となっている可能性が考えられています。そこでこの菌を保有する32名の健常成人に、 BB536入りヨーグルト(BB536は32億個/日)または牛乳を8週間摂取してもらったところ、BB536入りヨーグルトを摂取したグループでのみETBF菌が摂取前の1/3程度まで減少しました。また摂取をやめたところ、ETBF菌数が試験前と同じ程度に戻りました。
排便回数週3回以下の便秘傾向者30名の方に、30gもしくは100gのビフィズス菌BB536を含むヨーグルトを4週間摂取してもらったところ、どちらの群でも摂取開始1週間後から排便回数が増え、便の性状が改善されました。
排便回数日2回以上の下痢傾向者29名に、30gもしくは100gのビフィズス菌BB536を含むヨーグルトを4週間摂取してもらったところ、どちらの群でも、摂取開始1週間後から排便回数が減り、便の性状が改善されました。
上記の通り、ビフィズス菌BB536の配合されたヨーグルトを摂取することで、高い整腸作用を発揮することが確認されました。特に便秘・下痢の実験については、たったスプーン一杯のヨーグルトでも継続的な摂取によって症状の改善が見られており、習慣化することの大切さがうかがえますね。
毒素産生型フラジリス菌(ETBF菌)は大腸がんのリスク因子となっている可能性が考えられています。そこでこの菌を保有する32名に、ビフィズス菌BB536含有ヨーグルトまたは牛乳を8週間摂取してもらい、糞便中の毒素産生型フラジリス菌数(ETBF菌)を測定しました。すると、摂取前には糞便1gあたり平均1,000万程度の毒素産生型フラジリス菌(ETBF菌)が検出されましたが、BB536含有ヨーグルト摂取群では100万程度まで菌数が減少しました。
ラットに発がん物質を58週間投与してがんの発生率を調べました。餌の中にビフィズス菌BB536を混ぜて投与した群では、各臓器におけるがんの発生が大幅に低下しました。
毒素産生型フラジリス菌というのは、炎症性の下痢をはじめとする、さまざまな炎症性腸疾患の原因だと言われています。近年の動物実験では、この菌が大腸がんを引き起こしていることに加え、結腸がん患者の体内にこの菌が多く存在しているというデータが報告されました。ビフィズス菌BB536には、その毒素産生型フラジリス菌の数を減少させ、さらにがんの発生を抑える効果が確認されているのです。
65歳以上の高齢者27名にビフィズス菌BB536菌末(BB536は1000億以上/日)を19週間連続投与したところ、試験期間中にインフルエンザ発症や38℃以上の発熱の回数がビフィズス菌BB536を摂取していない群より少なくなりました。また、ビフィズス菌BB536の投与により、NK活性や好中球の殺菌能が高まり、免疫力の上昇が確認されました。
65歳以上の高齢者27名にビフィズス菌BB536菌末(BB536は1000億以上/日)を19週間連続投与したところ、試験期間中にインフルエンザ発症や38℃以上の発熱の回数がビフィズス菌BB536を摂取していない群より少なくなりました。また、ビフィズス菌BB536の投与により、NK活性や好中球の殺菌能が高まり、免疫力の上昇が確認されました。
花粉症患者44名にスギ花粉が飛びはじめる約1ヵ月前から、ビフィズス菌BB536が含まれた粉末、乳酸菌が含まれていない粉末を13週間にわたって摂取してもらいました。
ビフィズス菌BB536を摂取したグループでは花粉症の自覚症状が緩和され、症状と関連する血中マーカーも改善されました。
43名の成人男性と成人女性に100gのビフィズス菌BB536が入ったヨーグルト、ビフィズス菌BB536が含まれていないヨーグルトを1日2個摂取してもらったところ、ビフィズス菌BB536が含まれていないヨーグルトヨーグルトを摂取したグループでは血中脂質がほとんど変動しなかったのに対して、ビフィズス菌BB536入りヨーグルトを摂取したグループでは摂取開始前に比較して総コレステロール値が著しく低下しました。
高齢者45名を対象に、ビフィズス菌BB536菌末投与群(1包あたり2g、菌数500億個、1日2包、B群)とプラセボ投与群(P群)に割り付け、12週間にわたり、試験食品を摂取していただきました。試験期間中は便性や発熱などの全身状態の観察、投与4週後でA型のインフルエンザワクチンとB型のインフルエンザワクチンを接種。ビフィズス菌の摂取期間中から摂取終了後から4週目まで採血を行い、生化学及び免疫指標を評価しました。
その結果、ビフィズス菌BB536の長期摂取は高齢者の体内NK細胞活性を維持させることや一部にインフルエンザウイルスのワクチン効果を高めることなどの作用を有し、これまでの動物実験や予備臨床試験で得られた免疫調節作用や感染防御作用などの健康維持効果が確認されました。
こちらはラットでの実験ですが、ラットに、ミルクカルシウムまたは、ミルクカルシウムとビフィズス菌BB536を与えたところ、ミルクカルシウムだけ摂取するよりもビフィズス菌BB536を一緒に摂取した方が、骨の強度が高くなりました。
これはビフィズス菌BB536によって腸内環境が整い、カルシウムを吸収しやすくなったためと考えられており、高齢者への応用の期待がされています。
ビフィズス菌BB536に関しては、整腸作用、O157感染防御作用、インフルエンザ発症予防作用、抗アレルギー作用など約150篇もの論文が発表されていることからわかるように、酸素や酸に対して比較的耐性の強い、ビフィズス菌BB536をヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリメントなどで継続して摂取することで、その効果が期待できると考えられます。
ビフィズス菌BB536が発見されたのは1969年、今からおよそ50年前のこと。長年、乳酸菌の研究に取り組んできた森永乳業が、母乳の成分を働きについて研究していた過程で、健康な乳児から発見したのです。
森永乳業はビフィズス菌研究のパイオニアとして、長い間研究を行ってきました。「ビフィズス菌BB536」は、「赤ちゃんの健康を守る製品づくり」のために、母乳の成分や働きを研究していた過程で、1969年、健康な乳児から発見されました。それから、人に適したビフィズス菌であり、酸素や酸に強い特徴を持つ「ビフィズス菌BB536」を多くの人に毎日届けるため、製品開発をスタートさせました。やがて、ビフィズス菌をより元気に届ける製造の工夫を重ね酸や酸素に弱く製品化が難しいといわれていたビフィズス菌を、ヨーグルトに入れて発売することに成功したのです。
その後も長年にわたって研究が続けられ、ビフィズス菌BB536を配合した数多くの乳酸菌飲料やヨーグルトが誕生しました。さらに森永のヨーグルト製造技術はフランス、スウェーデンへと輸出され、ドイツ企業と菌体のライセンス製造契約を締結。今では世界30ヵ国以上の国々でビフィズス菌BB536を使った製品が販売されています。
ビフィズス菌BB536は、その長い歴史の中で蓄積した研究データにより、安全性においても高い評価を受けています。これまで累計30ヵ国以上でヨーグルト、サプリ、育児用粉ミルクなどが発売され、2007年には米国のGRAS(Generally RecognizedAs Safe)認証も取得しました。
ビフィズス菌BB536は、米国のFDA(食品や医薬品を管轄する政府機関)食品の安全性認可制度において、長年にわたる安全性を含む研究成果および製品応用の結果が認められ「GRAS(Generally Recognized As Safe)」認証を取得しました。
一般食品に用いることのできるビフィズス薗としては、世界で初めてFDAから認可されたビフィズス菌です。 アメリカにおいても食品として安全であると認められ、新たな食品への応用が期待されます。
引用元:森永乳業「ビヒダスヒストリー」
GRASというのは、アメリカ食品医薬品局(FDA)が食品添加物に対して与える安全基準の合格証。それまで食べられてきた経験や化学的な知見などを総合して評価される仕組みで、「食品添加物として際立ったリスクがない」と認められることで、GRASリストに追加される制度です。この認証が得られたのは、多くの人々によって長く愛されてきた証とも言えるのかもしれませんね。
ビフィズス菌BB536を配合した製品といえば、やはり代表格は「ビヒダス」シリーズでしょう。その歴史は1977年に発売された乳飲料「森永ビヒダス」にはじまり、翌年には「ビヒダスヨーグルト」が発売されました。
今でこそビフィズス菌入りのヨーグルトは当たり前になっていますが、当時はビフィズス菌をヨーグルトに配合するのは困難だったそうです。ビフィズス菌には酸素や酸に弱い性質があり、ヨーグルトの中で増殖させ、発酵後に一定数を維持することができませんでした。しかも、ビフィズス菌は乳酸菌と違って酢酸を生成するために、食べやすい味にするための工夫も必要だったのです。その問題点を解決するため、森永乳業はビフィズス菌と相性の良い乳酸菌を求めて様々な菌の組み合わせを試行錯誤。こうした研究が実を結んだことで、人気商品・ビヒダスヨーグルトが生まれたのです。
その後もビフィズス菌BB536を配合した商品は次々に発売され、ヨーグルトや乳飲料、粉ミルクだけでなく、今では粉末状のビフィズス菌サプリメントも登場しています。
管理人:蝶野ハナ
乳酸菌と人との関係、菌株ひとつひとつの個性、数多くの研究データ……乳酸菌って、知れば知るほどスゴいんです。私たちにとって最も身近な細菌について、もっともっと深く知りたくないですか?