ビフィズス菌BB-12株(Bifidobacterium animalis subsp. lactis,BB-12)は、デンマークにあるクリスチャン・ハンセン社(Chr. Hansen社)が保有しているビフィズス菌の1種であり、生きたまま腸へ届いて人の健康をサポートする、プロバイオティクスとしても知られています。1985年頃から世界中で活用されており、ヨーグルトなどの原材料として多方面で利用されています。
ビフィズス菌BB-12株は、ほかのビフィズス菌と比較して、高い耐酸性能力を持っており、pH2-4という酸性条件下でも生存できる特別なビフィズス菌です。
通常、ビフィズス菌は酸素や酸性条件に弱く、ヨーグルトのような食品に配合したとしても、賞味期限が切れる前に多くが減少するとされています。しかし、ビフィズス菌BB-12株はその性質上、ヨーグルトなどの発酵乳製品の中だけでなく、胃酸や胆汁といった酸性の環境でも生存することが分かっており、その生存率はあらゆるビフィズス菌の中で最高であるという報告もあるそうです。
そのため、生きたまま腸へ届いて、人の腸内環境や健康の改善・維持に役立つと期待されるビフィズス菌BB-12株は、「プロバイオティクス」として世界中で注目されており、数多くの研究論文などが発表されています。
また、ビフィズス菌BB-12株を含有したヨーグルトなど、数多くの健康食品やサプリメントの原材料として、国内外の様々なメーカーで活用されている点も特徴です。
「プロバイオティクス」とは、1989年にイギリスの微生物学者Roy Fullerによって提唱された用語であり、抗生物質(アンチバイオティクス)の対となる存在して考えられています。
プロバイオティクスの定義にはいくつかの条件がありますが、おおまかには「胃酸や胆汁に耐えて生きたまま腸まで届き、腸内細菌群のバランスを整えて、宿主に有益な作用をもたらす微生物」とされています。
また、プロバイオティクスの条件の1つに、「安全性が充分に保証されている」というものがあり、さらに「安価で取り扱いが容易」という点も条件の1つです。
つまりプロバイオティクスは、科学的に有効性が認められている、安全で取り扱いやすく、生きたまま腸まで届く微生物であり、ビフィズス菌BB-12株は世界で最も有名なプロバイオティクスの1つとして知られています。
プロバイオティクスの効果・効能としては、免疫システムの正常化・活性化、抗がん作用、生活習慣病リスクの低減など、多種多様なものが知られており、世界各国の医療施設や研究機関でプロバイオティクスの活用法が研究されています。
ヨーグルトなどによって摂取されたビフィズス菌BB-12株は、腸内環境の改善に働くことで、間接的に様々な全身の健康増進をサポートすることが特徴です。ビフィズス菌BB-12株によって得られるメリットは、まず便秘の解消や便の質の向上といった、便通の正常化があります。
また、ビフィズス菌BB-12株の整腸作用によって腸内環境が整えられることで、大腸菌やウェルシュ菌といった悪玉菌が減少することも見逃せません。
悪玉菌が優位になっている場合、腸内に毒性の強い物質や発がん性物質が生産されやすくなり、それらは腸から血液へと吸収されて全身へと広がります。するとその結果、肌荒れやニキビの悪化、生活習慣病やがんのリスクの上昇、うつ傾向の助長、免疫システムの異常やアレルギー症状の強化といった、様々な健康被害のリスクが増えるとされています。
そのため、ビフィズス菌BB-12株の整腸作用によって常に腸内環境を健全に保ち、悪玉菌の働きを弱めることができるとすれば、それは全身の健康状態を正常に保つサポートする上で非常に重要といえるでしょう。
下記の通り、ビフィズス菌BB-12株の効果・効能については数多くの研究データが発表されています。
ビフィズス菌BB-12は従来のビフィズス菌に比べて非常に高い耐酸性を有しており、pH 2-4 の酸性条件下において高い生存率を示すことが報告されている。この性質は、低pHによるH+-ATPase 活性およびバクテリア内のpHを一定に保つのに関与する酵素複合体、の誘導によるということが報告されている。またビフィズス菌BB-12の胃酸または胆汁中における生存率が、他のどのビフィズス菌よりも高いことが報告されている。
引用元:富士フイルム株式会社「最終製品ビフィズス菌・BB(ビービー)‐12に含有する機能性関与成分ビフィズス菌BB-12(B. lactis)による整腸作用の機能性に関する研究レビュー」(pdf)
一日当たり9億~52億cfu のビフィズス菌BB-12 を含む食品を二週間毎日摂取した場合、便秘傾向の疾病に罹患していない者において、プラセボ摂取時と比較して、排便日数の改善が示された。また疾病に罹患していない者において、ビフィズス菌BB-12 の摂取によりBifidobacteriumの増加及びBifidobacterium占有率の増加が明らかになった。さらに、排便回数、便の色は改善する傾向にあった。したがって、ビフィズス菌BB-12の摂取により整腸作用が得られることが明らかとなった。
引用元:富士フイルム株式会社「最終製品ビフィズス菌・BB(ビービー)‐12に含有する機能性関与成分ビフィズス菌BB-12(B. lactis)による整腸作用の機能性に関する研究レビュー」(pdf)
プラセボ摂取時に「半練り状+カチカチ状」の便が62.4%、「カチカチ状+コロコロ状」が33.2%だったのに対し、試験食摂取時はそれぞれ72.4%、24.8%と、それぞれ有意な増加、有意な減少が認められた。硬い便が減り、通常の便が増えたということは便の形が改善したと言える。
引用元:富士フイルム株式会社「最終製品ビフィズス菌・BB(ビービー)‐12に含有する機能性関与成分ビフィズス菌BB-12(B. lactis)による整腸作用の機能性に関する研究レビュー」(pdf)
Bifidobacteriumは糖質を分解し、乳酸や酢酸などの短鎖脂肪酸を産生する。産生された短鎖脂肪酸の影響により腸管内のpHが低下し、腸内腐敗産物の産生が抑制され、また短鎖脂肪酸が腸管の上皮細胞にはたらきかけることで、腸管の蠕動運動が活発化され排便が促進されるという報告がある。
引用元:富士フイルム株式会社「最終製品ビフィズス菌・BB(ビービー)‐12に含有する機能性関与成分ビフィズス菌BB-12(B. lactis)による整腸作用の機能性に関する研究レビュー」(pdf)
上記の研究結果から、ビフィズス菌BB-12株は生きたまま腸内へ届いて、腸内の腐敗産物の産生を抑制したり、腸の動きを活性化させて便通や便の質を改善させたりすることが示唆されています。
また、ビフィズス菌BB-12株の整腸効果は、2週間の継続摂取によって確認されており、比較的短期間の摂取によって効果を期待できる点は、魅力的な特徴といえるでしょう。
プロバイオティクスの摂取により液性免疫の1つである分泌型IgA産生応答が亢進し、異物の体内への侵入を阻止することが知られていますが、これは樹状細胞を介してプロバイオティクスの情報がT細胞へと伝えられ、T細胞が産生するサイトカインによりIgM分子を発現したB細胞( IgM+B細胞)がIgAを発現したB細胞( IgA+B細胞)へと分化、誘導されます。
ビフィズス菌BB-12株を含むプロバイオティクスは、一般に免疫力を向上させることが知られており、アレルギー症状の緩和や感染症リスクの軽減効果が示唆されています。
抗生物質とプロバイオティクスの併用によって抗生物質使用による耐性菌出現の恐れを軽減することが可能であり、まさに今世紀はプロバイオティクス併用によって腸内細菌叢に活力を与え、その恵みを受ける時代といえそうです。
抗生物質を乱用することで、薬剤耐性菌の出現リスクが上昇し、結果的に抗生物質が効かなくなってしまうケースが考えられます。そこで、抗生物質よりも人体と共生的に機能するプロバイオティクスを優先的に使用して、消化器系疾患の治療を進めることができれば、薬剤耐性菌に対する不安も減少していくと期待されています。
どんなに素晴らしい効果が報告されている菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。
もちろん、ここで紹介したビフィズス菌BB-12株についても同様で、この菌が合うかどうかは、実際に摂取してみて、自分の体調の変化を確認してみるしかないのが現状です。
世の中に存在する乳酸菌・ビフィズス菌には数えきれないほどの種類があり、商品化されているものだけでも膨大な数があります。そのため、自分と相性の良い菌を見付けるためには、それなりの覚悟をもって、根気よく挑まなくてはなりません。
しかし、自分にピッタリの菌を見付けるのは、それだけの価値があること。一生をかけて、理想の乳酸菌を追求し続けるくらいの気持ちで挑むことが大切です。摂取せずにどんな菌が合いそうか、なんて考えても意味はないので、まずはどんな菌があるのかを知り、興味のあるものから順にかたっぱしから試していきましょう。
ただし、一部には例外といえる成分もあります。たとえば「乳酸菌生成エキス」という成分は、最初から自分が持っている乳酸菌を育てるためのものです。
そもそも乳酸菌を摂取するのは、自分の腸内で善玉菌を増やして腸内環境を整えることが目的。つまりこの成分を摂れば、自分にピッタリの乳酸菌を摂取するのと同様の効果が得られるというわけです。菌との相性を気にする必要がないため、手っ取り早く健康になりたいという方は、こういった成分を探した方が良いかもしれません。
ビフィズス菌BB-12株は、健康に有益なプロバイオティクスとして、1985年にデンマークで発酵乳に使われて以来、世界中で食品や医薬品の原材料として利用され続けています。
現在、ビフィズス菌BB-12株を保有しているのは、デンマークにある「クリスチャン・ハンセン社(Chr. Hansen社)」ですが、そこから提供されているビフィズス菌BB-12株は、国内外の数多くのメーカーにおいてヨーグルトや健康食品などに活用されており、さらにより良い利用法の研究開発も盛んに行われている点が特徴です。
そのため、ビフィズス菌BB-12株は世界中で最も研究が進んでいるプロバイオティクスの1つともいわれており、国内外の主要データベースに登録されている日本語と英語の論文数だけを見ても、2018年1月時点でおよそ150もの研究論文がヒットしたそうです。
ビフィズス菌BB-12株を含むプロバイオティクスについては、そもそも前提条件として、科学的に安全であるという項目が定められています。
そのため、ビフィズス菌BB-12株は大人だけでなく、アトピー性皮膚炎などに悩む小児への有効性も研究されています。
当該成分の原料メーカーの調査によると、当該成分を含む食品は、1985年よりデンマークにて発酵乳に利用されてから、世界各国で採用され、幼児から高齢者まで幅広く利用されている。摂取形態は発酵乳、スティック顆粒、ハードカプセル、錠剤および育児粉乳(育児粉乳は海外のみ)。現在は世界中毎日約2億人が1日1 食10 億個以上で当該成分の菌株を喫食している。国内における販売量は、国内においては、2006年以降、毎年1億食以上の販売実績がある。当該成分を起因とする重篤な健康被害は特に報告されていない(原料メーカー情報)。
引用元:消費者庁「機能性表示食品の届出情報|別紙様式(Ⅱ)-1:安全性評価シート,商品名:ビフィズス菌・BB(ビービー)-12」,「届出者名:富士フイルム株式会社」(pdf)
また、短期間におけるビフィズス菌BB-12株の大量摂取に関しても、健常者を対象とした安全性に関する研究が行われており、ビフィズス菌BB-12株の過剰摂取による健康被害の心配はないようです。
被験食の2週間過剰摂取により、被験食と因果関係があると考えられる臨床検査値の以上変動や重篤な有害事象は認められず、今回検討した被験食の安全性が確認された。さらに被験食によって排便回数が有意に増加し、便の硬度が改善したことから本被験食に便通を改善する効果があることが確認された。
引用元:三浦克之 他(2007)「BB-12を用いて調製したプレーンヨーグルトの健常人に対する過剰摂取時の安全性試験」(pdf)
その他、2002年にはアメリカ食品医薬品局(FDA)においてもビフィズス菌BB-12株の安全性が認められており、乳幼児の粉ミルクなどにも使用可能とされたこともポイントでしょう。尚、2007年には欧州食品安全機関(EFSA)でも安全性が評価されています。
ビフィズス菌BB-12(B. lactis)は、2002年にアメリカ食品医薬品局(FDA)よりGRAS(Generally Recognized As Safe)に認定され、育児粉乳の用途としても認められている[4]。資料には、当菌株を摂取する際に安全性に問題があったとの報告はない。欧州食品安全機関(EFSA)は2007 年11 月19 日、食品又は飼料添加用の安全性を推定できる要件を満たす安全性適格推定(QPS、Qualified Presumption of Safety) 微生物のリストを発表し、Bifidobacterium animalisis が記載されている。
引用元:消費者庁「機能性表示食品の届出情報|別紙様式(Ⅱ)-1:安全性評価シート,商品名:ビフィズス菌・BB(ビービー)-12」,「届出者名:富士フイルム株式会社」(pdf)
ビフィズス菌BB-12株を利用した商品は、富士フイルム株式会社の機能性表示食品「ビフィズス菌・BB-12」のような乳酸菌サプリメントの他、よつ葉乳業の「よつ葉北海道十勝プレーンヨーグルト生乳100」や湯田牛乳の「プレミアム湯田ヨーグルト」、いかるが牛乳の「いかるがヨーグルトBB-12」など、国内だけでも様々なメーカーから商品が販売されています。
もちろん、世界各国のメーカーからも関連商品が販売されており、ビフィズス菌BB-12株は世界中で人気のビフィズス菌といえるでしょう。
管理人:蝶野ハナ
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