キウイフルーツから分離、発見された「11/19-B1乳酸菌」。この乳酸菌の特徴は、高い免疫活性化作用です。他の乳酸菌と比べて免疫を活性させる働きが強いため、病原体への抵抗力アップが期待されています。この記事では、11/19-B1乳酸菌にまつわる研究データや商品展開などについてご紹介します。
「11/19-B1乳酸菌」とは、東京大学薬学部によって発見された乳酸菌で、「イチイチ/イチキュー ビーワン」と読みます。この乳酸菌は、キウイフルーツの果皮から分離されたラクトコッカス属の新種の乳酸菌であり、東京大学薬学部の関水博士によって発見されました。
同菌は、今でこそヨーグルトや乳酸菌飲料にも活用されていますが、非常にデリケートな菌であるという特徴も持っています。発酵するためには37℃の環境、そして約72時間の培養時間を必要とする「気難しい乳酸菌」。そのため製品化のハードルは高かったものの、長い時間をかけて研究を重ね、さまざまな商品が生み出されました。
関水博士が手がけている、蚕を使用した免疫活性化作用を測定する実験により、11/19-B1乳酸菌は非常に高い免疫活性化作用を持っているということが判明しています。乳酸菌は今発見されているものだけでもたくさんの種類がありますが、その中でも非常に高い免疫活性化作用を持つということがわかっています。
11/19-B1乳酸菌の免疫活性化作用は、古くから絹を生産するために飼育されてきた蚕による、食物が持つ免疫活性化作用を測定する手法で証明されています。これは、11/19-B1乳酸菌を発見した関水教授が開発した手法で、蚕とヒトが持っている免疫系には共通性があるということから、「蚕の免疫を活性化させることができる物質は、ヒトの免疫も活性化させる」という考えから生み出されました。
どのように免疫活性化作用を評価するかというと、蚕には、体内に細菌などの病原体が侵入した場合に免疫系が反応すると、筋肉が大きく収縮するという特徴があります。筋肉の収縮は体長が縮むことで確認できるため、大きく収縮するほど免疫活性化作用が大きいと判断することができます。このことから、さまざまな食品が持つ免疫活性化作用の測定に用いられるようになり、11/19-B1乳酸菌が持つ高い免疫活性化作用の発見にも繋がったのです。
11/19-B1乳酸菌の持つ、高い免疫活性化作用に関する研究をご紹介します。11/19-B1乳酸菌の免疫活性化作用の測定を行った研究や、黄色ブドウ球菌などをはじめとする病原体への抵抗力が上昇することを示した研究など、さまざまな内容の研究が発表されています。
これまでご説明してきた通り、11/19-B1乳酸菌は、東京大学薬学部により、非常に免疫活性化作用が高いことが報告されています。前述の蚕を用いた方法で、この乳酸菌の免疫活性化作用を測定した結果をご紹介します。
また、上記に示したカイコを使用した実験の他にも、マウスを使用して各乳酸菌が持つ免疫活性化作用を測定するという内容の実験も行われました。その結果が下記の表となります。
これらの実験により、11/19-B1乳酸菌が持つ免疫活性化作用は他の乳酸菌と比較しても非常に高いと言えそうです。
11/19-B1乳酸菌は、黄色ブドウ球菌や緑膿菌に対するカイコの抵抗性を高めることが実験で明らかになったと報告されています。ここで紹介する研究内容は、黄色ブドウ球菌を摂取した蚕に対し、11/19-B1乳酸菌を投与したグループと投与していないグループに分けて、その後の生存率を測定したものです。
11/19-B1株を用いて製造されたヨーグルトを給餌したカイコに黄色ブドウ球菌を接種して、11/19-B1乳酸菌を投与せずに黄色ブドウ球菌を接種させたカイコとの生存率を黄色ブドウ球菌接種後の時間の経過に合わせて上図であらわしています。
11/19-B1乳酸菌を投与したカイコは黄色ブドウ球菌感染症に対して高い抵抗性を示しました。 このことは11/19-B1乳酸菌によるプロバイオティクス効果(腸内バランスを改善し、抵抗力や免疫力を高める効果)が現れた事を示していると思われます。
この実験では、カイコが黄色ブドウ球菌に感染してから100時間の生存率を調査しています。最終的には11/19-B1乳酸菌を投与していないグループの蚕は全て死亡しましたが、11/19-B1乳酸菌を投与したグループの蚕は約3割が生存していたという結果になっています。
この結果から考えられるのは、「11/19-B1乳酸菌により蚕の腸内環境が改善。このことにより免疫力が高まった」ということ。11/19-B1乳酸菌は病原体への抵抗力アップも期待されます。
どんなに素晴らしい効果が報告されている菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。
もちろん、ここで紹介した11/19-B1乳酸菌についても同様で、この菌が合うかどうかは、実際に摂取してみて、自分の体調の変化を確認してみるしかないのが現状です。
世の中に存在する乳酸菌・ビフィズス菌には数えきれないほどの種類があり、商品化されているものだけでも膨大な数があります。そのため、自分と相性の良い菌を見付けるためには、それなりの覚悟をもって、根気よく挑まなくてはなりません。
しかし、自分にピッタリの菌を見付けるのは、それだけの価値があること。一生をかけて、理想の乳酸菌を追求し続けるくらいの気持ちで挑むことが大切です。摂取せずにどんな菌が合いそうか、なんて考えても意味はないので、まずはどんな菌があるのかを知り、興味のあるものから順にかたっぱしから試していきましょう。
ただし、一部には例外といえる成分もあります。たとえば「乳酸菌生成エキス」という成分は、最初から自分が持っている乳酸菌を育てるためのものです。
そもそも乳酸菌を摂取するのは、自分の腸内で善玉菌を増やして腸内環境を整えることが目的。つまりこの成分を摂れば、自分にピッタリの乳酸菌を摂取するのと同様の効果が得られるというわけです。菌との相性を気にする必要がないため、手っ取り早く健康になりたいという方は、こういった成分を探した方が良いかもしれません。
冒頭でも紹介した通り、この11/19-B1乳酸菌は東京大学薬学部の関水和久博士により発見された乳酸菌です。食品が持つ免疫活性化作用を評価するにあたり、蚕を用いた手法を開発した博士は、さまざまなサンプルを用いて免疫力を上げる食品を探してきました。
この研究を行っていく中で見つかったのが、11/19-B1乳酸菌。2012年11月19日の実験で、B列の1番目に吊るした蚕から見つかったことから「11/19-B1乳酸菌」と命名されました。この11/19-B1乳酸菌は、ヨーグルトの製造に使われていた一般的な乳酸菌と比べて高い免疫活性化作用を持っており、2014年に東京大学のほか、東北協同乳業、11/19-B1乳酸菌を発見した関水博士によって2000年に創業されたゲノム創薬研究所などから特許が共同出願されています。
そして、11/19-B1乳酸菌に関する歴史として外すことができないのが「関水博士と東北協同乳業との出会い」。食品が持つ免疫活性化作用について調査していた関水博士が、福島県にある東北協同乳業株式会社に1本の電話をかけたことが、現在販売されている11/19-B1乳酸菌を配合したヨーグルトが生まれるきっかけとなりました。
こうして、2011年の東日本大震災で起きた原発事故により風評被害を受けた、酪農の復興に注力していた東北協同乳業株式会社とともに、乳酸菌を使ったヨーグルトの共同研究を開始。この時の合言葉は「悪しき風評には良き風評で立ち向かおう」。研究を続けた結果、関水博士と東北協同乳業株式会社が出会ってから1年半後の2014年に11/19-B1乳酸菌を配合したヨーグルトが発売されました。
この11/19-B1乳酸菌を用いた商品には、上記で紹介している福島県の東北協同乳業株式会社から販売されているヨーグルトがあります。
まず2014年に販売開始されたのが「11/19-B1乳酸菌ヨーグルト」。非常に高い免疫活性化作用を持つと同時に、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を低下させる作用があることが福島医大の研究によって発見されています。
福島医大と東北協同乳業株式会社による共同研究によると、11/19-B1乳酸菌を使ったヨーグルトを2ヶ月に渡って食べ続けた結果、ヨーグルトを食べ続けた人のうち、悪玉コレステロールの数値が高かった人の“ほぼ全員”において数値が下がった、との結果が得られており、この研究データは海外の科学誌で発表されています。
コレステロールを下げる働きを持ったヨーグルトは珍しいと言われているため、免疫活性化作用とともに注目されているヨーグルトとなりました。そして、このヨーグルトが販売されてから4年後には11/19-B1乳酸菌を配合したドリンクタイプの商品も販売をスタート。
ちなみに、このヨーグルトの売上の一部は震災復興義援金や東京大学と連携した教育活動支援に役立てられているという側面を持っています。
また、2018年には11/19-B1乳酸菌入りの発酵乳を使用した「ヨーグルスタンドB1乳酸菌」がコカ・コーラシステムから発売されました。ヨーグルト味の乳酸菌飲料ということで非常に飲みやすく、手軽に健康をサポートしてくれる飲料となっています。
管理人:蝶野ハナ
乳酸菌と人との関係、菌株ひとつひとつの個性、数多くの研究データ……乳酸菌って、知れば知るほどスゴいんです。私たちにとって最も身近な細菌について、もっともっと深く知りたくないですか?