種類やはたらきが丸わかり! 家族のための乳酸菌大辞典

種類やはたらきが丸わかり!家族のための乳酸菌大辞典 » 乳酸菌1073R-1

乳酸菌1073R-1

乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)は、最近注目されている乳酸菌のひとつ。免疫力に働きかけ、風邪やインフルエンザを予防する効果が期待されており、この乳酸菌を使用したヨーグルトが人気を集めています。私たちの体に対し、さまざまな働きかけを行ってくれると考えられている乳酸菌1073R-1については、これまでにも多くの研究結果が報告されています。そこでこの記事では、いくつかの研究報告をご紹介しながら、乳酸菌1073R-1にはどのような作用が期待できるのかを見ていきましょう。

乳酸菌1073R-1とは

乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)の正式名称は、「Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1」といいます。ヨーグルトを作り出す上で使われるブルガリア菌の一種です。株式会社明治と北里大学の共同研究の中で発見されました。

多糖体を作り出すことが特徴

乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)の大きな特徴として挙げられるのが、「多糖体」と呼ばれる物質を多く作り出せること。乳酸菌が菌体外に作り出す多糖体をEPS(exopolysaccharide/エクソポリサッカライド)と呼んでいます。ネバネバとした粘性のある物質ですが、免疫機能に作用して活性化させる働きを持つことがわかっています。

乳酸菌と免疫力の関係

風邪が流行する時期になると、「免疫力を上げよう」といった話をよく聞きますよね。免疫力が高い人は風邪やインフルエンザにかかりにくいということがわかっています。これは、免疫力が高ければ体内に入ってきた最近やウイルスを撃退できるからです。逆に免疫力が低下している場合だと、風邪などにかかりやすいと言えます。

免疫力は、偏った食生活や加齢、ストレスに影響されやすいもの。小さな子どもや高齢者は免疫力が低いという傾向があり、特にインフルエンザが流行する時期などには注意する必要があります。この免疫機能に大きく関わっているのが、善玉菌である乳酸菌です。そのため、免疫力と乳酸菌は切っても切れない関係があると言えるのです。

NK活性増強効果を持つ

乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)を使用したヨーグルトでもNK活性増強作用が確認されており、風邪に罹患するリスクを下げることが確認されています。また、インフルエンザを抑制する効果も可能性が示されており、さまざまな研究が行われています。

ちなみにNK細胞とは、体内の免疫システムの中でも非常に重要な役割を持っているもの。他の免疫細胞に先駆けて異常のある細胞を攻撃して破壊する、という働きがあります。つまり、免疫機能の最前線で戦ってくれている細胞であり、このNK細胞を活性化させることが免疫力を高めることに繋がり、さまざまな病気のリスクを減らすことができるということになります。

乳酸菌1073R-1の効果に関する研究

乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)は、上記の通りNK活性増強作用を持っています。そのため、風邪の罹患リスクの低下、インフルエンザの予防などについて大きな注目を集めており、多くの研究が行われています。ここでは、乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)の効果に関する研究についてご紹介していくことにしましょう。

インフルエンザワクチンの効果を増強する作用

毎年寒い時期になると流行するインフルエンザですが、ワクチン接種後に乳酸菌1073R-1で発酵したヨーグルトを摂取することで、ワクチンの増強効果が見られるかどうかという研究が行われています。

調査の対象は25歳から59歳の男女。対象者を乳酸菌1073R-1で発酵したヨーグルトを摂取するグループと、乳酸菌1073R-1で発酵させていない酸性乳飲料を摂取するグループ(プラセボ群)の2つのグループに分けて調査を行いました。対象者にはインフルエンザワクチンを接種する3週間前から接種後6週間までヨーグルトや酸性乳飲料を継続的に摂取してもらい、インフルエンザの抗体にどのような変化が起こっているかを調査しました。

摂取開始前,ワクチン接種時,接種3週間後,接種6週間後,接種12週間後に採血を行い,接種したワクチン株に特異的な抗体価をHI法で測定した.

【成績】インフルエンザA型H1N1,B型に対する抗体価はワクチン接種後にプラセボ群に比べて1073R-1ヨーグルト群で有意に高い値で推移した.

【結論】1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルトの摂取は,幅広い世代の男女に対してインフルエンザワクチン接種の効果を増強する可能性が示された.

引用元:牧野聖也ほか「1073R-1 乳酸菌で発酵したヨーグルトの摂取がインフルエンザワクチン接種後の特異的抗体価に与える影響」(pdf)

インフルエンザ予防に関する研究

次に、インフルエンザの予防作用について、マウスを使って行われた実験をご紹介します。

下記は、マウスをインフルエンザに感染させて行った実験です。インフルエンザに感染させる21日前から感染4日後にかけて、乳酸菌1073R-1株で発酵させたヨーグルトを与えたグループと、水のみを与えたグループの2つに分けて観察を実施しました。

インフルエンザウイルスに感染させて4日後の肺の中の感染性ウイルス価を、ヨーグルト(1日0.4ミリリットル)を与えたマウスと、水を与えたマウスで比較しました。するとヨーグルトを与えたマウスでは、水を与えたマウスに比べ明らかにウイルス価が低下していました。EPSを与えても、ヨーグルトと同様の結果が得られました。

またウイルスに感染した後に、マウスの脾臓細胞(免疫細胞の集まり)のNK活性を測定したところ、ヨーグルトやEPSを与えると、活性が上昇することが確認されました。

引用元:株式会社 明治 「乳酸菌研究最前線 乳酸菌1073R-1株試験結果(3)」

上記の実験では、水のみを与えたマウスは感染後10日以内に全て死亡したのに対し、ヨーグルトを与えたグループについては、インフルエンザ感染後の生存率が上昇したことが確認されています。このことから、乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)を用いたヨーグルトは、NK細胞を活性化し、抗インフルエンザウイルス活性を発現することが確認されたと結論付けられています。

また、高齢者を対象にして行った調査でも、乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)を用いたヨーグルトを接種することで、インフルエンザ予防につながる可能性が示されています。下記の調査は、神奈川県内の特別用語老人ホームで実施されたもので、被験者は高齢者96名です。

被験者を乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)を用いたヨーグルトを摂取するグループと、対照ヨーグルトを摂取するグループに分け、唾液中のIgAの推移を比較しました。

その結果、乳酸菌1073R-1株を使用したヨーグルトを摂取した群は、対照群と比較してインフルエンザA型H3N2ウイルスに反応するIgAが有意に多いことがわかりました。つまり、単にIgAが増えただけではなく、増えたIgAがインフルエンザウイルスに対抗する力をもつものであったことが確認できました。

引用元:株式会社 明治 「乳酸菌研究最前線 乳酸菌1073R-1株試験結果(5)」

以上のことから、乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)を用いたヨーグルトを継続して接種することにより、高齢者のインフルエンザの予防につながる可能性が示唆されています。

NK細胞に活力を与える作用に関する研究

乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)が産生するEPSは、NK細胞活性増強作用を持っているとされています。ここでは、マウスとヒトを対象にして行われた研究結果をご紹介します。この研究は、乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)を用いて発酵させたヨーグルトを経口接種することにより、NK細胞が活性化するかどうか調査を行ったものです。

1073R-1乳酸菌が産生するEPSは,マウスへの経口投与により脾臓細胞のNK活性を増強した.そこで,本EPSを含有するヨーグルト,すなわち1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルト(1073R-1乳酸菌ヨーグルト)を調製し,マウスに経口投与を行った.その結果,1073R-1乳酸菌ヨーグルトについてもNK活性増強効果を発揮した.

ヒトを対象とした試験では,1073R-1乳酸菌ヨーグルトの摂取は健常高齢者のNK活性を上昇させ,牛乳の摂取に比べて風邪症候群への罹患リスクを低減することが明らかとなった.さらに,男子大学生 対象とした試験では,インフルエンザワクチン皮下接種後の血清中でのワクチン株特異的な抗体価の上昇を増強する効果が明らかとなった.

これらの結果から,1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルトはEPSを主な活性成分とし,NK細胞などの自然免疫系を活性化させるだけではなく,抗原特異的な抗体の産生に関わる獲得免疫系に対しても作用することで感染防御効果を発揮すると考えられる.

引用元:牧野聖也「乳酸菌産生多糖体,ヨーグルトの免疫賦活作用に関する研究」

また、別の研究においても、風邪への罹患リスクの低下とNK活性増強が確認できたと報告されています。

下記の研究で対象としたのは、山形県舟形町在住の70〜80歳の57名と、佐賀県有田町在住の60歳以上の85名。どちらの町の対象者においても2つのグループに分けて調査を行いました(乳酸菌1073R-1株で発酵させたヨーグルトを食べるグループと牛乳を飲むグループ)。調査の結果、下記の内容が報告されています。

どちらの地域でも、乳酸菌1073R-1株を使用したヨーグルトを食べた群では、加齢に伴い低下するT細胞増殖能が、有意に上昇しました。また、乳酸菌1073R-1株を使用したヨーグルトを食べた群ではどちらの地域でも、食べる前にNK活性が低かったグループにおいて、その活性が有意に上昇しました。

また、風邪罹患リスクの低減も確認できました。牛乳を飲んだ群の風邪をひくリスクを1としたときに、乳酸菌1073R-1株を使用したヨーグルトを食べた群は、有田町では0.44、舟形町では0.29、2つを統合して分析すると、0.39とリスクが大きく減少したのです。

引用元:株式会社 明治「乳酸菌研究最前線 乳酸菌1073R-1株試験結果(1)」

以上の結果から、乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)を用いたヨーグルトを継続的に摂取することにより、風邪の罹患リスクが低下し、NK細胞が増強されたと報告されています。

自分と乳酸菌1073R-1との相性は?

どんなに素晴らしい効果が報告されている菌であっても、それが誰にでも効くというわけではありません。菌と腸内環境には相性があり、自分の腸に合っていない菌を摂取しても、あまり意味がないのです。

もちろん、ここで紹介した乳酸菌1073R-1についても同様で、この菌が合うかどうかは、実際に摂取してみて、自分の体調の変化を確認してみるしかないのが現状です。

世の中に存在する乳酸菌・ビフィズス菌には数えきれないほどの種類があり、商品化されているものだけでも膨大な数があります。そのため、自分と相性の良い菌を見付けるためには、それなりの覚悟をもって、根気よく挑まなくてはなりません。

しかし、自分にピッタリの菌を見付けるのは、それだけの価値があること。一生をかけて、理想の乳酸菌を追求し続けるくらいの気持ちで挑むことが大切です。摂取せずにどんな菌が合いそうか、なんて考えても意味はないので、まずはどんな菌があるのかを知り、興味のあるものから順にかたっぱしから試していきましょう。

他にはどんな乳酸菌があるの?
あらゆる種類の乳酸菌をチェック

手っ取り早く乳酸菌の効果を実感したい人には

ただし、一部には例外といえる成分もあります。たとえば「乳酸菌生成エキス」という成分は、最初から自分が持っている乳酸菌を育てるためのものです。

そもそも乳酸菌を摂取するのは、自分の腸内で善玉菌を増やして腸内環境を整えることが目的。つまりこの成分を摂れば、自分にピッタリの乳酸菌を摂取するのと同様の効果が得られるというわけです。菌との相性を気にする必要がないため、手っ取り早く健康になりたいという方は、こういった成分を探した方が良いかもしれません。

【成分別】
おすすめの
乳酸菌サプリ特集
をチェック

乳酸菌1073R-1の歴史

株式会社明治では、長年にわたる乳酸菌研究により、現在は約5,000種類もの乳酸菌株を保有しています。乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)は、北里大学との共同研究のなかで発見されたもの。免疫機能に働きかけるという作用に注目が集まり、現在もさまざまな研究や商品開発が行われています。

乳酸菌1073R-1の商品展開

乳酸菌1073R-1(OLL1073R-1)を用いた商品としては、株式会社明治から販売されているヨーグルト「明治プロビオヨーグルトR-1」が有名です。

乳酸菌が産生する多糖体が持っている免疫調節作用に着目して、免疫力を高めるという目的で開発されたこのヨーグルトには、これまでの乳酸菌研究の中で選び抜かれた乳酸菌1073R-1を使用。「カラダの中から強さを引き出す」というキャッチコピーも有名で、非常に人気のある商品となっています。

このヨーグルトの開発においては、「ヒトを対象とした試験で効果があった試験食と同等の製品を製造すること」「毎日食べても飽きない風味」、そして「発売のタイミング」が重要であるとされていました。

2008年にはすでに発売の準備が整っていたにも関わらず、株式会社明治の中で需要に対する疑問の声もあったとのこと。しかし2009年春の新型インフルエンザの流行が後押しすることになり、2009年12月に販売が開始されたという経緯があります。

株式会社明治食機能科学研究所によると、今後の展望としては下記のように述べられています。

本ヨーグルトの摂取によりインフルエンザワクチンの効果が高まる可能性が示された.今後,本機能性ヨーグルトがもつ免疫調節作用の更なる可能性を追求するとともに,「ヨーグルト不老長寿説」を科学的に証明することで,究極の「健康長寿ヨーグルト」の開発に挑戦していきたい.

引用元:株式会社明治食機能科学研究所「免疫調節多糖体を産生する乳酸菌を活用した機能性ヨーグルトの開発」(pdf)

参照元

  1. 株式会社明治「乳酸菌研究最前線 乳酸菌1073R-1株について」(https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/report/1073r1/top/
  2. 牧野 聖也ほか「免疫調節多糖体を産生する乳酸菌を活用した機能性ヨーグルトの開発」(https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=461
  3. 牧野 聖也ほか「1073R-1 乳酸菌で発酵したヨーグルトの摂取がインフルエンザワクチン接種後の特異的抗体価に与える影響」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsci/37/4/37_350b/_pdf/-char/ja(pdf)
  4. 牧野 聖也「乳酸菌産生多糖体,ヨーグルトの免疫賦活作用に関する研究」(https://bifidus-fund.jp/meeting/pdf/19th/incentive_award.pdf(pdf)
  5. 株式会社 明治 研究本部「乳酸菌による「免疫機能」調整作用と「ピロリ菌」抑制作用」(http://www.nyusankin.or.jp/scientific/pdf/Nyusankin_484_a.pdf(pdf)

乳酸菌の選び方

自分に一番合った乳酸菌はどれ?乳酸菌の選び方を伝授します!

有害菌をブロック&自分の乳酸菌を育む乳酸菌生成エキスとは

管理人:蝶野ハナ

蝶野ハナ

乳酸菌と人との関係、菌株ひとつひとつの個性、数多くの研究データ……乳酸菌って、知れば知るほどスゴいんです。私たちにとって最も身近な細菌について、もっともっと深く知りたくないですか?